掲示板と砂漠の中でのティータイム
あの後蟻さんの協力の元、数日に1回は模擬戦を行ったスイ達。
ボス戦になれているクランメンバー達は、次第に対応していき蟻さんにダメージを与えるまでに至ったのだが、スイ、そしてファーレンは今日もまた蟻さんの強攻撃に吹き飛ばされて地面に大の字に倒れていた。
「蟻さんつよっ蟻さんフィールドボスより絶対強い」
「ああ、俺もそう思う。しかも、この足が取られる砂漠の砂地もスイスイ動くからな。もうチートだ」
「本当に。チーズだわ」
「…………チートな、チート。なに、スイはチーズ食べたいの?」
「…………………………チーズケーキィィィィィ!!」
「きゃあ! なぁに?! なんで急に叫んでるのよスイー?! チーズケーキがなぁに??」
普通に間違ったスイは真っ赤な顔で叫び、リアルでもほんのり頬が赤らんでいた。
ぐったりとしていたクリスティーナが飛び起きて、ファーレンと並んで倒れるスイを見る。
「チーズケーキ持ってこぁぁぁい!」
「なんなのー?!」
そう言いながら走りより、寝転ぶスイの隣に座ったクリスティーナは、1口サイズのチーズケーキをスイの口に運ぶ。
パクっと食べたチーズケーキは濃厚で口にベッタリとまとわりつく。
「…………なんか、美味しいけど……ベッタリしてるね?」
「美味しかったらいいよね♡」
「……失敗したね!!」
「味は失敗してないのよ?!」
「食感んんん!!」
「んもぅ! わがままぁぁ!!」
そう叫ぶスイ達からかなり離れた場所では、掲示板に書き込むプレイヤーが後を絶たない。
掲示板は今、主に2つが忙しなく動いている。
ひとつはスイ率いるフェアリーロードの蟻攻略掲示板。
スイたちのコミカルな動きから、戦闘に対する考察など、様々な情報が凄いスピードで流れている。
この場に来れない低レベルのプレイヤーは勿論、イベント中で来れない高レベルプレイヤーも多くの人がその掲示板に釘付けになっていた。
そしてもう1つ。
ゆるふわスイちゃんと愉快な仲間たちwith蟻さんという色々と突っ込みたい掲示板には、さらに投稿が加速されていた。
[クリスティーナのチーズケーキだ!!]
[なんだと?!]
[しかも失敗作!!]
[なんと! レアではないでござるか!]
[あ! 蟻さんがリィンちゃんの頭を撫でた!!]
[[[俺も撫でてぇぇぇぇ……]]]
[相変わらず変態しかいないわね!! 次は私の番だから引っ込んでなさい! ブタども!!]
[横入りだめ、絶対]
[あっ……タクが打ち上げられた……]
[[おぉ……シンボルは大丈夫なのか……]]
[馬鹿ばっかりだわ]
[そういや、他にも蟻さんに模擬戦頼むんだって意気込んでたプレイヤーどうなった?]
[それ俺ら。探しても会えねぇのよ。会えたら既に模擬戦やってるか終わってマッタリタイムかでさぁ。あのゆるふわ見てると、終わってから模擬戦頼みにくいって]
[やっぱゆるふわなんだ]
[物理的にゆるふわだ]
[おい]
[どこがだ]
[具体的に]
[わかるだろっ!! 楽園だよ! 花園だよ!! 見事な2つの果実だよっ!!]
[( ゜д゜)ハッ!]
[( ゜д゜)ハッ!]
[( ゜д゜)ハッ!]
[男子サイテー]
[小学生かよwww]
「………………馬鹿なのかしら」
「脳内小学生で止まっているのですよー」
セラニーチェが休憩しながら掲示板を見る。
その横からデオドールも覗き込み、うふふと笑いながら言った。
まさか本人達がリアルタイムで見ているとは思っていない掲示板使用者は今日も好き勝手に書きなぐっている。
[あぁ、蟻さんに飛びつきたい]
[おれ、スイちゃんに埋まりたい(物理)]
[お腐りやがれませ]
[ハゲ散らかれ]
[ハゲは違うよねぇ?! 繊細な内容に突っ込んだらダメだからね?!]
[おれも埋まりたい。注意毛根は頑丈]
「………………本当になんなのかしらね」
「スイちゃん見守り隊から、スイちゃん襲い隊だわぁ」
「シャレにならないって」
うふふと笑いながら凄いことを言ってきたデオドールの頭をチョップしながら言うセラニーチェ。
今日も穏やかに流れる時間を満喫するフェアリーロード。
高々く打ち上げられた本日2回目のタクを見上げて、今日も平和ね……と言い切ったセラニーチェ。
十分に毒されているセラニーチェも、差し出されたチーズケーキを持ち、砂漠のど真ん中でティータイムを始めたのだった。
「…………はぁ、美味しい」
「セラさんのは成功作♡」
「私にも成功作ちょうだいよ!」
「ある意味成功作♡」
「クリスティーナァァァ!!」




