変則クエスト7
「ここだね」
リィンが呟いたのは大きな屋敷に着いたその時だった。
左右対象に作られた屋敷は綺麗に整えられた庭の中心に佇んでいる。
すごーーい
ポカンと口を開けながら見るスイに小さく笑ったセラニーチェはまっすぐ屋敷の門へと足を向けた。
セラニーチェ達にクラーティアが助けを求めたのがクエスト(仮)と表示されているからか、門は自動的に開き屋敷の玄関までカガリを先頭にあるきだした。
スイは慌てて付いていくと、リィンとグレンのふたりが待っていてくれている。
「さ、いきましょう!」
変則クエストでは普通のクエストよりも死亡ペナルティが厳しいことを伝えられスイは気を引き締めて屋敷へと向かった。
「いらっしゃいませ。ペットの捜索の手伝いに来ていただいた皆様ですね」
玄関は外の門と同じように自動的に開き、そこで待っていたのは執事のセバスチャンだった。
ゆるりと頭を下げて言ったセバスチャンに、カガリが返事をすると、まずは先に行ったメンバーとの合流を指示され地下に向かう階段を教えて貰った。
「それではよろしくお願い致します。今は空腹ですので気が立っております、早めに柵に入れていただくよう」
穏やかに笑っているのに全員その笑顔が不気味に見え、足早にその場を離れて地下へと続く階段を降りたのだった。
暗いな
それが地下への第一印象だった。
少ない照明は見通しが悪い。
カガリ達盾職や前衛が前に集まり後衛が後ろから付いていく。
「とりあえず、クラーティア達と合流が先よね」
「捜索が引っかからないわ、セラ」
「そっかー……」
クラメン1番の捜索範囲の広いイズナがセラニーチェに言う。
イズナは白と黒のゴシック調ゴスロリの服を纏い白のリボンで編み込むように髪を結んでいる。
フワフワと揺れるスカートをヒラヒラと揺らしながらコツコツとブーツを鳴らして歩く。
「一本道に見えるが違うだろうな」
まっすぐ前を見据えて言うグレンに全員が頷く。
「とりあえず、いつ戦闘になってもいいように準備しといてくれ」
顔だけを後に向けて言ったカガリに合わせるように武器を具現化して装備すると、後ろを向いていたカガリが目を見開いて指を指す。
「い、いやいやいやまて! なんで普通に持ってんだよ!」
「え?」
イルカさん印のハープを装備し両手でしっかりと持ったスイのハープは、完全に地面から浮いている。
それを見たカガリが顔を引きつらせて言った事に全員の視線が集まるが、スイはハープを見つめて
あぁ………そっか、重いんだったよね……
と頷き納得。
「意外と重くないです」
「「「「「「「いや、うそだろ!!(でしょ!!)」」」」」」」
ひょいひょいと持つスイを全員はありえないと言う表情で見つめていた。
「と、とりあえず先に合流しましょう!」
「そ、そうだな!!」
壊れた人形の様に頷き言ったカガリに付いていくように全員も足を進めはじめた。
「カガリ」
「あ?」
後衛であるセラニーチェがカガリの居る前衛まで行くと、その隣にいたファーレンもセラニーチェを見る。
「ちょっと予想外ね、スイちゃん」
「あ? まぁな、びっくりしたわ」
「ねぇ、まさか完全後衛武器を持って歩くなんて」
ふふっと笑って言ったセラニーチェに、カガリはチラッとスイを見る。
リィンと話しながら歩くスイは笑顔を浮かべて自分の楽器のイルカを撫でている所だった。
「……おい、今片手でも持ってたぞ」
「……ほんとに規格外ねぇ。でも、希望が見えてきたわ、奏者使いこなせるかしらね」
「……どうだろうな」
そう言うカガリの口端は持ち上がり楽しそうに笑っていた。
奏者としてしっかり立ち回りをしてくれるならカガリにとっても非常に嬉しいことである。
願わくば、昔みたいにならないようにとただそう思うだけだった。




