畔の魔女の採取クエスト 3
瀕死の状態だった為、スイにセクハラ判定のブザーが鳴ったのは時間差だった。
これは誤作動なのかわからないが、直ぐに消しグレンに土下座した過程があったのだが、閑話休題。
「………………うーん、なるほど自力でたどり着かないと海に落ちて無力化するのか」
タクが新しく手に入れたスキル、鑑定を使って湖を見てみた。
新しいスキルを使いたくてウズウズしていた為、我先にと使った結果、自力での移動が必要とわかる。
腕を組み迷う様子を見せるタクの横でファーレンが何故か熊の盾を湖に浸していた。
デロンと伸びる熊を複雑な表情で見ていたファーレンは、ザブリと熊をあげる。
「なにしてんだ?」
「いえ、不思議熊なので湖に沈めたら船になったりしないかなっておもったんですけど……なんかお風呂に入ってるみたいないい顔されただけでした」
「……まるで温泉に来てるみたいだな」
「はい……」
「しかたない、1回街に戻って湖を渡るのに何かアイテムがないか探すか」
「賛成」
グレンの提案に全員がうなずき、もう一度第3の街に戻る事になった。
「…………そういえば、第4の街の情報が出回りはじめたのよね」
「え? 公式からそんな話あった?」
前を歩く女性陣のセラニーチェから出てきた第4の街の話に全員が耳を傾ける。
「ううん、出てない」
「じゃあどこから?」
「うーん、噂で広まってきたんだけどね、街がなんか変わった形をしてるとか、今までにないイベントがあるとか……フワッとした内容しか分からないんだけど」
「運営から出てないなら信憑性低いな」
「だな」
グレンとカガリが情報出るまで待とうぜ、と言いそれもそうね、とセラニーチェも答えた。
「……私、その噂であの鬼ごっこの時に現れた男性が第4の街にいるって聞きましたよ」
「リィンさんそれ本当ですか?」
「これも噂なんです」
「…………変な噂が広まってる」
ナズナも聞いたことがあるのか頷いていた。
スイは、あの時の男性を思い出す。
どんなに頑張っても倒せなかった鬼を一撃で倒したあの衝撃は凄まじかったのだ。
「誰なんでしょうね」
「さぁなぁ」
「ここになんか売ってるかぁ?」
タクがある一軒の家を見る。
広い一軒家で、街の中にいる住人に湖を渡るための船が欲しいことを伝えたら、みんな声を揃えて此処を指定した。
見た目は普通の庭付き一戸建てである。
「行ってみましょ」
「ほらタク、早く」
「ナズナちゃん、待って、押さないで」
扉に頬が押し当たるくらいに背中をグイグイと押すナズナに手をバタバタとさせて抗議するタク。
後ろからイズナがナズナの襟首を掴んで引き摺るように離していた。
「おぉ……いたい……」
「タクさん、頬に跡ついてる」
「次ナズナの被害はファーレン頼むぅぅぅ」
「あ、無理です……」
「うぉぉぉ……スイちゃぁぁぁん……」
「スイならもうカガリさんが声掛けて玄関開けてるから、そっちに行ってますよ」
「え!? はやっ!!」
後ろでワチャワチャとしているタク達やナズナ達はそのままに、カガリが玄関をあけて声を掛ける。
普通に生活している一軒家のようで、あってるのか? と首を傾げた。
「………………はぃはぃ、どちらさま?」
「あ、すいませんお聞きしたい事が……」
「はぁい、じゃあ中に入ってちょうだい」
「あ、はい…………」
現れたのは白髪混じりの黒髪を緩く右側で1本に結びビシッとスーツを着た50歳くらいの男性だった。
妙に艶めかしく微笑み中に促されて、カガリは少し狼狽えている。
「ほらぁ、入りましょ」
「あ、あぁ」
いつも頼りになるアレイスターがカガリの背中を優しく押して中に入るよう伝えると、カガリを先頭に全員がゾロゾロと入っていった。
「さぁ、どうぞ。皆さんかけて」
「し、失礼します」
綺麗に片付けられた室内の真ん中にあるテーブルに椅子。
そこに座るように言われ、スイ達は黙って座った。
ワゴンに乗せられた紅茶にシフォンケーキを運んできたメイドがうやうやしくテーブルに置いていく。
「どうぞ、粗茶ですが」
「………………あ、はい」
粗茶と出された紅茶は見るからに高級感ただよっている。
そして、壁にインテリアとして掛けられているのは明らかに玄人さんが使いそうな物で、スイ達は頑なにそちらを見ようとはしなかった。
そう、ムチやロウソク、ボンテージなど見ていないのだ、決して。




