畔の魔女の採取クエスト
「…………これ、随分金額高いな」
カガリが手に取ったのは採取のクエストだった。
期限は3日以内、人魚の涙を取ってくるという内容でピッと手に取った紙を横からスイも身を乗り出して見てみた。
少し傾けて見せてくれるカガリに軽く頭を下げると、紙に影が出来た。
振り向くと、後ろにはグレンが居て紙を見て、カガリの逆隣にはタクとファーレンが来る。
前にはクエストボードがあり、完全に自分より背の高い男性に囲まれている。
ハッ! と周りを見渡すスイにグレンが真下を見る。
「どうした?」
「どうしたじゃないでしょ。スイを図体のデカイ男共が囲ったらそりゃびっくりするじゃない」
腰に手を当ててセラニーチェが言うと、すぐ横にいたリィンが何度も頷いている。
「だめですよ! スイさんびっくりしちゃってます!!」
ぷりぷりするリィンにタクがごめんなさぁい! 女神様! と謝るが、すぐに顔色を変える。
シュッシュッと音を鳴らして予備動作をしている撲殺天使がいるからだ。
「……とりあえず、これ聞くか」
ピラピラと紙を振るカガリに全員がうなずいた。
採取クエスト、その報奨金は討伐クエストと同じ位の報酬だったのだ。
「すんません、これ聞きたいんですけど」
奥のカウンターに紙をもって行ったカガリが受付の女性に聞く。
顔を上げたボブまでの青い髪を耳に掛けて笑った受付の方はどうぞ、と椅子に促す。
「どういったご要件でしょうか」
「このクエストについて聞きたい」
「はい……………………」
渡された紙を見た受付嬢は確認した後微笑んでカガリを見た。
「こちらは採取クエストとなっております。期限は3日以内で人魚の涙です。…………依頼人は畔の魔女と呼ばれるルージュさんからですね。詳しくはご本人から説明を聞いてください。」
「畔の魔女……」
「はい。場所はわかりますか?」
「いや……」
「では、お受けいただく場合は地図上に表示いたします。いかが致しましょうか」
カガリが振り向き全員を見ると笑顔で頷いている。
「……じゃあ、受けます」
「かしこまりました。では…………」
説明されたのは、クエスト受注は現在仮申請状態であること。
畔の魔女に詳しく聞いた後、クエストを受けるか魔女と相談をして決めるということらしい。
「変わったクエストねぇ」
「これもまた楽しそうでいいですね」
仮申請でも表示されるステータス画面の情報を眺めているカガリの後ろで、アレイスターとファーレンが話をしている。
ニコニコしているファーレンの手には相変わらず熊の盾があって、今は静かにファーレンに移動させてもらっている。
スイは相変わらず人魚のハープを持っていて、人魚の涙か……とハープを眺めていた。
「…………ここだな」
ホワイトライスケーキの東に向かうと小さな森が出てくる。
ここは戦闘禁止エリアとなっていて敵モンスターもいない。
静かな森の中には非戦闘のモンスター達がのんびりと暮らしていた。
「…………凄いファンタジー感です」
「うん、なんか神様がいる森っぽい。見たことないけど」
リィンが周りを見ながら言い、イズナが肯定する。
全てがキラキラとしているようで街の中心にある森林公園とはまた違った神秘的な雰囲気が満載だった。
「…………そんなに広くはないみたいよ。ほら、家がある」
湖畔があり、その奥に小さな一軒家がある。
少しボロくセキュリティなど一切無さそうな家だ。
「この湖を渡らないと駄目みたいですね」
奥の家に行くには何とかして湖畔を渡らなくてはいけないのだが、橋などはなく渡る方法を探さなくてはならない。
「船……もないわね」
セラニーチェは渡れそうなものは無いかと周りを見渡したが、綺麗な森しかない。
「………………うーん、船を作れ的な感じか?」
「木を切ってもいいんでしょうか」
リィンがぺちぺちと木の幹に触れて聞くと、ナズナが羽根を広げて飛び上がった。
「飛ぶ?」
「あ、飛ぶか!」
忘れていた! と手を叩くタクに飛べない仲間たちは、あー! と頷いた。
クリスティーナは貝殻があるから大丈夫なのだろう。
「飛ぶなら先に様子を見に行って来ましょうか?」
スイも軽く浮き上がり湖の方へ行きカガリを見ると、悩んでいる様子のカガリが頷いた。
「頼む、無理はするなよ」
「了解です!」
笑って敬礼をしたスイが湖に飛び立った。
「…………………………………………ぎゃん!!」
「わーーー!!」
「スイーーー!?」
「スイさぁぁぁぁん!!」
バッシャァァァァァァァン!!!
「………………………………」
「……………………大丈夫か?」
「ごめんなさい、グレンさん……」




