ドラゴンをめざして
ナズナ様のスキルが発覚(˶' ᵕ ' ˶)
情報によりドラゴンの生息地を知ったスイ達は、2箇所のうちどちらを選ぶかで迷っていた。
1番早く行けるであろう場所は、岩山がある場所だろう。
スイはそちらを希望した。
しかし、カガリ達厄災のクエストを受けていない人達は空中庭園が気になって仕方ない。
わかる。わかるのだ。
未到達のエリア、しかも発見者はスイ達フェアリーロードだ。
気になるだろう。よくわかる。
だが、それには、あの門番の龍を倒す必要があるのだ。
「…………や…………やめませんかぁぁぁぁ」
「なんでだよ」
「あそこは……あそこはいけませんのですぅ」
しゃがみこみ、カガリの足元で蹲るスイの隣に、目を潤ませるリィンが肩に手を当ててカガリを見上げている。
震えるファーレンと、言わないけどいつか再戦を果たしたいクリスティーナも今は神妙に頷いていた。
「…………え、なにがあったの?」
タクが、いつもと様子の違うスイ達にびっくりしていると、遠くからのしのし近付いてくる敵を発見した。
タクは剣を握りスイ達を庇うと、敵は足を止める。
そのまま数十秒黙っていると、顔を上げたスイはその敵を認識した。
「あっ!! 蟻さぁぁぁん!!」
「えっ?!」
「まて!! 2匹いる!!」
走り出そうとしたスイの腕を掴んだグレン。
確かに、隣には一回り大きな蟻がいた。
しかし、その蟻もこちらをじっと見ているだけで戦う素振りは見せない。
「………………あれもきっと! 素敵な蟻さんです!!」
「どこに確証が! おいっ!! ハープを俺に向けるな!!」
スイは混乱している。
「バッドステータスぅぅぅぅ!! ちょっとスイ?!」
頭の上のゲージが点滅している。
何らかの異常が出ているのがわかり、その影響だろう、人魚のハープをブンブンと振ってグレンから離れたのだった。
「くっ! あれのどこが楽器なんだ」
「十分武器だよな、クッソつえぇ」
カガリが割り込み盾で防いでいる間に走り出したスイは、蟻さんに一直線である。
「蟻さぁぁぁぁん!!」
走って、前で急停止。
そして90度に頭を下げて潔くお強請りした。
「グミください!!」
『『……………………』』
蟻さん無言でスイを見下ろす。
それは、仲の良い蟻さんだけじゃなく、新顔の蟻さんもだ。
ニュー蟻さんはゆっくりと脚を伸ばした。
スイよりもずっと大きな蟻2匹に頭を下げるスイ。
それをハラハラと見るクランメンバー達。
『……………………ぐいぐい』
ニュー蟻さんは、ワサワサと沢山ある足の1本をスイの頭に乗せて撫でた。
ぎゅいん!!
一気に減る体力。
たぶん、蟻さんより、このニュー蟻さんの方が強い。
ふぁっ!! と声を出し目をグルグルすると、ニュー蟻さんは足を離して頭から何かを掛けた。
一気に梨の香りがして、体力がフル回復したスイは顔を上げる。
「…………え?」
口に垂れて入った液体は濃厚梨ジュースで、あまりの美味しさにヘナヘナと座り込むと、クリスティーナを先頭に皆が走ってきた。
「…………あれ? 私?」
「あ、バッドステータス解除になってる……んもぉ!! びっくりさせないでよぉぉぉ!! バカァァァ!!」
バシィィィン!! と背中を叩かれ、スイはぎゃ!! と吹き飛んだ。
うつ伏せでおしりを突き出したような姿で倒れ込むが、ゲーム仕様でタイトスカートの中は真っ黒だ。安心設計である。
「…………なに? なんで叩かれた……?」
「あんたが悪いの!!」
「なぁんでぇぇぇ……」
せっかく回復したゲージの3分の1が吹き飛んだ。あれ? クリスティーナってボスだったかな?
また掛けられた梨ジュース。
甘さと回復の恩恵がある代わりに体はベタベタだ! やったね!!
「…………………………お風呂に……龍討伐の前に温泉に行きたいです……」
「……わかったから、とりあえず立て」
「おおおぉぉぉ!! スイちゃんがあられも無い姿でぇぇぇ!!」
「あーなたーのもっとっにっ、今日も来るー。素敵な天使が今日も来るー。準備はいーい? お空の散歩の時間だよ! 1、2、3、どかーーん」
「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 天使さまぁぁぁぁぁぁぁ………………」
シュッシュとしている足はまだ高速で動いている。
まさかの、第2撃なのか、と慄いていると流石にイズナが止めに入った。
「はい、制裁はおしまい」
「………………わかった」
唇を突き出して不満顔な暴走天使は、あ……と声を上げた。
そして、カガリの服を引っ張る。
「ん? なんだ?」
「見て、新しいスキル」
「へぇ、なん………………追撃王……」
「えらい?」
「お………………おぉ…………」
追撃王。
足技の上位スキルで、敵を打ち上げ上からたたき落とすスキル。
中距離のナズナには必要ないはずのスキルであり、他にも足技スキルが豊富にあった。
「……………………あいつ、何を目指してんだよ……」
「タクでレベル上げてるな」
「あの子も規格外よねぇ」
クラーティアとデオドールと話すナズナを見ながら、カガリとグレン、アレイスターは苦笑する。
どうやったら戦闘で使わない入手の難しい上位スキルを取れるのか。
「とにかく、1回は見てみたいから空中庭園に行かない?」
ピクピクと震えているタクを放置で話が進む。
何故かその会話に蟻さん2匹も参戦していて、スイの手には5袋のグミがありご満悦だ。
あんなに嫌がっていたのに、蟻さんの登場でコロッと機嫌をよくするスイを、クリスティーナは単純よねぇ、とリィンに小声で話していた。




