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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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閑話・ベータ版

anotherfantasia


まだ正式に発売される前のベータテスターに当たったある青年の話。

期待値が高いそのゲームに当たった青年は、大学が終わり次第足早に帰宅した。

始めたばかりの一人暮らしの自宅はまだ生活感が余りなく散らかった様子もない。

元々几帳面なのだろう。

カバンを定位置に置いた青年は、メガネを外してギアを被る。

ベッドに横になり小さく口を開いた。















《anotherfantasiaのベータテスターにようこそ。あなたの意見でより良い世界の構築をめざします。まずはこの大地で冒険を行ってください》



ゲームの世界に入る前の準備段階なんだろう、青年は真っ暗な空間の中を佇んでいた。

そこに唐突に響く機会音声。

そして表示された職種のうち1つを選ぶように指示された文章が暗闇の中に浮かび上がった。



「………盾職だな」



選んだのはタンク。

前衛で敵の注意を引き付け攻撃をスムーズにする職。

元からゲームをする時にタンクを選ぶことが多いので、選ぶのも迷いはなかった。



「名前、カガリ……と」



外見の選択がたくさん現れ自分好みの姿を選び、入力が終了した。その瞬間足元から光が溢れ出す。

システム的な事だろうが驚く時は驚くものだ。



「すげぇ」



広々とした公園は細部にまで作り込まれていた。

カガリは地面を数回踏みしめ現実との違いを確認するが違和感はない。

周りを見ると同じベータテスターがカガリと同じような動作をしていた。



「今までのゲームと全然違うな」



そう言ってまずはステータス画面を見た。

基本的なステータスやスキル、ログアウトの場所など確認した後カガリは歩き出した。



「っと、すいません」


「いいえ、大丈夫よ」



キョロキョロ周りを見ながら歩いていた為、角から曲がってくる人に気付けなくぶつかった。

その人はふくよかな女性で、すね辺りまでのワンピースに、真っ白なエプロンを付けていた。

腕にはパンが入った紙袋、林檎が3つほど地面に落ちていた。

それを拾い謝りながら渡すと、女性はにこやかに笑った。



「(NPC……だよな? すげぇ違和感ない)」


「ごめんなさいね、これ運ぶの手伝ってくれないかしら?」



《イベント、荷物運びのお手伝いが発生しました》



参加しますか? はい、いいえ



急に始まったイベントにカガリは目を見開くが、すぐに笑ってはいを押した。



「助かるわぁ、じゃあこれお願いね」



そう言ってどこからともなく現れた巨大な袋。

中は何が入っているのか見えないが、とにかく重い。

受け取ったカガリはその重さにグッ……と小さく声を上げたがなんとかそれを女性の家に運んだのだった。





「わざわざありがとうねぇ」


「い、いや……」



徒歩15分程の道のりを重い荷物を持ち続けたカガリは引きつった笑みを浮かべながら答えた。

女性の家に着いた瞬間にクエストクリアの文字が浮かび、それを見たカガリはホッと息を吐く。



「疲れたろ? コーヒーでも飲んできな」



グイグイと家の中に押し込まれ、あれよあれよとテーブルまで連れてこられた。

確かに疲れたな、と感じたカガリはありがたく椅子に座る。

何より、クエスト報酬がノーマのコーヒーと書かれていたのだ。



「ほら、これ」



差し出されたのはコーヒーにミルクポットと砂糖。

そして小さなパン2つだった。



「ありがとう」



頭を下げてからコーヒーにミルクと砂糖を入れて口をつける。



「うま……」


「そうかい、よかったよ」



女性、ノーマも座りコーヒーを飲むカガリ。

ホンワカしながら話をするカガリは思わず時間も忘れていた。

時間を見て追加で出された食事も美味しく思わず食べていたカガリは、すでに予定していたログアウトの時間に差し掛かっていた。




「……記念すべき1日、NPCとの会話で終了」




ギアを外した青年はクスリと笑って伸びをした。



「楽しかったな、また明日よろしく」



コツン……とギアを指先で突いてから部屋を出ていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] VR系統の作品を読んでて何時も思いますが、此処までの精巧さ、軍が興味持たない訳が無いと思うんですよねー 何らかの方法で回避してるんですかね? まぁそれはそれとして 今でこそ第一線級…
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