メインクエストと突発クエスト
4月25日改正
噴水広場を後にしたスイは、ブラブラと街並みを散策した。
街は綺麗で空気も澄み渡っている。
お店のあるエリアに着いたのか、民家は一切なく宿屋や武器屋や道具屋などがあった。
ガラス張りのその店内を眺めながら歩くスイ。
まだ店に入る勇気はなく、また今度……とスルーしていく。
そして、次第にいい匂いが漂いだしてスイは先を見た。
広場になっていて屋台が並んでる。
「すごーい……」
並び立つ屋台、座るテーブルが真ん中に用意されていて雨天兼用の大きな傘がズラッとならんでいる。
今は雨も降っていないため、傘は閉じられ青空が見えていた。
屋台の種類は豊富で食べ物飲み物、アクセサリーから服に道具。
武器や防具なんかも並んでいた。
それぞれにエリアを設けて店開きをしている。
それぞれに青や緑で書かれたプレイヤー表記や、街の住民などを見ながら食べ物を眺めた。
ゲーム開始の所持金は10000リル。
食事や宿泊を数日したら底を尽きるだろう金額だった。
どうにかして金策を巡らす必要があるが、スイはそんなこと頭にもなく屋台を見て回った。
美味しそうな串焼きや肉団子、焼き鳥だったり。
でも、見たことない食事も沢山並んでいた。
「これはなんですか?」
指さしたのは串に刺された何かの肉。
甘辛く煮付けて柔らかくした肉に串が刺さっている。
しかし、柔らかく煮込まれた肉は串から少しづつ外れてきそうだ。
「おう、これはフェーラの串焼きだよ!」
「へぇ……美味しそうね」
ふわりと笑って店員のおじさんを見ると、おじさんは機嫌よく半額にしてくれた。
「いいの?」
「あぁ! 可愛いお嬢ちゃんにはサービスだ! また来てくれよ!」
「ありがとう」
半額の6リルを支払い紙皿に置かれたフェーラの肉を受け取って空いている椅子に座った。
いい匂いがする肉に、小さく口を開いて食べると甘辛い味が口いっぱいに広がった
「! おいしい……」
じっと肉を見て思わず呟くと、隣に誰かが座る気配がした。
「あ。フェーラのお肉ですね! 美味しいですよね」
ほんわかと笑う薄いピンクの髪をした少女は、パンとサラダ、飲み物を手にしてスイの隣に座った。
「初期装備、初心者さんですか?」
少女はパンを半分にしてスイに差し出してきた。
「このパンと凄く合うんですよ、挟んで食べてみて下さい」
はいっ! と渡す少女に戸惑っていると、少女は困ったように笑った。
「すいません、迷惑ですよね」
差し出していたパンを戻そうとする手を掴み、首を振った。
「あ、驚いただけ、ありがとう。お肉、食べていいですよ」
パンを受け取ったと同時にお肉を2人の真ん中に寄せる。
少女は嬉しそうに顔を赤くして笑った。
「ありがとうございます、じゃ、ジュースも一緒に、ね!」
ふふっと笑っていう少女はプレイヤーと緑で表示されていた。
「あ、私はリィンといいます。ここであったのも何かの縁ですお友達になりませんか?」
握手を求めるように手を差し出すリィンと言った少女は笑顔を浮かべている。
頭上の名前もリィンに変わった。
なるほど、名前がわかると表示されるんだ。
「よろしく、スイです」
友達申請が出ているのをはいにタップしてからリィンの手を握ったのだった。
「へぇ、ゲーム一切やったことないんですねー」
モグモグと口を動かしながら話すリィンに頷き返す。
「なるほどです。だからですねー」
「え?」
「なんだかほっとけない雰囲気だったんです」
ふふっと笑って言ったリィンは、食べ終わった紙皿を手に立ち上がった。
「ん、美味しかったです! 満腹ゲージも回復しましたね」
ステータスを見ているのか、指が何かをタップしているように動く。
「満腹ゲージ?」
リィンに合わせて立ち上がると、リィンは振り返りキョトンとした。
「あ、もしかして知りませんか? プロフィールを開いて名前の下のゲージを見ると満腹ゲージがあるんですよ」
プロフィールを出して見てみると、確かにゲージがあった。今はオールグリーン
満腹ゲージは、食事を取り空腹を満たせば戦闘時100%の力で戦える。
しかし、ゲージが減少して黄色になると最大体力や、攻撃力防御力などが減少。
レッドゲージになったら回復不可など、デメリットが沢山でてくるのだ。
「なんか、色々あるんですね……」
「慣れちゃったらなんでもないんですけどね。この満腹ゲージ、今回のアップデートから追加になったので私達も忘れないようにしないとなんですよ」
苦笑しながら言ったリィンは紙皿を片付けたあと、道具袋から2つのアクセサリーを取り出した。
ドーム型の中に星空がキラキラ輝いていて半永久的に星空が動くアクセサリーだ。
ふたつに結ぶスイの髪に結んでプレゼントです。
と笑ったリィン。
付けられた髪飾りを触る。意外と大きく良いアクセントになった。
「私、1度ログアウトしますのでまた今度ログインした時にお暇でしたら遊びましょうね」
リィンはニコニコ笑いながら伝え、手を振ってスイの前でログアウトしていった。
ログアウト、わかっていてもいきなり消える姿に驚きがあった。
「そか、ゲームか………」
今までそこに居たリィンが消えて、パチパチパチと瞬きをしてから動き出した。