最後の採取クエストはドラゴンの肉
結果的に7つの採取以来を受けたスイたち。
ほぼ手持ちにあるのばかりでその場でクリア出来たのは運が良かった。
途中、グミの採取クエストに駄々をこねるスイがいたが、それでも無事にクリアである。
これ、持ってない人が当たったら入手は困難を極めるものだろう。
だって、まずは蟻さんとの仲を深めないといけないからだ。
「で、最後がこれかぁ」
「さすがに持ってないわよ」
「持ってたらヤバいだろ」
採取クエスト、ドラゴンの肉。
「ねーえぇぇぇ、なんでドラゴンの肉なのよー」
「イヤイヤ!! 何いきなりハードル上げてるの?!」
「ドラゴンってどこ?! 飛龍なの?!」
「このエリアにいるんだよな?」
「もー龍はやだー! もふさーん!! なでなでしたいよー!!」
騒ぐクラメンに、現実逃避をするスイ。
もうドラゴンはいやなのだ。
大変だし、死にそうになるし、リィンが自爆したからトラウマになりそうだ。
あの可愛らしい鼻ぺちゃな犬様を思い出し、エアなでなでをすると、末期症状だわ……とクリスティーナが慄いた。
「もう龍は勘弁だよな……」
ブルリ……と震えるファーレン。
戦ったことのないメンバー達も、その様子にブルリ……と身体を震わせた。
「人魚の肉で代用出来ないかな……」
「スイ?! アンタ私を削ぐつもり?!」
「ぎゃ!! 口に出てた!!」
はっ! と口をおさえるか、ペロリと出てしまった言葉はもう戻せない。
クリスティーナに何やら怪しい食べ物を口元に持ってこられグイグイされるスイは必死にクリスティーナを止めていた。
そんな2人を放置したカガリ達は顔を突合せて話をする。
「…………ドラゴンか」
「このフィールドでドラゴンの発見情報ない? 」
「今掲示板見てみるのですよー」
「強くないドラゴンがいいな……」
「いるのか? そんなの」
そんな話をしている時、スイはふと思い出す。
疫病で回っていた村は獣人たちの村だ。
なら、何か知らないだろうか。
「………………あの、掲示板で発見情報が無かったら、獣人さんたちの村に聞き込みにいきませんか?」
「獣人?」
スイの言葉に興味を持ったのはグレンだった。
頷いて、疫病の時に回った獣人たちの村を伝えると、掲示板を見ながら皆で悩む。
「このエリアは住んでいる人の方が詳しいだろうし、ありね」
「色々調べましょ。早くドラゴンの肉を取ってしまいたいし」
比較的良さそうな反応にスイはほっとする。
勿論、ドラゴン情報を貰うためだが、あそこは砂漠に近いのだ。
そう、素晴らしき蟻さんがいる場所である?
出会えないだろうか…………
そんな煩悩を隠して、掲示板を見る皆に加わった。
「なになに……………………発見情報、バキュームパンの新種」
「んまぁぁぁぁぁぁぁ!! パァァァァン!! 行かなくちゃ……ぐぇ!!」
「今はドラゴンだろうが」
暴れだしたクリスティーナの襟首を掴むカガリ。
喉が締りカエルの潰れたような声をだした。
「ああ……私の素敵な食材さん……そこにいるのに出会えないなんて、まるで私達は織姫と彦星ね……」
「いろいろ考えるわねぇ……」
「そこは結ばれない人魚姫と王子にしなよ」
座り込みハンカチを取り出してよよよ……と泣き真似をするクリスティーナをセラニーチェは面白そうに見ていて、スイに突っ込まれる。
やんっ!! とスイの足をつつくクリスティーナを白い目で見ていた。
「………………うーん、ここはかなり新しい敵や動物型のキャラ……かな? 発見情報かあるからどっかにいるな」
「前のフィールドではなさそうよね」
第1や第2のフィールドではなさそうだと頷くカガリたちの答えにスイは顔を上げる。
ちょこちょこと近付くと、リィンが隣に来た。
「今度は自爆なんて最後の手段じゃなく、スイさんを守ってみせますからね!!」
ハンズアップして言うリィンに笑顔を返した瞬間、ヨダレを飛び散らかすクラーティアが暴走した。
「あああぁぁぁぁ!! いい!! いいよ!! 素敵なアングル! 自分が守ると言う、か弱い男の娘!! なんて可愛い! なんて健気!! そんなリィンを守ろうと誓うスイ!! あああぁぁぁぁ!! 滾るぅぅ!!」
写真を撮り、両手を掲げ震えるクラーティアに頬を引き攣らせるグレン。
「………………あの変態はどうにかならんのか」
「あれはグレンのパートナーとも言える後方の魔法使いよ」
「あんなパートナーはごめんだ」
イズナの無情な言葉にため息をつく。
腐女子だと発覚したクラーティア、筋肉人魚は規格外で、世間知らずのファーレンに男の娘(ちょっと違う)なリィン、すでにキャラから逸脱している唯一無二となったナズナに、二重人格なデオドール、女好きなタクに、なんか色々あれなアレイスター。
スイに至っては、本人は普通…………な戦闘狂。
いや、普通と言って良いのだろうか。
大人しかったスイは、クリスティーナ加入から本性が出てきて、面白い方向に向かっている。
「………………常識人が少なすぎないか」
「これもフェアリーロードのいい所よ」
既に諦めているイズナかポン……とグレンの腕を軽く叩く。
残念な人達ばかりの集まり、それがフェアリーロードだ。
散々ダメ出しをしているが、このメンバー以外でクランを組むつもりはない。




