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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
233/268

クランハウスのある日の掃除 3

「…………えー、めんど!!」


 タクが聞いてきた内容を聞きイズナが嫌そうな顔をし、ナズナは足をダンダンと打ち付けた。

 タクの説明の途中でログインしてきたファーレンはまだ困惑している。

 カガリと同じように雨黙りの日をログイン出来なかったファーレンは、ログインした瞬間ベチャベチャのベッドにゾワゾワと不快感を露わにして、繊細な少年は悲鳴を上げた。

 カガリが慌てて部屋に駆け込むと、ワナワナと小刻み震えている哀れな少年に哀愁の眼差しを向けるのだった。


「……じゃあ、クリーンじゃ直らないんですね」


「……やっかいよねぇ」


 はぁ、と息を吐き出すセラニーチェ。

 どうやらこの雨黙りの日はかなり厄介なようだ。

 基本的な掃除はクリーンで済ませることが出来るこのゲーム内でも、それに該当しないのも少なからずある。

 温泉で体を清め綺麗にする事もしかり。

 今回の雨黙りの日に降る雨もそれに含まれるらしい。


 外にあたるフィールドは元々水に沈む設定である事とお米への祝福の為、翌日には全て水が引き祝福が必要なもの以外は全て元に戻る。

 外に干している洗濯物や、干し野菜などは祝福を受けてキラキラと輝きしっとりと濡れている。

 洗濯物はまるで新品のようになり、ふくよかな海の香りを残し肌触りの良い状態になっていたりする。

 干し野菜は味が凝縮されて深みのある味わいになっていた。

 そしてメインのお米はキラキラと輝く稲穂が元気に風に揺れ、収穫量がアップ。

 味も良く品種によっては甘さが強くなっている。


 そして残念な事に、外に出ている人や水が侵入した家屋は祝福は必要ないんだな、と雨黙りの魔物が判断を下しせっかく来てやったのに! と逆ギレして祝福を取り上げるらしい。

 なので、濡れた全ての物はクリーンで掃除は出来ない。

 全部手作業で片付ければぁ? はっはーん! ざまぁwwww という感じに雨黙りの魔物はクリーンを弾くようにして翌日居なくなるようだ。


「……まって、まってよ……じゃあキッチンはどうなるの? 冷蔵庫とかオーブンとか……まさか、買い替え……?」


「「「「……………………」」」」


 クリスティーナの悲壮な声に全員が顔を背ける。

 普通は水に濡れた家電製品はお陀仏だろう。

 このゲーム内ではどうなんだろうか。

 先程カガリが冷蔵庫を開けた時は食材はダメになっていて、冷蔵庫は完全に壊れていたように思うのだが。


「……とりあえず、VIPルームのプレイヤーはしめあげましょうねー」


 うふふ、と頬に手を当てハンマーを握りしめるデオドールを誰も止めようとはしない。

 あの部屋だけなのだ。鍵が開いていたのはあの部屋だけ。

 確実に見回りもして1部屋1部屋いるプレイヤーに必ず施錠してと声を掛けたと話しているから、グレン達と同じように死に戻りしただろうプレイヤーが一番悪いだろう。

 これだけの被害をおこしたプレイヤーをこのままにはしておけない。


 この雨黙りの日の屋内に水が入るのは災害に位置しているのか、このクランハウスを守護しているはずのアイテムは何ら反応はないのだが、このまま全ての被害をフェアリーロードが被るのも納得いかない。


「お説教、する」

 

「今回は私も手伝うわ」


 イズナとナズナの双子もかなり怒髪天を衝いているのだろう。

 イズナのいつもと違う様子に、リィンとファーレンは2人で手を取り合ってカタカタと震えていた。



「……家具は勿論、テーブルとかも整備しないとだめだな。このまま天日干ししていいのかとかわからないし、誰か専門家に聞かないと」


「各部屋のシーツやカーテンなんかも全部洗濯ですかー、クリーン効かないし洗濯機も壊れて居ますし……あ、これ詰んだやつですー」


 ハハッと笑ったクラーティアは部屋数を考えていたが、途中から考えるのをやめた。


「……手分けしてやるか」


「「はぁぁぁ」」


 カガリは頭をカリカリとかきながら言い、返事の代わりにため息を漏らした仲間達に「……俺も戦意喪失してぇ」とつぶやいた。






 どうするか、この惨状とクランハウスを見ていた仲間達は項垂れながらも家具やキッチン周辺を扱うお店に手分けして聞き込みに行き、シーツやカーテン等を洗い室内を片付ける様にと人員を割り振りして動き出した。

 スイはデオドールと一緒に室内の状況を確認しながらシーツやカーテン、テーブルクロスといった布類を集め、中庭でタライを購入してきたタクに手渡していく。

 洗濯メンバーにはクラーティアとグレンの魔法コンビ。

 意外なことに手先が器用なグレンはリアルでも家事が嫌いでは無いらしく快く大量の洗濯を引き受けてくれた。


「お願いします」


「はぁい、スイちゃんまかせてー!」


 タクが張り切って両手に持てないくらいのシーツ類を抱えてタライの前でスタンバイしている2人の元に走っていく。


「……これ、何往復するんでしょうかね」


「凄い量よねぇ、困っちゃうわぁ」


 全然困った様子も無くうふふと笑うデオドールにスイは乾いた笑みを返した。

 実は2人きりで何かをするのが初めてなデオドールにどうしよう、何話そう……とスイは困惑しながらも先を歩くデオドールの後をついて行った。


 

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