採取クエスト 人魚の涙 2
ナズナの強い要望で、スイ達はもう一度ホワイティの家に向かう事になった。
その前に1度ログアウトして、食事等の休憩タイムを挟み、リィンの吸血タイムを取ったあとと決まった。
「………………んー……ちょっと疲れた」
もそもそと起き上がりスマホを確認。
特に変わりなし、ちょっと寂しい。
軽く食事と、暑くて汗でしっとりとしているのでシャワーをした後、またすぐにログインしたのだった。
「………………あ、グレンさん」
「来たか」
「皆はまだ?」
「ああ」
久しぶりな二人だけの時間にちょっとソワソワしたスイ。
安全にログアウト出来るルージュの家の畔に座り込みステータスを見ると、空腹ゲージが減っていた。
「グレンさん、空腹ゲージ大丈夫ですか?」
「ん?……大丈夫だ」
「サンドイッチ食べてもいいですか?」
「ああ」
取り出したのは箱に入ったサンドイッチだった。
クリスティーナのお手製で、中にはボリュームたっぷりな肉がぎっしり詰まったカツサンドと、照り焼きサンド。
照り焼き! と目を輝かせたスイを小さく笑って見ていたグレンに1つ差し出す。
「やっぱり1個食べませんか? ひとりは寂しいです」
「……じゃあ、貰おうか」
差し出されたサンドイッチを受け取り2人並んで軽食タイム。
甘辛いタレがとっても美味しいと舌鼓を打つと、口の端に付いていたタレをグレンの親指で拭われた。
「ん?!」
「付いてる」
「あ……りがとう……ございます……」
「いや」
穏やかな大人の笑みのグレンにドキドキするスイ。
仕方ないかもしれない、普段はリィンやクリスティーナ、ファーレン達とわちゃわちゃしている方が多いのだから。
大人の魅力!! とはわはわしていたら、間にずいっ! と入ってきた人がいた。
「なぁぁぁんですかぁぁぁ。なんだか随分仲良しさんじゃありません?」
「わぁ! リィンさん?!」
「戻ったか」
「戻ったら駄目でしたかぁ?」
据わった目でグレンを見るリィンは、グレンのマントを握りしめてクイクイと引っ張っている。
「なにそれ、可愛いぃ!!」
ぐふっ! と倒れ込むスイに、え? と振り向くリィンは目を丸くする。
「スイさん?! 大丈夫ですか?!」
「可愛さの女神に乾杯……」
「えぇ?!」
グレンに難癖付けていたリィンはすぐさまスイの介抱にあたり、次に来たセラニーチェに呆れられクラーティアが来たあと何故か写真をバシャバシャと撮りまくられていた。
「………………よし、全員来たな……なんでゲッソリしてんだよ」
スイ含めてゲッソリしている人数名。
カガリが最後に来る前にもわちゃわちゃと騒がしかったのだが、巻き込まれ事故なグレンも珍しくぐったりとしていてクラーティアに写真を撮られていた。
「…………大丈夫か?」
「大丈夫に見えるか」
「………………いや」
「めっずらしーなぁ!!」
グレンの姿をニヤニヤして見ているタク、普段は自分がなりそうな姿を珍しいグレンがなっているからか楽しそうにしている。
そんなタクを仄暗い笑みで見ているナズナが足を何度もブンブンとしていた。素振りである。
「ナズナちゃん、タクは何もしてないわよ」
「…………わかってる」
うふふ、と笑いながら止めるデオドールに渋々頷きイズナがため息を吐いていた。
「人魚の涙?」
「はい、どこで手に入りますか?」
「ああ、何かのクエストなのね」
にこっと笑って話を聞いてくれるのは、さっきもお世話になったホワイティである。
詳しい話を伝えると、ふんふん……と頷くホワイティをみんながじっと見ていた。
「…………なるほどねぇ。黄金色の涙……それ、わざわざ聞く必要ないんじゃないかしら」
「え?」
「だって、いるじゃない? 黄金色の人魚なら」
そう言って指を差されたのは目をまん丸くしているクリスティーナである。
え……あたし? と呟くと、クリスティーナ以上にみんなが目を見開く。
「えぇ?! 黄金色って化け物人魚のことなのか?!」
「誰が化け物よ! 誰が!!」
「いってぇぇぇぇぇ!!!」
思わずペロリと口から出たファーレンの失言にクリスティーナの鉄拳が落ちる。
「失礼しちゃうわ!!」
「それにしても灯台もと暗しとはこの事ね」
「うまい具合に流したな」
話を纏めようと言ったセラニーチェに言うカガリはから笑いをする。
採取アイテムがクリスティーナの涙で良いのだろうか。
ホワイティがいいと言うんだ、良いんだろう……と、自分を納得させてからクリスティーナの涙の採取を行ったのだった。




