加入ラッシュ
第二の街のベンチでスイは足を振りながらクリスティーナを待っていた。
今日は前から言っていたフェアリーロードとクリスティーナの顔見せの日。
クリスティーナはこれでもか、と色々作って持ち込みをすると楽しそうに笑っていた。
「……………なんか、視線を感じる」
顔を上げるとかなりの人数がスイを見ていた
「……………!?」
なに!? なんなの!?
いろんな所であれが奏者か……
など聞こえる。
そして
(´Д`三´Д`*)hshs
なんか、hshs言ってる人いる……
だが、大半はフェアリーロードについてザワザワと声が聞こえていた。
加入お断りのクランにどうやって入った?
なんかコネがあるのか?
などがざわつきに聞こえてきていた。
その異様な雰囲気にスイも警戒し始めると、
あの子に言ったらフェアリーロード入れるのかな……
お前、天才か……!!
結婚してぇ……
て ん さ い か !!!
途中なんか変な声も聞こえてきた。
舐めるような視線も感じる中、スイはとうとう立ち上がる
「なに? なになに!?」
カタッと音を立てて立ち上がったが、クリスティーナとの約束はここ、困ったように立ち尽くすスイを囲うように立つプレイヤーに、スイはひぃ! と心の中で悲鳴をあげた。
フェアリーロードの新しいクラメンかぁ
でも、寄生だろ?
寄生でも! 可愛いは正義!!
いや、可愛さは関係ないだろ
…………………ないよな?
「………………何このカオス」
この人混みの後ろでクリスティーナは立ち尽くしていた。
かすかに見えるスイは明らかに困惑している。
そしてスイも見えた希望に縋り付く様に手に力を込めて握りしめた。
「……………! クリスティーナァァァァ!」
遥か遠くに見えるムキムキ女子に気づき力の限り名前を叫んだ。
ふるりと揺れる胸に、全員の視線が一点集中する。
神は………神はいたんだ…………
カオスな様子にクリスティーナの顔が引き攣る。
そんな時だった。
先頭にいた男がスイに近づき前に立つ。
「なぁ、あんたフェアリーロードに入ったんだろ? 俺も入りたいんだ! なぁ、口添えしてくないかな?」
キラキラと少年みたいな目をしているが、その奥には欲望が渦巻いている。
「す、すいません。無理かと」
「え? なんで? だってあんただってリィンさんの口添えで……」
「………………だれだ」
「グ……グレンさん!!」
人垣を掻き分けて近づく男を掴み抑えるグレンが現れる。
驚き目を見開くが、安堵に顔を緩ませた。
「あ! グレンさん!」
掴まれている男が振り向きグレンを見ると一気に顔を赤くした。
憧れているのか目がキラキラしている。
「お! 俺、フェアリーロードに入りたいんです!」
グレンの表情は険しくなり鋭い視線を向けると後から同じ様な声がひっきりなしに聞こえてきた。
「…………いきなりなんなんだ」
男の腕を離しスイの顔を指先で拭う。
ダクダクする涙はそれでも止まらない。
「新しく2人加入してるから、入れるんですよね!?」
「公式サイトのクランのにも載ってましたし!」
ザワザワと騒ぐ周りにグレンは息を吐き出した。
そして、全員に見えるようにスイを隠すように体の向きを変える。
「我々フェアリーロードは以前と変わらず加入は受け付けていない。クラメン全てが加入を認めた特例のみ加入を許可している。今回の2人も特例として加入を認めたが、通常は認めてはいない。これがフェアリーロードのリーダーカガリ、そして我々クラメンの意志だ」
「………………じゃあ、やっぱり贔屓で入ったのは本当なんだ」
「………なに?」
「使えない奏者が高ランカークランに入ったのは贔屓って噂になってますよ! リィンさんのフレンドだとか! だから、入れたんですよね!! 奏者なんて地雷職が!!!」
ザワザワとする周囲は不満がみられる。
それを鼻で笑ったグレンはチラッとスイを見た。
再度不安が押し寄せてきたスイだが、グレンはスイの頭を軽く撫でまた全員を見た。
「使えない、足を引っ張る奏者が我らフェアリーロードにいると思うか?」
グレンの一言に一瞬静まり返った。
だって………でも…………
奏者だろ……………?
「はいはいはいはい、通して通してー」
後ろにいたクリスティーナがその体で体当たりしながら前に出てきた。
それに気付いたスイが走りよりクリスティーナにぎゅっとくっつく。
「ごめんねー、もっと早く来ればよかったー」
ふるふると首を横にふるスイをぎゅっと逞しい腕で抱きしめた。
「ねぇー、クラン加入はフェアリーロードが決めることでそれを関係ないプレイヤーがグダグダ言うのは違うんじゃないのー? どんな理由で2人が加入したとか大事なのは身内のフェアリーロード達だけで、入れないからってスイを貶すのはただの妬みだよねー」
「ち、ちが……」
「違うっていうの?」
いきなり現れたクリスティーナにざわつくが、スイを慰めている様子にフレンドか、と納得。
また、掲示板を見ている人はクリスティーナの存在を知っている為じっとクリスティーナを見ていた。
ふわふわと話していたクリスティーナが急に鋭く睨みながら言う。
「何より仲間を大事にするフェアリーロードのクラメンに、仲間内の事グダグダいう人を入れるとはクリスティーナちゃん思えなーい」
クリスティーナの言葉に全員が顔を見合わせた。
たしかに。
小さく悪かった……
その声を皮切りに謝罪の言葉が飛び交い人垣はあっという間になくなって行った。
「グレンさん、ありがとうございますぅぅぅ!」
「いや、大丈夫だ」
クリスティーナに抱きつきながら言ったスイに、グレンは小さく笑って返事を返す。
「クリスティーナも、ありがとう!」
「ううん、本当にもう少し早く来るんだった」
「すきぃぃぃぃぃ!!!」
「あぁん! 私もー!!」
くねくねクリスティーナは通常運転だ。
「まぁ、来るとは思っていたがな加入ラッシュ」
「え? 何ですか?」
「いや、なんでもない」
クリスティーナから離れてグレンを見上げるが、優しく笑って返されただけだった。
「あ、私のリアフレでクリスティーナです」
「愛の料理人、クリスティーナでーす!」
「……………あぁ、よろしく。しかし、まさかクリスティーナだとは」
くねくねして頬に手を当てるクリスティーナをじっと見るグレン。
「知ってるんですか?」
「あぁ、βで有名な料理人だったからな」
「フェアリーロードのグレンさんに知っててもらえるのは光栄です!」
フワッと笑って嬉しそうにするクリスティーナ。
ムキムキ女子でなければ完璧である。
本当に残念。
こうして静かになった噴水広場を離れ3人は揃ってクランハウスに向かうことにした。




