ギルドハウスと犯人の発見 2
「あーーーー!!!」
セラニーチェが指を指し叫ぶと、全員セラニーチェとその人を交互に見た。
3人組の男性プレイヤーで、それぞれ黒髪に黄色い目をしていた。
兄弟だろうか、良く似ている顔付きをしている。
全員短髪なのだが、それぞれ強化付与の付けられたアクセサリーを髪に着けているので見分けは出来そうだ。
「こいつらよ! あの窓が開いてる部屋に泊まった人! 私受付したから覚えてるもの!!」
それにクリスティーナがギロン! と目線を向けて際どい表情をしていた。
「あーなーたーたーちーなーのー!? あたしのオアシスを水浸しにした人は!!!」
ぎゃおん!! と叫ぶと3人は慌てて土下座をして床に額を擦り付けた。
「すいませんでした!! 何が起きてるのかと気になって開けました! 俺が悪かったです!!」
「うっ…………素直に謝られたらそれ以上怒れないじゃないの……」
ぐっ……と体を引くクリスティーナは1番近くに居たグレンに、もーやーだー! と腕をパシパシ叩いている。
「あの……クランハウスどうですか……」
「全滅よ」
「「「ぎゃぁぁぁぁああああ」」」
3人は打ちひしがれ床にゴロンゴロンと転がっている。
後悔は物凄くあるようだ。
そんな3人をスイ達は見てから顔を見合せる。
見付けたら文句のひとつでも言ってやろうと思っていたのに、張本人はしでかした大きさに打ちのめされていて、後悔しているのがありありとわかる。
どうするべきか……と悩んでいたら、3人はピタリと動きを止めてスイたちをみた。
「弁償します!! させてください!!」
「「「「いやいや、むりだろ」」」」
「金額途方もないですよぉ?」
クラーティアが追い打ちを掛けると3人はがくりと頭を垂らした。
「…………ど、どうすれば……」
「この雨黙りの日の保証とかないんですかね……」
「それだ!!」
スイがポツリと呟いた言葉にハッ! としたカガリがステータスをひらいた。
そして、クランハウスについての項目を見ると一気に打ちひしがれる。
「え、カガリ……?」
「どうした?」
「……やらかした……悪いみんな……」
そう言って指さしたのはクランハウスを購入する時に契約する各種保険についてだった。
災害などによる家の破損についての保険にカガリは入っていなかった。
「ゲーム内で保険とかいるのか? 金掛かるし後にと思って入ってなかった……ここの運営が保険用意しといて何も無い訳ないよな…………はは」
「……………………ああ」
哀愁漂うカガリにグレンが肩を叩く。
もう、過ぎ去ったことは仕方ないのだ。
「…………早急に保険にも入りましょうね」
「…………おぅ」
「せめて! せめて保険代だけでも負担させて下さいぃぃぃ!!」
こうして犯人に保険代を請求することになった。
1年ごとに更新する代金も払うと言っていたが、それなりの大きさのクランハウスの更新料は高い。
3人で賄うなどゲーム中常に更新の為のお金を稼ぐようなものだ。
そんなの面白くないだろう。
「それはいい、更新はこっちでやるもんだ。それに保険に入ってなかった俺の落ち度だしな」
「………………本当にすみませんでした」
「まぁ、初めてのイベントだから気になる気持ちもわかるしな」
「なずなスペシャル3連続で許してあげる」
「「「「わ………………わぁ………………」」」」
それから連帯責任の3人はナズナに打ち上げられ白目を剥いてピクピクしていた。
1階から打ち上げられた3人は吹き抜けを通り抜け天井に激突して落ちてくる。
「これを見る度に悪いことしちゃダメだって思うんだ……」
「ファーレン……」
ブルリと1回震えたファーレンをスイが眉を下げて見ていた。
「じゃあ、どうする?」
「とりあえず家具を買うお金優先にしない? 流石に床に座ると冷えちゃうわ」
「ベッドも先に欲しいです。ログアウトするのに必要な物ですし」
「もふさんたちのお家も修理したいです……」
「それは後回しな、スイ」
「……………………はい」
2階に上がり壁一面にあるクエストの紙を眺める。今までにあったクエストよりも明らかに量が多く選び放題だ。
また、スイ達だけでなく集団でクエストを見ている人達もかなり居て、同じくクランハウスが全滅しているのだろう。
項垂れて居る人やから笑いをしている人など様々だ。
「どうするかな、なにするかなぁ」
「せっかく皆いるから大きなクエストもいいですね」
「あらリィン、珍しく積極的ね」
「また1からなんですけど、皆で遊べるのでワクワクしてしまいます!」
キャッキャと笑って言うリィンが可愛い。
そう思って見ているが、この人は成人している働く大人の男性なんだよな……と考えをあらため……………………られない。
「くっ……………………」
「今度は何と葛藤してるのよ、あんたは」
「世の中の不条理と戦って惨敗したのよ」
「惨敗したの? もぅほら、クリスティーナちゃんのステキなぼでぃ! を見て元気だして!」
「余計に瀕死だわ」
「なんでよ!!」




