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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第1章 はじめまして幻想郷
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始まりの街【ヴェリアーナ】

「……これが……ゲーム……?」


大自然と共に有る大きな都市。

その中心にある噴水広場にスイは立っていた。

風がエメラルドグリーンの髪を揺らしている。

体に感じる風も、屋台からするいい匂いも

噴水から跳ねる水の冷たさも。


「凄いな………違和感がない」


目を見開き見渡すが、なんの違和感もなくスイはその場に存在していた。

違うのは、人の頭の上に表示されているプレイヤーの文字だろうか。

もちろん、スイの頭上にも緑色でスイと表示されていた。


「? 私はプレイヤーって書かれてないんだ」


他と違う表示の仕方に首を傾げながらも、キラキラと光る街並みを眺めた。

すぐ横には噴水があって、手を差し出してみると冷たい水が手を濡らした。

長袖の服の端まで染み渡る水にスイは手を噴水から戻す。


「冷たい……」


「そりゃーお水だもん、冷たいよ」


変なお姉ちゃん。

その声に振り向くと、茶色の髪を揺らして笑う少女がいた。

頭上には街の少女と青で表示されている。


「お姉ちゃんこんな所でなにしてるの?」


首を傾げて聞く少女にスイは挙動不審になりながらもここには来たばかりで……と話す。


「あ! お姉ちゃんも天帝の御使い様? この頃多いよねー。天帝様はお暇なのかしら」


あ! 内緒ね!!

慌てて口に人差し指を当てていう少女。

はて、天帝様の御使い様とは何だろうか。

そして、何を内緒にするのか。


[称号・天帝様の御使い様を手に入れた]


「……えー」


思わず口に出した言葉に、少女は不思議そうに首を傾げている。


「御使い様、まずはこの街を見ていってね! 綺麗な街だからきっと御使い様も気に入るよ!!」


[メインクエスト・散策が始まりました。]


「お、おおぅ……」


目の前に表示されるクエストの下にはい、いいえが表示されるが、いいえはグレーに変わり押せなくなっている。

メインクエスト、拒否不可らしい。


「ようこそ、始まりの街、ヴェリアーナへ!」


少女は可愛く手を振って走り去っていった。

メインクエストに必要なキーキャラだったのだろうか。

それにしては、街の少女って表示だったが。


この少女はゲーム開始のプレイヤーに声を掛けてメインクエストを促すNPCである。

そのゲームとは思えない作りに、スイはプレイヤーだと思っていた。


噴水近くのベンチに向かいゆっくりと歩き出す。

エメラルドグリーンの髪が風で舞うため軽く手で抑え、スイと同じく始めたばかりのプレイヤーが出現する様子を見ていた。

あ、あの少女が走りよる。


「………これ本当にゲームなの?」


あまりのリアルさに些か気後れすると、足元にあった石に躓く。

前かがみになり、なんとか体勢を整えたが足元が見えない。

フルフルと揺れた少しばかり見栄をはった胸が足元を隠しているのだ。


「……盛りすぎたか……」


周囲にいる男性プレイヤーだろうか、スイをチラチラ見る人や、ガン見する人も居た。

前かがみになったのが余計に悪かったのか。

近づき声をかけようと近づくプレイヤーの存在に気付いたスイは、何とかかわしてベンチに座った。

先程の天帝様の御使い様ってなんだろ? プロフィールを出してみた。

これは以前ゲーム大好きな友人が言ったのだ。


・困ったら街の人に聞く

・プロフィールを見る

・荷物とかアイテム確認

・あとは勢いでどうにかする!


勢いは置いておいて、プロフィールを開いてみた。

するとNEWの文字があり、称号の欄を見つけた。


「なになに」


[天帝様の御使い様]

創造者天帝様の世界から使わされる偉い人。

プレイヤーを指す。


「ざっくりしてるね」


苦笑してプロフィール画面を消した。

ベンチに座ったままこの噴水広場を見ると、スイと同じだろう白と茶色の初期装備を着ている人を沢山見つける。

でも、装備を整えた明らかに初心者じゃない人もたくさん混じっていた。

先にゲームを始めている人や、所謂ベータテスターというやつかもしれない。

初心者プレイヤーになにか声を掛けている様子が窺える。


「ねぇ、その服は初心者さんだよね?」


「え?」


「あれ? 違ったかな?」


急に話しかけられ、スイはビクリと体を揺らした。

見上げた先には剣を腰に挿している男性と、杖を持つ女性の姿。

曰く、一緒に冒険しようよ、レベリング手伝うよ

との事だった。


なるほど、勧誘というやつか。


その勧誘は、スイだけじゃなく至る所で行われていた。

スイは最初この話に乗ろうかと思った。

ゲームについて様々な事を聞けるなと安易に考えたのだが、にこやかに笑っている二人が何故か焦っている様に見えたのだ。


訝しげに見つめたあと、丁寧に頭を下げお断りすると、2人は残念そうにその場を離れて行ったのだった。


この現象は昼からアップデートされた内容に関係があることをこの時のスイは気づきもしなかった。

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