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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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雨黙りの日 2


 雨黙りの日

 それは、第3の街であるホワイトライスケーキで育つお米を発見した事により新しく発生した定期的に起きるイベントで、2ヶ月に1回起きる祝福なのだという。

 場所はホワイトライスケーキだけでなく全町フィールドで始まるイベントの為、現在スイがいる第2の街にも警報が響き渡っていた。

 

 2ヶ月に1回なのでプレイヤーにとっては初めてだが、街にいる人達は、あー、今日だったか、と空模様を確認して建物を施錠するらしい。

 モクモクと連なった雲が分厚く集まりだし、その流れがいつもよりもだいぶ早い。

 厚い雲に覆われ暖かな日差しは遮られ少し肌寒く感じるのが雨黙りの日の特徴のようだ。


 この祝福とは、ホワイトライスケーキでしか栽培されていない米の出来を良くするために降る雨で、最初は少しの豪雨だったらしい。

 しかし、年々雨足が強くなり、何故か街全体を水没させるまでの雨が1日やまなくなったそうだ。

 この変化に驚き、街の人達は最初驚きと恐怖に口を閉ざしたと言う。

 そのため、この日は人々が黙ってしまう日、そして雨が街に溜まる日として雨黙りの日と呼ばれるようになった。


 建物の全てに施錠をかけることで、何故か完璧な結界のような役割を果たすらしいが、1箇所でも閉め忘れたら一気に水が押し寄せてくる。

 そのため、警報がなったら必ず施錠確認が義務付けられている。


 決して街中に残ってはいけない日。

 水が押し寄せて死んでしまう事もそうだが、この雨がやまないうちは雨黙りの魔物のテリトリーとなり、食い尽くされる。

 そう、言われている。




「リィンさぁん! アレイスターさぁん! どこですかー!?」


 あのパン屋の店員に無理を言って2階の窓を開けてもらったスイは、そこから飛び降りて街中に戻った。

 ザアザアと降り続ける雨にうたれながら、取り残されたという2人を探しに走る。

 既に踝まできている水をかき分けてよく行く表通りの道を走り続けていた。


 しかし、なかなか2人の姿は見えない。


『……まぁ、いいけど。とりあえず雨黙りの魔物に出くわさないように。出くわしたら即にげる。何を置いても即にげる。あと、入れなかった人向けにシェルターがいろんなところにあるから、見つけたらすぐに入って鍵閉める。あんまり時間ねーかんな。あんたの、そうだな腰くらいまでが限度。それ以上になったらシェルターも開かなくなるからな。あと、この日は街がなんか出入り出来んくなるから、街の外には出れねぇ。忘れんなよ』


 面倒そうにしていた割に、あの店員はかなり細かい内容を教えてくれた。

 それは本当に助かることで、気を付ける事やシェルター等の有益な情報はいくらでも欲しいものだ。


「リィンさーん!」


 あの可愛らしいリィンが、水の勢いに負けて流されてしまったら。

 あの綺麗で優しいアレイスターがリィンをかばいながら水の中に取り残されてしまったら。


 ひっ! と声を上げてスイは足を早めた。


「まってて! 今助けに行くからね! 2人とも!!」


 言い方は悪いが、これがクリスティーナならスイは安心して放置するだろう。

 あのクリスティーナが水如きにやられるとは思えない。

 たとえ濁流であっても、化け物人魚は


『やぁん! 凄い雨! 水も滴るいい女!! どうしよう、また魅力が倍増しちゃうわ!』


 とかなんとか言って尾で水をビシャビシャと叩くか、貝殻に入って優雅にクッションに凭れてポージングをするくらいはしそうだ。


「くっ! 凄い雨…………あ!」


 少し遠くで寄り添い周りを見渡すリィンとアレイスターを見つけた。


 身長の高いアレイスターにしがみついてなんとか体を支えるリィンの乙女具合にクラリときながらも、珍しく下ろしている髪を手で撫で付け耳にかけたアレイスターを見る。


「……あら、スイちゃん?」


「え!? スイさぁん!」


「……しまった。アレイスターさんもどちらかと言えば乙女寄りだ」


 何故だろう、性別多分男性達の方が断然乙女なのだ。

 なんとも言えない女子力の塊たちに、私が守らねばと、何故か漢らしく手に力を入れて握った。




「よかった、見つけられて」


「まさか、わざわざ探しに来てくれたんですか?」


「えぇ、そうなの!? スイちゃんゴメンなさいね」


 リィンの手を引いて歩き出したスイはにっこり笑って二人を見た。


「グレンさんに2人が居ないと聞いて慌てて探しに来てしまいました」


「……嬉しいです。どうしよう、ね。アレイスターさん」

 

 ふふっと笑ってあいている手でちまっとアレイスターの袖を掴むリィン。

 なにこの女子。かわいい






「雨黙りの日、不思議な日があるのねぇ」


 頬に手を当てて言うアレイスターに頷き、片っ端から建物を開けようとしているが、全て施錠されている。

 既に膝まで水が来ていて早く建物を探さなくてはと、3人はまったり話しているようで焦っていた。


「どうやら美味しいお米が出来る為の祝福……? とやららしいですよ」


「祝福ですか。よくゲームなんかである設定ですと、祝福を受けることで良い事があったり、ステータスが上がったりとか、とにかくいいものなんですよね…………でも、ホワイトライスケーキだけじゃないのですね」


「クリスティーナちゃんがとっても喜びそうよねぇ、お・こ・め! ね?」


「美味しいおにぎりが食べたいですね! 帰ったらクリスティーナに作ってもらいましょう」


 相変わらず食べ物への執着が強いスイに、アレイスターはあらあらうふふ、と笑った。


「……それにしても建物ありませんね」


「見たらわかると言われたのですが」


 困惑しているスイ達はシェルターを見つける前に別のものを見つけたのだった。



 




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] リアル男性なのに乙女な仕草をするリィンさんww
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