チェーンクエスト
人魚の涙は、まさかのクリスティーナがクリアの鍵であった。
勿論、人魚の仲間がいない場合は黄金色の人魚を探さないといけないのだが、今回については問題ない。
ただ、喜びの涙と言われてクリスティーナはかなり困惑した。
そうだろう、喜びの涙と言っても直ぐに出るものじゃないのだ。
「えー、喜びの涙ってどうするのよ。なに? スイのお胸でも揉む?」
「なんで?!」
「それはタクが喜ぶだけだからダメ」
「あら」
シュッシュッと足を動かす大魔神ナズナ様。
でれり……と鼻の下を伸ばすタクをドヨンとした目で見ると、ビクッ! と震えている。
困ったわね……と頬に手を当て困惑するクリスティーナ。
しかし、ここは流石のクランリーダー。うまい具合にクリスティーナに言ったのはクランハウスの調理場の機材1式グレードアップだった。
喜びに震えるクリスティーナは転げ回り、床にねそべったままカガリを拝むという新しい姿を披露する。
涙3滴どころか、ジャバッと出て、それどうなってるの?! とスイは悲鳴を上げたのだった。
「いらっしゃい、どのような要件ですか? あ、人魚の涙の採取がおわった?」
同じ定型文を言うルージュだが、今回はピコン! と表示が出る。
人魚の涙を所持しています。渡しますか?
それに迷わずはいを押して、クエストをクリアした。
「わぁ、新鮮な涙を3滴! とても助かったよ、ありがとう!! さぁ報酬だ、受け取って」
小さな小瓶に入っている人魚の涙を手渡すと、物凄く喜んだルージュ。
全員がいたたまれない表情でクリスティーナを見るが、彼女はいつもの笑顔である。つよい。
クエストクリア!!
その表示が現れ紙吹雪が舞う。
相変わらず面白い演出だなぁ……と見ていると、通常モードに切り替えたルージュが椅子に座って何かの作業をしていた。
ちらりと見ると、新しい採取クエストの依頼書を書いている。
それを見て、カガリは「あー……」と呟いた。
「カガリ……? どうした?」
悩むカガリに聞くのはナズナ。
今回は一瞬のみ鱗片を出しただけで静かだった大魔神様は、カガリのいつもと違う姿に首を傾げる。
「………………ナズナ、これチェーンクエストだ」
「え……面倒」
顔を歪ませてルージュを見ると、クエスト発注をしようとしている。
「なんですか? チェーンクエストって」
ちょこちょこと近づいて来て、聞き慣れない言葉を聞くと、カガリはスイを見た。
「1人の依頼人から連続で発生されるクエストの事だ。これは、途中でやめたり諦めた場合は今までの努力はパーになる。だが、報酬はとてもいい」
「受けましょう!! 」
「やるしかないわね!! 」
「…………現金なヤツらだな」
今スイ達はクランハウスの為にお金を欲している。
貰えるものはもぎ取る所存だ。
やる気に溢れているスイと、自分の厨房をはやく直したいクリスティーナの圧は強く、そのままクエストを受注する事になったのだった。
初めのクエストがクリアした為に、ルージュに話し掛けると次のクエストが直ぐに表示された。
「…………あら、苦瓜の花なら私持ってるわよ」
言われたのは苦瓜の花。
薬にも料理の材料にもなるそれは、幅広く使われていて汎用性のあるもの。
ただ、常備する物ではない。
今回は料理人としてのクリスティーナが活躍する事となり、嬉々として出した。
それからも、手持ちでクリア出来るものばかりだったのだが、まさかの蟻さんの梨味のグミを言われてスイは雷に打たれたような衝撃を覚える。
「嫌です嫌です!! 新しくリリースされたばかりですよ!! 蟻さんスペシャルじゃないですか! 飴じゃなくてグミなんですよ?! 貴重品なんですからー!!」
こっそり2個目の袋を出して1つ食べ、残りをスカートのポケットに入れていたスイはしっかりナズナに見られていた。
嫌がり駄々を捏ねるスイからクリスティーナが容赦なくグミの袋を取ってルージュに渡す。
「あああぁぁぁぁ!! 蟻さんのグミ! 酷いよクリスティーナ!!」
「何が酷いのよ!! 独り占めしてたくせに!」
くっ!! と言葉を飲み周りを見るが、今回スイに味方はいないようだ。
同じく貰えなかったリィンやファーレンはサッと視線を逸らす。
結局奪われたグミは返ってこなくて、近いうちに砂漠に行って蟻さん探しの旅に出ると決めたのだった。
「私のグミーーー………………」




