第2回公式イベント 鬼ごっこ12
クリスティーナサイド
死に戻りしたクリスティーナは、噴水広場に戻った頃にはフォレストウルフも居なくなっていた為その恐怖を知らずカタカタと震えるゲームオーバーのプレイヤーを見て首をかしげた。
同じく死に戻りした他のプレイヤーや、
次々に現れる仲間たちと一緒に復活のカウントダウンを待っている時にゲームマスターが現れよくわからない状態で別の空間に移動となった。
眩しい光に目を細めて、次に目を開けた場所に仲間たちは居ない。
知らないプレイヤーがキョロキョロと周りを見渡していた。
どうやら場所はランダムのようだ。
「……ここは?」
だだっ広い場所に巨大なモニターには参加者のプレイヤーが映っていて、その中にはナズナと踏まれているタクが居て思わず苦笑した。
既にそこかしこで戦闘が繰り広げられているらしい。
ドゴンドゴンと盛大に土煙をあげている場所が沢山ある。
それは、クリスティーナの少し離れた場所でも。
「…………信じられない」
クリスティーナはある鬼をじっと見つめていた。
知らないプレイヤーに囲まれて立つクリスティーナは、前で吸い込まれていくプレイヤーと、吸い尽くす鬼を見ている。
ワナワナと身体を震わせ目線を逸らすことなくそれを見た。
震える手で武器を握り締めたクリスティーナは貝殻から上半身を乗り出して舌なめずりする。
鬼の恐怖とクリスティーナの恐怖に震え上がるプレイヤー達の顔色が紙のように白い。
「待っててよぉー……私の食材、今は私が鬼なんだからぁぁぁぁぁ!!!」
ゾクリとする感覚に鬼は身体を震わせた。
そして強い視線を感じる方へと顔……を向けるとヨダレを垂らしながら貝殻に入って襲いかかってきたバケモノ人魚に戦慄した。
「!?!?!?」
「みぃーつけたぁぁぁぁぁ」
ニタァァァァァと笑って言ったクリスティーナは不気味以外の表現はない。
真っ白なその鬼は自分よりも弱いはずの人魚に慄いた。
食べられるイメージが一気に湧いて後ずさる。
「あぁん、ダメよー逃げたらぁぁ……私がおいしぃぃく……料理してあ・げ・る♡」
武器から手を離して握り締めたのはパン切り包丁。
ヨダレを垂れ流しながら舌なめずりする。
その匂いにクリスティーナはもう我慢の限界だった。
「わたしのバキューム食パァァァァァァァン!!!」
レアモンスター、バキューム食パン。
圧倒的執念により恐怖しか感じなかったバキューム食パンはクリスティーナに3秒で手足を切られ確保された。
「うへ……うへへへへ……これ絶対おいしいやつぅぅぅぅぅぅぅ」
そんなクリスティーナの足元にボコッと現れた100センチ程のモグラ。
クリスティーナが足で踏み潰すと、リボンと共に宝箱が飛び出した。
「………あら? 報酬の出方が今度はモグラ叩き?」
よくよく見るとほかの場所にもモグラは頭を出しては引っ込んでを繰り返している。
上手く捕まえられる人もいれば、ミミックのような敵の擬態で攻撃するのもあった。
「……………あら? あらあらあらあら?」
宝箱から出てきたのは6種類のジャムだった。
見たことない果物……だろうか、名前が書いてある。
クリスティーナは試しに1瓶開けて匂いを嗅いだ。
「………酸っぱい匂いがする」
眉を寄せながらも少しだけ掬い舐める。
「っ!!!」
ほんの小指の爪程もない量なのに口いっぱいに広がる甘酸っぱい味に目を丸くした。
「………美味しい、なんの果実?」
じーっと瓶を見るクリスティーナ。
食への探求はまだまだ続く。
ナズナ、タク、リィン、クラーティアサイド
たまたま移動先に揃っていた4人。
リィンは3人の顔を見てほっとした。
近付こうと数歩歩いたが、ピタリと足を止める。
「…………死に戻り、ゆるせん」
ゲシゲシゲシゲシ
「………あの、ナズナちゃん?」
「あの蝶許すまじ」
ゲシゲシゲシゲシ
「ちょっ……タクが口から魂出てますよー!」
怒り心頭のナズナがうつ伏せに転がっているタクの背中を踏み続けていた。
そんなタクは「あっ……ちょっと……ナズナちゃん!?」と困惑気味だ。
痛みはあまりなく、どうしよう、立てないと困っている。
そんなナズナにクラーティアは
「ナズナちゃん、ほら皆見てますよー! 止めましょう? ねー? ここにはストッパーが居ないですねー!」
必死にナズナを止めるクラーティア。
そんなカオスな状態に一瞬足を止めたが、(いつもの感じですね)
笑って歩き出した。
「タクさん、クラーティアさん、ナズナちゃん」
「あ! リィン!! 良かったそばに居たんですねー…………………………わぁお」
クラーティアは鼻息荒くリィンをスクショした。
首を傾げてクラーティアを見るが気付いたらかなりのプレイヤーもリィンを見ている。
「………え? なんです……「リィン、服」え?……………きゃぁあああああ!!」
綺麗に靡いていたスカートは色々な場所が敗れ肌が見えていて、上着もかなり損傷が激しい。
チラチラと見える腹部や胸に近い場所が切り裂かれている。
リィンは自身を守るように腕で隠してしゃがみ込んだ。
きっとスイが居たら、颯爽と自分の服をリィンに着せて庇うくらいの漢気(←間違ってる)を見せるのだが、ここにスイはいない。
そんなリィンに近付く魔の手。
「………リィンもツルペタ」
ナズナがリィンの前にしゃがみ込み、おもむろに隠した腕の隙間から胸を人差し指でつついた。
そこで首を傾げる。
実は、散々デオドール達に触れていたナズナだが、リィンのお胸をつつくのは初だった。
「……………?」
ナズナ、困惑。
「ナズナちゃん? どうしましたー?」
「なに固まってんだ? 2人して」
タクも立ち上がりしゃがむ2人の隣にくると、真剣な顔をしたナズナがリィンをじっと見つめた。
「………リィン? どういうこと? ツルペタ……じゃない?……タクと変わらない」
「うぁ!!」
しゃがんだタクの鎧の隙間に手を入れてペチペチと胸を叩くナズナに、タクは「……へ?」と首をかしげた。




