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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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砂漠の敵再び


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 諸事情で空中庭園へ行く日にちをずらしたスイ達。

 温泉からミニウサギの村まで戻りログアウトした為、次にログインしたのはミニウサギの宿屋だった。

 まだみんなが来ていないので、回復薬を買い付ける。

 リィンやセラニーチェの回復が効くなら問題ないのだが、それをするとスイは逆に死んでしまう。

 バリアなどの聖属性も同様だ。

 これ、実は今スイが気にしている事である。


 あの時、穢れた龍での戦いの時にリィンの回復が受け付けないせいでダメージを受けたスイは動けず、リィンが走ってきて回復薬を口に入れてくれた。

 あの時は何とかなったが、人数が多く混戦した時や、回復に来てくれる余裕が無い時はただのお荷物になる。

 何とか手持ちの回復薬が使えたとして、麻痺などの状態異常がかかっていたらもう無理だろう。

 あの時、スイの状態異常を直したリィンのスキル、ディアーズも光属性である。

 効果はある。だが、ダメージもある。

 回復よりもダメージは少ないが、レッドゲージで状態異常になりティアーズを受ければ確実に死に戻りするだろう。

 

 さらに、失ったイルカさんハープ。

 使い込み手に馴染むハープから、今は美しい人魚が歌う人魚さんハープに変わった。

 鬼ごっこで使用済みとはいえ、こちらは性能をまだちゃんと理解しておらず、どんな使い方をするのか検討中だ。

 とにかく、この世界の人魚がいかにバケモノなのかが分かったくらいだ。

 サーヴァさんは使って色々覚えろとは言っていたが、まさかすぐに龍との戦いになるとも思っていなかったから、そこまで試していなかった。

 今後要注意だろう。


「………………避けるか防ぐか……奏者に出来ることってなんだろう」



 回復薬を買ったスイは、フラフラと村を歩いていると、死に戻りで帰ってきたプレイヤーを見た。

 あー、くそ! と悪態をついているが、負けたプレイヤーにはよくある事だ。

 そう、良くあることなのだ。







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 続々と集まるメンバー達、やる気満々だ。


「よーし!! 楽しみー!!」


 わーい!! と両手を上げてやる気を出しているタクと、隣でワクワクしているデオドール。

 武器を布で磨いてピカピカにしながら笑っているからある意味ホラーだ。


「全員来たな」


「買い物とか大丈夫? 必要なら今から行きましょうか」


「アイテム類は粗方ログアウト前に買ったから……」


 皆がそれぞれ持ち物を確認し、武器の耐久度も確認、回復した。

 1時間程準備に費やして、いざ! とミニウサギの村を出たスイ達は、砂漠の敵を倒しながら祠に向かう為に歩いていた。

 今回は蟻地獄なクワガタとのエンカウントが多く、いきなり砂に引きずり込まれること数回、今までよりも強い敵に、寧ろ楽しくなったフェアリーロードたちは笑い声を上げながら敵を殲滅していった。


「やっば、足つかまれたー! あはははは!!」


「イズナが笑ってるっ!!」


「あらぁ、珍しい光景ねぇ」


 イズナの足にしゅるりと何かが巻き付き、そのまま蟻地獄に引きずり込まれる。

 それを笑いながら見ていると、皆の顔が引き攣った。


 アレイスターが目を丸くしながらイズナを掴む敵を弓で撃つ。

 蟻地獄なクワガタの額を一撃で射貫くくとスキルを使っていたのだろう、みるみるうちにゲージを減らした。


「ありがとう」


「どういたしまして」


「サボテン来た! 3体!!」


「…………こっちは任せて」


「1体は俺が止める」


「バフしま …………わぁぁぁぁ!! 人魚さんが目を開けたぁぁ!! 1体クリティカルヒットです!!」


 凄まじいスピードで、仲間の誰にも当てずにイルカさんをサボテンにヒットさせた人魚さん。

 まだまだフーフーと肩で息をしていて、殺し屋みたいな目をしている。


「いや……もう変だろ、それ」


「ファーレンのクマさんも人の事言えないからね?!」


 パァン!! と音を鳴らして手を叩いているクマさん。

 サボテンが突進して来ると、何故かクマがグーパンチをしてサボテンを吹き飛ばした。

 盾のスキルで敵の攻撃を弾くものなのだが、弾くとはいったい……


「………………なんか、お前ら武器おかしいよな……リィンもいつの間にか杖からステッキに変わってるし」


「前の戦闘で力不足を感じたので。私もフルオーダーにしたかったのですけど、セミオーダーにしました」


 両手で持ってにっこり笑うそれは、星柄の大きな飾りがクルクルと回っている魔法少女が使うようなステッキである。

 長いリボンが風に揺れてフワフワしていて、星屑がステッキの周りをふわりと舞っている。


「………………可愛いな、お前込みで」


「やだ……恥ずかしいですよ」


 カガリの褒め言葉に頬を赤らめる、誰よりも乙女なリィンをセラニーチェはチラリと見た。

 1段階も2段階も強くなったリィンの回復職として、セラニーチェもどうにかしないとと悩んでいるのに上手くいかない。


「……まずいわね」


 セラニーチェは自分の性格をしっかり理解していた。

 ベータテスターの時のように、またリィンとの喧嘩が始まるかもしれない。

 むぅ……と悩んでいると、後ろから現れた蟻の敵に足で吹き飛ばされた。


「あぅ!!」


「セラ!!」


「セラさん?!」


 ずざぁぁぁぁぁぁぁぁ!! と音が響き、一気にゲージが黄色に変わる。

 呻き声を出して顔を上げた時には、蟻の脚が眼前に迫っていて、目を見開き固まってしまう。


「セラさぁぁぁぁん!!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ぶんっ!! と強風が吹き荒れ蟻が吹っ飛ばされた。


「な……ななななななななん?!」


「勢いあまって人魚さんハープ投げちゃいました」


 てへ……と笑うスイは楽器を持っていなくて、吹き飛ばされた蟻にめり込んでいる人魚さんハープがブチ切れて髪が逆だっている。


「…………助かったけど、あれ、大丈夫? めっちゃ怒ってるけど……」


「うわっ!! こわっ!!」


 よくも投げてくれたわね? とバックにトゲトゲしく文字が浮かんでいる。

 人魚さんの手にはイルカさんが握られていて、力が入りすぎてイルカさんの顔がギャ!! となっている。


「……あ、回復ありがとう。そのステッキの効果かしら? 星屑がキラキラしてるわ。可愛い」


「そうみたいです! 今日初めて使いました!」


「…………いいわね、私も変えようかしら」


 にっこり笑った時だった。全員に影が掛かる。


「………………え? なに?」


「何かいる……の?」


 敵を倒したカガリ達も集まって来ていて、同じく上を見ると口をポカンと開ける。

 あまりにも大きな物体に、全体像が見えない。



「………………な、なにあれ……」


「まって、まってまって……」


「………………まさかランダムボス……」


 ギロリと目……だろうか。

 こちらを見た時、全員がビクン!! と体を揺らして恐怖に体が震え出す。


「…………これ、やばい」




 

 ボスと遭遇しました。

 今から戦闘が開始します。


 600秒…………………………



「カウントダウン始まった!! やべぇぞこれ、ランダムボスのしかもレイドじゃねぇか!!」

 


 あんまりなエンカウントに、全員が白目を剥きそうになった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最近は可憐すぎて【性別:リィン】ではなく【聖別:リィン】じゃないかと思い始めてますww [気になる点] スイさんって持ってますし、案外彼女に引かれてイベントが始まってたりして(苦笑) [一…
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