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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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ボス戦 2


 現れた龍は、あの時と姿が違った。

 違うが、あのおぞましく毒々しい雰囲気は同じで薄紫色の霧を纏っている。

 体は少し崩れているが、龍だとひと目でわかる姿はまたあの大変な戦闘をするのかと喉を鳴らした。

 あの時はスイ達4人は龍に畏怖した。今でもそれは覚えていた。でも。


「おらぁぁぁぁぁぁ! かってぇぇぇなぁぁぁ!!」


「……………………」


「デオドール前に出すぎっ!! こうた……こらぁぁあ! カガリ! タゲ取れぇぇ!!」


「やってるわ!! お前らが火力出しすぎっ! おー!! まてまてまてまて!! ナズナ!! 足シュッシュしながら前衛くんな!!」


「あらぁっ!! 私も負けてられないっ!! 見てっ!! 私のこのすが……ブベァァァァァア!!」


「クリスティーナァァァァァ!! 回復よぉぉぉ!! 」


「あっははははは!! なんですかこれ! めっちゃ楽しいじゃないですかっ!! あっ! グレン私の邪魔しないでくださいよ!! 」


「お前が邪魔だろう…………おいっ! バリアっ!! アレイスター死ぬぞ!! 」


「………………うふ、やられたらヤり返さないと」


「「「おちつけ!! アレイスター!!! 」」」


 皆が嬉々として巨大な敵である龍に立ち向かっている。

 笑顔を浮かべ、龍の攻撃をまともにくらい吹き飛びながらも、それはそれは楽しそうに。

 そして、元ソロで強敵にも立ち向かっていたクリスティーナにも笑みが戻り嬉々として巨大な武器を向ける。

 戦闘狂2人が引っ張り全員が勝手にバフに掛かったようにヤル気が漲っているのだ。

 

 スイは少し前にいるリィンを見た。

 敵や味方の動きを逐一見て、回復や防御に専念している。

 そこには自爆を選ぶ様子はみられない。

 

「…………はっ……ははは……すごい……これが、トップランカー」


 スイだけじゃない。ファーレンも小さく笑っていた。

 多少力をつけたくらいの新人に毛を生やしたくらいなのだ。

 今までが順調すぎた。

 穏やかで、みんなでワイワイする楽しいゲーム。

 だからこそ、皆の強さが、トップランカーの意味が今更ながらにわかってきた。

 強さだけじゃない、闇雲に突っ込むだけが戦いじゃない。

 スイの今までのような力押しじゃない、作戦を綿密に練り、実際に戦闘で作戦の僅かなズレや沢山のモーションを知って調整調整。

 失敗して失敗して、なんどとなく挑んで。

 それでも、この笑顔は絶やされない。


 蟻さんの時もそうだった。

 何度も負けて、その度にみんなで作戦を練りなおして、再挑戦。


「ん……っ!! 」


 ファーレンが弾いた龍の攻撃は、どうやら消えないで別方向に屈折するだけだったようで、我らが暴走天使さまにクリーンヒットした。

 バリアに守られているので、そこまでの攻撃は受けなかったが、体力は勿論減る。

 すぐさまセラニーチェの回復が飛んできたが、仄暗い笑みを浮かべるナズナは、すっ……とファーレンを見た。


「弾かないで相殺して……あとで私が身をもっておしえる」


「「ひっ!! 」」


 ファーレンだけじゃなくてタクもビクリ! と肩を揺らした。恐怖しかない!!


「ごごごごごめんなさ……」


「ファーレンそっち行ったぞ!! 」


「ふぁ?! そ……そうさ……い?! なに、どれ!! あっ……!! 」


 あっ……あっ……あっ……あっ……

 まるでスローモーションのように宙を舞い、ファーレンの声が木霊するように聞こえる。


「ぎゃぁぁぁ!! 死に戻りぃぃぃぃ!! 」


 巨大な尻尾がペイッ! とファーレンを吹き飛ばし紙切れのように宙を舞った。

 タイミングが悪い事にちょっと前に体力アップ、防御アップが切れた時で、混乱中のファーレンはクマの盾を使う事も出来ずにだ。


 笑顔で涙を流しながら吹き飛ばされるファーレンに、タクが絶望顔で叫ぶ。

 たぶん、龍じゃなくてナズナへの恐怖に振り切ったのだろう。

 クリスティーナが凄い形相でフェニックスの爪を出しぶん投げる。まさしく豪速球だ。


「ごめん!! 全回復は買ってなかったわ!! 爪で許して!! 」

 

 謝りながらも巨大な爪をファーレン目掛けて投げたのだが、その巨大な爪が事もあろうにおしりにつき刺さる。


「「「「「「「あ」」」」」」」


 おしりに刺さり主張が激しい爪は7色に輝く。

 デカデカと現れた生き返りますか? の言葉に泣きそうな顔でポチリと押したクリスティーナは小声で悪気はないのよ……と呟いた。


 リスク無しではないが、ある程度の回復付きで生き返らせてくれるフェニックスの爪。

ここの運営がこんな美味しいアイテムをそのまま世に出すはずがないのだ。


「ぬっ! 抜けないっ?! 」


 ファーレンのおしりに刺さった爪はその存在感をありありと主張している。

 ファーレンが生き返った後も、おしりにいらっしゃるのだ。爪が。


「……お、おぅ……運営やりやがるな……」


 カガリが引き攣りながらファーレンを見ていた。

 このアイテムの項目にはそんな事一言も書いていなかった。


 《初めての蘇生アイテム利用プレイヤーが現れました。これにより、1部隠されていた説明が解禁になります》


 ぶわりと現れた空に浮かぶ表示。

 龍はその間停止していて待ってくれている。

 恐る恐るその下に表示されている説明を読むフェアリーロード。


 《爪使用時は人体に刺さり、10分間その状態を維持。完全に回復薬を体内に入れた時に抜けます。抜けない仕様になっていますが、もし抜けたら回復薬未接種となり死に戻りとなります。爪はオブジェクト扱いの為、行動の制限はありません。間違っても恥ずかしい場所には刺さないでください》


「……………………恥ずかしい場所」


 全員の視線がファーレンに向かう。

 いや、ファーレンのおしりに。


「お……およめにいけない……」


「どこで覚えてきたんだ、そんな言葉」



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― 新着の感想 ―
ぶわっっはっはっはっは‼これは流石に戦犯ですわっw(爆笑) 後で何かしらなリターンが無いとトラウマになるレベルですなw こんなノリで出来るからフェアリーロードは少数にも関わらず精鋭扱いされ、プレイ…
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