ミニウサギの村
敵を倒して行くスイ達。
今までよりも格段に強くなっている敵を相手にして攻撃をいなし、倒していく。
スイ達はだいぶ慣れたとはいっても、タクやカガリ達前衛は砂に足を取られて被ダメを受けることが今まで以上にあった。
かなり苦戦させられる。
「うおっ!! またか!!」
「しっかりしてよ!! タク、死にたくなかったら……………………いや、もう死に戻って!! 」
「イズナちゃぁぁぁぁん?!」
何回目だろうか、タクが足を取られて滑り、その隙に鉢ありサボテンが魔法を飛ばす。
ぎゃーー!! と叫び必死に逃げていると回復が飛んで来た。
「女神さまぁぁぁぁ!!」
「え……そんな……」
リィンが顔を赤らめて答えると、ナズナの足が高速に動いた。
大魔神様が垣間見えて、タクがぎゃ!! と叫んでいる。
いつあの餌食になるかわかったものじゃない。
「あぶ……あぶない……敵よりあぶない……」
剣を握りしめて前を見るタクは敵の恐怖ではなく、身内からの激しい蹴りの恐怖に怯えてカタカタと震えた。
「しっかりしろ! タク!! 本当にナズナの足が火を噴くぞ!!」
「助けて?!」
そんないつもと同じ軽口を叩きながら敵を倒していく。
確かに、砂地に足を取られがちだがちゃんと倒す、さすがトップランカーである。
「こわぁ……砂漠こわぁ」
「もっと進んだら敵強くなるよね。レベリング必要かな」
「武器とか揃えたらだいぶ楽よぉぉ!」
見て!! とまるでガンダムな装備を見せつけるクリスティーナに全員無言。
たとえ装備を揃えなくても、クリスティーナは負けたりしない。しないとも。
「で、方向はこっちであってるか?」
「あってます、ここ真っ直ぐ」
1度行ったことのあるスイ達にはマップ表示がされている。
便利なものだと指さし確認してカガリの質問に答えた。
「やぁ、いらっしゃい!!」
ピコン! と耳を立てて小さなウサギの獣人が出迎えた。
にっこりふわふわな、その容姿にフェアリーロード皆が射抜かれ、キューン! となる。
だが、忘れてはいけない。この兎は立派な大人なのだ。
「あ、君たちは前に来たよね! お友達を連れてきたのかな?」
「そうなんです。ちょっと聞きたいことがあって」
もふもふキュッキュッ!
「そうなんだね、俺たちでわかるかなぁ?」
もふもふキュッキュッ!
「聞いて回るつもりなんで」
もふもふキュッキュッ!
「そっかそっかぁ!!」
「……………………あーのさ、それ、なにしてんの?」
小さな兎の獣人の長い耳を、気の済むままにモミモミキュッキュッと撫で付けるスイ。
蕩けるような笑みを浮かべていて、その後ろにはクリスティーナ、リィン、ファーレンと並んでいる。
「まったくー、前も言ったけど大人の男の耳を無遠慮に触ったらだめだよー? 結婚してーって言われたらどうするのー」
いやぁー、困った困った! と笑う兎獣人に、へらりと笑う。
「私にはハーヴェイさんっていう人が……」
「スイさん?!」
てれてれ……と笑いながら言うが、すぐさまリィンにお叱りを受けた。
「あれ? ハーヴェイってエルフの?」
「知ってるの?! 今探してるの!! 知ってる?」
「あー……うーん、知ってるような、知らないような……」
「どこー!!!」
ガシッ!! と肩を掴み勢い良く振ると、小さな兎獣人は揺さぶられるままにガクガクと頭を揺らした。
長い耳がブンブンと動いている。
「スイっ! まって! 死んじゃうって!!」
「はっ!!」
揺さぶられて目を回し千鳥足になってる兎獣人を支えて謝ると、大丈夫だと笑ってくれた。
「ハーヴェイはね、ここら辺にはいないよ。君たちが来た道の何処にもいないかな」
「それって……」
「先に進まないと見つけられないって事?」
「ここに居ないって言ってるから、もしかしたら次に行かないと見つけられないのかもしれないわねぇ」
アレイスターが言ったのが、多分当たりだろうと皆で顔を見合わせる。
ハーヴェイを探すには、次の目的地へ向かう必要がありそうだ。第4のフィールドに。
だが、まだエリアボスが見つかっていない。
ハーヴェイに会うには、まだ時間が掛かりそうだ。
「で、聞きたかった事って? ハーヴェイのこと?」
「あ!! 違うんだ! 悪いんだが、ここら辺でドラゴンはいないか?」
カガリが聞くと、兎の獣人は顔を青ざめさせた。
「ドラゴン?! なんでドラゴンを?!」
「ああ、採取クエストでドラゴンの肉が必要なんだ」
「……………………よりにもよって、ドラゴンの肉」
嫌そうに顔を歪ませている兎獣人。
スイたちは知らなかったのだが、疫病のクエストが終わった時、祠を守るドラゴンが爛れ腐敗し忌み龍になったと通達されているようだ。
そのために、祠が壊され広く疫病が皆を病んでいった。
それが分かれば嫌悪するのも頷けるのだ。
たとえ、祠を壊したのはドラゴン……龍ではなくても。
「いやぁー……うーん……んん……」
言いづらそうに言葉を濁す兎獣人にギラギラとした眼差しを向けると、根負けしたように話し出してくれた。
「ここら辺にいるのは2種類だよ。ここからずーっと先にある岩山に1種類。もう1種類は、空」
上を指さして教えてくれる獣人。その指先を見てから全員で空を見上げた。
ああ、やっぱり天空庭園なのだろうな。




