ギルドハウスと犯人の発見
1番新しい第3の街、ホワイトライスケーキへ来たスイたち。
あまり街の中をゆっくり見ていなかったから、この際ゆっくり街の中も見てみようとなった。
今インしているメンバーで散策を決めたスイ達は、あっちにフラフラこっちにフラフラとしている。
「……グラタンが食べたい」
「あら、急だねぇ」
「あれ見て、美味しそうなホタテ……海産のグラタンがいいなぁ」
「ホタテが売ってるって事はどこか漁が出来る場所があるのかしら……あのイカぷりっぷりよ!」
「イカ刺し食べたい!」
「やだ! お酒が欲しくなっちゃう!」
「日本酒がいいな……」
「熱燗よね……」
2人でボソボソと身を寄せあって話す様子にリィンは羨ましそうに見つめている。
そんなリィンの隣にすすす……と現れたクラーティアはニヤニヤと意地悪く笑っていた。
「あらあらあらぁ? リィンちゃんは嫉妬ですかぁ? 相手は女の子ですよぉ? ムキムキしてるけど女子力高い女の子ですよぉ?」
「わかってます! 嫉妬、なんてしてません!」
「ほーんとぉ?」
そんなニヤニヤクラーティアに肘でつつかれているリィンの少し後ろには自分のブーツを見つめるナズナがいた。
片割れのイズナは授業の調べ物でまだ学校に残っているらしく先にゲームしてる、とイズナを残して1人で帰ってきていた。
ワクワクとゲームを始めたナズナは久しぶりに皆とゲームが出来ると嬉しそうにしていたが、ボロボロになってきたブーツを見て新調しようかかなり悩んでいた。
金策、でもブーツ買うくらいは……と思考の渦に飲まれているナズナをタクは両手を合わせて祈っていた。
「……これ以上の凶器は止めてください、これ以上の凶器は……」
小さく祈るタクを哀れみの眼差しで見つめるカガリとグレンに困惑して見るファーレン。
夢に見るんだぁ……とブツブツ言うタクだったが、ナズナの意思が固まったらきっとタクの願いも儚い夢になるのだろう。
今インしているのはこのメンバーだけで、今日は良いクエストがあったらガンガンやろうぜ! となった。
「どんなクエストがあるかなー、討伐クエストでガンガンするのもいいし、採取もたまにはいいよね」
「採取かぁ、あんまりお金にならないんだけど良い食材とかはガッポガッポなのよね」
「……あんたガッポガッポって……」
「幻の食材とかだったら私クエスト達成できるきしないよ!?」
「いや、そこはちゃんと納品しようよ!」
「…………スイさんが敬語で話してないです……いいなぁ」
わちゃわちゃと話す2人にリィンは羨望の眼差しを向けた。
「あ? クエストボードどこだ?」
今までと同じように森林公園の一角にあるはずのクエスト受注場所に来たのだが、なぜか綺麗な公園があるだけでプレイヤーの集まっている場所は買い食いできるエリア以外になかった。
カガリは不思議そうに周りを見渡しているが、目的地は見つけられず。
「俺はあんまり第3の街は見てなかったんだが、どんなのがあるんだ?」
グレンが周りを見ながら聞くと、スイとクリスティーナ、リィンとファーレンが振り返り同時に口を開いた。
「砂漠と蟻さん」
「素敵な蟻さん」
「飴くれますよ! スペシャルなのはなし味です!」
「他種族の村とかもあります!」
4人中3人の解答が蟻さん関連なのが気になる所ではあるが、今まで無い集落があるのか……と小さく呟いた。
街中は見ていたが、端から端までフィールドを散策していた訳では無いから知らない情報に楽しそうに口端を持ち上げた。
「蟻さんに会えないかなぁ」
「蟻って鬼ごっこの時のだよな?」
「ですです!」
ワクワクと両手を握りしめて言ったリィンの女子力にスイはクラリときつつも、同意の頷きを返した。
「……クエストボードどこ」
「あーっと、そうだった。場所聞くか」
「………………ここはイケナイ、イケナイ」
「頼むナズナ、このクエストはやめよう、な?」
「ナズナ、これはどうだ?」
ホワイトライスケーキのクエストボードは、別に併設されているギルドルームという場所にあった。
森林公園を出て街の中心部に向かって徒歩15分ほどにある花が咲き乱れる花壇がある小さな家屋がある。
色とりどりの背の低い花が行儀よく並んで咲いていて、家屋の両端には背の高い木が植えてある。
綺麗な階段状に植えられ小さな家屋が立派な装いになっている。
家屋の入口には、花壇で植えられているのと同じ花でリースが作られていて、その中心部に木でできた長方形の表札が横に掛けられている。
達筆な字で書かれたギルドルームと言う言葉を見つめた後、扉をゆっくりと開けた。
「……わぁ、広い」
あの小さな平屋の家屋とは程遠い空間が広がっているこのギルドルーム。
入ったその中央には階段があり2階にカウンターがありそうだ。
一階にはギルドが対応している武器屋、防具屋、アイテム屋が併設されていた。
ちらりと横目で見ると、人魚なブローチがありクリスティーナをチョンチョンとつつき指差すと、クリスティーナの目がハートになった。
「やぁぁん! 私がモデルかしら! みて、この曲線!!」
「いや、曲線の似具合はわからんけども?」
「まってぇー、これかいたぁーい!」
ハァハァハァハァと息を吐くクリスティーナに全員ドン引きしながら頷き少し待っていると、後ろから来たプレイヤーが、あっ! と声を上げ全員が後ろを見た。




