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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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模擬戦


 現在、掲示板が荒れていた。

 あるクランの人が衝撃的な場面を見て、それを掲示板にのせたことが発端である。

 砂漠のある場所で、まさかの敵に模擬戦を頼んでいるフェアリーロードの様子である。


 写真や動画は設定した人以外は出来ない為、文章での投稿だ。

 そのありえない内容に、それはそれは掲示板が荒れに荒れた。


 [え?! 敵に模擬戦?!]


 [ちょいまち……頭が理解してない]


 [え? 普通に無理じゃね?]


 [それ、ただの戦闘では……?]


 混乱の渦に巻き込まれたプレイヤーたちの困惑のつぶやきは止まらない。

 だが、途中からフェアリーロードだし。

 スイたんだし。

 クリスティーナだし。

 といったコメントが流れ出すと、皆があー…………と納得していく。


 [ちょっと見に行く]


 [場所どこ]


 [ごーごー]


 [生スイたんのたわわに実った……]


 [はい、あうとー]



 混乱し荒れている掲示板に気付いていないスイたちは、蟻さんの前に座り込んで話をしている。

 ボス戦での立ち回り、強攻撃時のモーションの理解力と対応。

 そんな話をジッと聞いている蟻さんはふむふむと頷いていて。

 この世界のキャラ作りの細やかさに今更ながらカガリは驚いていた。



「じゃあ、模擬戦お願いします」


 カガリが立ち上がり頭を下げると、蟻さんは離れた。

 そして、蟻さんを中心にピーと線が引き、それが円を描く。

 地面に大きな円が出来て、その場がうっすらと赤く光る。


「………………え、これ」


「まじか……」

 

 これは、フィールド上で移動するウォークボスのテリトリー。

 このゲーム内でフィールド内を歩くウォークボスと呼ばれるボスが新たに実装された。

 誰がボスかはまだ発表されていない。

 まさか、蟻さんがそのボスだったとは……と全員が驚く中、スイだけがキラキラとした目をして両手を上げた。


「蟻さんがボス!! カッコイイ!!」


 そう言ったスイに、蟻さんは梨味のグミの袋をそっと渡して狂喜乱舞したのを見て、リィンたちの眼差しが鋭くなる。


「ずるいですぅぅぅぅ!! 私もカッコイイって思ってましたぁぁ!!」


「スイ! 苦楽を共にするもの同士食事なんかも分けるべきだと思うのよぉぉぉ!!」


「スイぃぃぃぃ!! 独り占めはだめだろぉぉ!! 分けろぉぉ!!」


「いやぁぁぁぁぁぁだ!!」


「………………いや、必死すぎだろ」


「そんなスイちゃんもぉぉ!! 素敵っだぁぁぁ!!」


「……タク、うるさい」


 準備が整っている蟻さんは静かに佇み穏やかな眼差しを向けていたのだった。






 戦闘が開始した。

 どちらかというと、開幕はゆっくり動くのだろう、沢山の足を動かして薙ぎ払う蟻さん。

 それをまずはバリア等で防ぐ。


「開幕の、バリアはテンプレだから……最初にバフを付けるのはおすすめよ! ただね、敵の動きがサポートプレイヤーを狙うかは見極めが必要!! その場合は、回避が先!」


 攻撃が来て、回避をしながら教えてくれるセラニーチェ。

 最初は走り周りを見ながらのバフが多いスイは、ふむふむと頷きながらバフをかける。


「バフより前に発動した魔法はもちろん効果は通常。だが、クールタイムはかわらねぇから、それを計算してバフのタイミングをはかる」


 グレンが炎の魔法を発動して言う。

 前衛では、盾での回避のすぐ横から走り出したタクやイズナ達が蟻さんに向かって剣を振り下ろす。

 攻撃が入り体力ゲージが減ったが、それも数ミリだけで、体力おばけだとわかる。

 クイッ……と脚を下げた様子を見たリィンが叫んだ。


「なにか攻撃来ます!」


「バリア!!」


「んっ……」


「きゃぁぁあ!!」


 突然の暴力的な風の塊が飛び出てきてクラーティアに直撃して吹き飛ぶ。

 すぐさまリィンから回復が飛んできて、グィン……と体力ゲージが戻る。


「(…………いま、なんでわかったの)」


 ほんの少しのモーションをしっかり見ていたリィンだったが、それに気付けないスイは眉を寄せた。

 じっと蟻さんを見ているが、なにがモーションなのかわからない。

 戦闘時の同じ動きに見えるのだ。


 前衛の攻撃が一旦中断。

 その瞬間、銃火器が火を吹いた。

 しかし、蟻さんは防御もせずに佇んでいて、足の一振で炎や煙が掻き消えた。


「…………さすがボス、なかなか攻撃が通らない」


「近接武器の方が攻撃通っていそうですねぇ」


「でも、最初のグレンさんの魔法は効いていましたよ!」


 武器を構えて話をするのを黙って聞く。

 何の攻撃が効くのか、敵のゲージ減少、モーション。


「通常攻撃が足、かな」


「魔法も使えるよな」


「うおっ! はえぇ」


 一瞬で詰められて防御が間に合わずカガリがナズナの後ろまで下げられた。


「スイっ! バフ!!」


「は……はい!!」


 一気にかき鳴らした音楽にステータスか跳ね上がったが、無表情で戦うデオドールの剣が弾かれ舌打ちする。


「前までバフ届いていないわ」


「えっ」


 よく見たら、いつもよりも後ろにいて、音が届いていなかった。


「っ嘘でしょ!!」


 前に行ってもう一度……と思うがクールタイムで弾けない。

 もぅ!! と悪態をつくと、目の前に現れた蟻さんに腹部を強打されて吹き飛ばされた。

 防御も何も出来ずクリティカルをくらったスイはすぐさま回復薬を飲むが、前を見たら膝を突いている仲間が数人。

 回復するリィンとセラニーチェがすぐさま起こしているが、蟻さんに決定打は与えられなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 蟻さん、模擬戦を理解してる? 容赦ないみたいに思えるけど、手加減してるっぽい? なんて素敵な蟻さん!w
[良い点] 何気に喜ぶ蟻さんが素敵過ぎるw 貰った物を取り合う面々も面白いですしw [一言] この一戦、色んなプレイヤーに見られていますがバグってるでしょうね〜。観戦してるプレイヤーの頭がw 私も其処…
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