戦い方の教授
ゲームを始めたばかりだったスイは、その奏者としての能力を早い段階で開花させ、サーヴァという正しく導く楽器屋を見つけたことにより、戦える楽器とその働きを知った。
ただしそれは、闘う奏者としての行動であり、チームワークを教える為ではない。
あくまで、奏者としての最低限の行動パターンなだけである。
強い敵とぶつかり、仲間達と切磋琢磨して奏者としての力を磨く。
それが真っ当な成長の仕方なのだろう。
だが、スイはその爆発的な力で無慈悲に押しのける力を手に入れ、さらに仲間となったのはトップランカーが集まるフェアリーロード。
スイの身勝手な行動も十分カバーしてくれる強く大人な仲間達が集まるクランだった。
皆でなかよく。それは初心者にも優しくて、スイを自由にしてくれた。
強い仲間、爆発的な力にステータス値を底上げする奏者の能力もしっかりと使うスイを、それが彼女のプレイスタイルだからと誰もが見守り、時には彼女が中心となって戦いに挑んだ。
だが、逆に言えばチームでの正しい警戒やボス戦での注意を知らない事に繋がる。
なまじ力押し出来たからこそ、初期に知るべき戦いの知識が疎いのだ。
だが、第3の街に来てはいるが、スイはゲーム初心者に変わりなく、まだ始めて1年経っていないのも事実。
他から見たら力が強く素晴らしい奏者に見えるかもれないが、まだまだ基礎の出来ていないルーキーだ。
「さあ、じゃあ今日は龍退治前の大事なお勉強としましょうか」
青い髪をなびかせて笑うセラニーチェは、ピッと指さした。
その先には、珍しく水辺で遊び軽く濡れているデオドールが笑顔で水をすくっていて、そんなデオドールの凶器にも似たボディをデレデレと鼻の下を伸ばして見ているタク。
今更だが、ゲームでのキャラデザは素晴らしいのにどうしてあそこまで崩れる顔まで作れるようになっているのか。運営の執念を感じる。
「まずは前衛。基本は近距離攻撃をするプレイヤーと、盾持ちのプレイヤーを配置。職業によって役割は多少違うけど、まぁ、闘うプレイヤーと防御特化でタゲ取りして仲間を守る盾持ちって考えていいね。遊撃は居ないから、前衛プレイヤーがステータス値を弄って遊撃をするプレイスタイルを貫く人もいるわよ。うちではガチガチの攻撃スタイルだからいないけどね」
「次に、中距離型」
眺めていた先をお茶に戻したセラニーチェは、コクリと1口飲んだ。
そして、ここにいる中距離のクリスティーナを見ると、うふん! とウインクして艶やかな赤い三つ編みが揺れる。
ムキムキの体に可愛らしい顔がミスマッチで頭がバグる。
「中距離はね、タメが多いけど高火力が出せるアタッカーよん! タメの無い早打ちも得意よ! その時は火力あんまり出ないけど! そういう場合はスキル乱用するの。連続はちょっと難しいからここぞと言う時に早打ち高火力をだすわ。アレイスターさんがこのタイプよん!」
たしかに、弓を使っての強力な早打ちはアレイスターのプレイスタイルだとスイは頷く。
通常攻撃も強いが、スキルを複数使っての攻撃は凄まじい火力を叩き出す。
「逆にタメて攻撃するのはあたしとかナズナちゃんね。大体の銃火器がそのタイプ。動きが遅くて攻撃を受けたらリセットされちゃうんだけど、その分攻撃にいけたら強い火力を出せるわ。この武器のいいところは、唯一の同時攻撃ができるの。タメている最中に、同時に魔法を打ったり出来るのよ。私はこれね」
「……え? ナズナちゃん動き遅くないよね? むしろ早い」
「ナズナちゃんはですねー、攻撃と速さにステータス値を振ってるんですよー。武器も軽量化したものを使っていて、タメてそれなりの火力を出しつつ行動も出来るスナイパーを目指すんだって言ってましたよー……まぁ、今迷走してるのか足技駆使したスナイパーですけどねぇ」
「あの子……どこを目指しているのかしらね。まあ、攻撃と速さに振ってて、さらに防具なんかも速さ重視だから紙防御に近いのだけどね」
「紙防御?」
「防御力がペラッペラよー。だから、前衛の盾持ちがしっかりコントロールしないとタゲ向けられたらナズナちゃんは危ないのよね。そのための逃げ足でもあるわ」
目を丸くするスイが、カガリに話し掛けタクを指さしているナズナを見る。
何か話してから、カガリが笑いだしナズナの頭を撫でた。仲良しである。
「…………凄いんですね」
「みんなそれぞれプレイスタイルを決めているの。大枠に前衛、中衛、後衛って別れているけどね、そこからは自由に決めていいのよ」
「なるほど……」
「プレイスタイルもみんな自由に好きなようにです。確かに職業ごとにある程度の決まりはありますけど、それからかなり外れたプレイスタイルを貫く人もいるんですよ」
「ねぇスイ? あたしったら料理人よ? 闘う美人人魚よ? ほら、なんでも出来るでしょ?」
「…………うん。闘う化け物人魚だもんね」
「麗しい人魚よ!!」
きぃ!! と叫ぶクリスティーナに思わずふきだした。
んん! とわざとらしく声を上げて紅茶を飲んだスイにクスリと笑ったクラーティアが2つのカップを見えるように置く。
次はクラーティアからの説明のようだ。
飲んでいたカップを置いてクラーティアを見ると、にっこり笑ってスイを見たクラーティアはいつものぐふぐふと笑う顔を引っ込めていた。




