変則クエスト6
バタバタと足音をたてて走る5人はただただ逃げていた。
最初は2階に上がる階段へと行く為に分かれ道を選び走っていたのに、待ち受けているペットが先々に現れるのだ。
クラーティアは4人を守りながら走るが、先頭を走るリンドーは混乱気味に無我夢中で走るため現在地は既にわからなくなっていた。
「……あ、あんなの倒せないよ!」
ティアラが腕を抑えながら言う。
涙を流して半狂乱になりながら言うのは、右腕に出来た深い引っかき傷のせいだろう。
ちぎれはしないが骨が見えるくらいに深く切られて服は破れている。
ダラダラと流れる血液とその匂いを辿って後から追ってくるのが気配でわかっていた。
たった一撃だった。
武器ごと叩き割られて腕の肉が裂ける。
それを庇って立ったグレン59の大きな盾も次の攻撃で一閃された。
隙間を通るように放たれたクラーティアの魔法雷の矢によって距離を取ったペットから逃げるようにまた走り出した。
走る瞬間、沢山の雷の柱を出現させて時間を稼ぎながら場所を離れた。
「どうする!? このままだと死ぬぞ!」
代わりの初期装備の盾を装備したグレン59が叫びながら言うと、リンドーがちらっと後ろを見る。
走る時に床を引っ掻く爪の擦れる音が響くのにティアラは小さく悲鳴を上げた
「サンダーウォール!」
近づいてきたペットに雷の壁を出してまた走る。
立ち止まり傷の手当ても出来ないまま逃げるしかない絶望の中、ティアラが泣き出した。
「ひっ! 死ぬよ、無理だよぉ!」
「泣いてないで走るんだ!」
「でも、このままじゃ……」
ファーチルがティアラを見て小さく呟く。
それは4人の心境と同じで唇を噛み締める。
「私の、仲間へ助けを、呼び、ました。合流するまで頑張って、逃げ切りましょー」
息切れを起こしながら4人に言うクラーティアに、それでも表情は浮かない4人。
「君の仲間、強いのかい? これ倒せるのかな?」
ファーチルがチラッと後ろを見る
まだサンダーウォールに阻まれ進めずにいるペットを一瞥してクラーティアに鋭い視線を向けるが、クラーティアはまっすぐ前を見ながら口端を持ち上げて小さく笑った
「私の仲間は強いですよー、舐めてもらっちゃーこまりますよー」
強い自信で言い放つクラーティアに、4人は何も言わずただ視線を向けていた。




