穢れた龍 2
《ガアァァァァァァァァァ!!》
龍の咆哮。
4人は威圧されビリビリと体を痺れさせた。
汗が額を、首を、体を流れていく。
龍は4人を一瞥したあと翼を羽ばたかせ街の方角を見渡した。
「っ! まずい! 街に行く気かも!」
クリスティーナはハッ! と目を見開かせて今にも向かいそうな龍へと無理やり体を動かして武器を向けた。
人魚に戻り貝殻に入った状態で浮上し、照準を合わせて放たれた砲弾は龍にあたり叫び声を上げる。
腐った肉片が散らばり地面に落ちた時、ジュっ! と溶かしていた。
「酸……?」
スイは溶けていく地面を見つめて呟くと、直ぐにスピード、攻撃、防御アップを全体に掛けた。
そして防御ダウンを穢れた龍に掛ける。
クリスティーナの攻撃を受けた龍はターゲットをクリスティーナに固定。
咆哮を上げながら向かおうとした瞬間、ファーレンの挑発が発動してターゲットを奪う。
「光の加護! バリア!!」
リィンが二重に防御の魔法を唱えファーレンの支援をする。
スイとリィンの支援を重ねがけしたにもかかわらず、ファーレンは龍の攻撃に後退する。
抑えてはいるが、ズリズリと位置を動かされているのだ。
「ファーレン!」
スイはファーレンの真横を通りハープで下から持ち上げるように叩きつける。
それにより龍はファーレンから離れ、クリスティーナの一斉射撃をもろに食らった。
しかし
「……………1割」
龍の受けたダメージは1割のみ。
グルグル……と喉を鳴らしてこちらを見る龍に4人は冷や汗をながした。
強い………………
「っ! なんかくる!!」
口が光りだし何かの攻撃のモーションに入った。
4人は散らばりすぐに対応出来るように、スイ、リィン、クリスティーナは上空へと飛び、ファーレンは熊をしっかりと固定して防御体制になる。
《がぁぁぁぁぉぁぁぉぉぁ!!!!》
咆哮と共に闇属性を纏った破壊光線がファーレン目掛けて放たれた。
スイは直ぐに防御を重ねがけし、リィンも間髪入れず回復を唱える。
「ファーレン!」
「無事!?」
「大丈夫ですか!?」
吹き飛ばされ倒れているファーレンはゆっくりと盾を杖替わりに起き上がる。
回復されている為装備はボロボロだが目立った怪我はしていない。
「平気! リィンさんのバリアが全部壊れて光の加護が掛かってるのに攻撃受けた……」
確かに光の加護が発動したのをファーレンは見ていた。
光り輝きファーレンの体をおおったのだ。
低確率で起きる攻撃無効化。
それなのに、穢れた龍の攻撃はファーレンの体力ゲージを確かに減らしたのだ。
「………私のスキルレベル不足かもしれません」
敵が強いと100%の効果を発揮しないスキルがあり、この光の加護もそのうちの一つである。
「とりあえず、前衛行く」
「…鑑定したよ! 敵弱点光属性と火属性!」
「あり!」
クリスティーナが鑑定持ちが少ない為取っておいたスキルが今役に立っている。
スイは自分のとクリスティーナの武器を強化して、更に光属性の加護を乗せる。そして龍に突進した。
「っっ!! らぁ!!」
光属性が付いたハープの威力は高く穢れた龍のゲージを一気に減らした。
それを確認したスイは、すぐに来るクリスティーナの砲撃に一時離脱。
これで合計3割削ったゲージにスイはこのままならイケる! と確信した時だった。
また、口が光りだした。
「また来るよ! 一時退避!!」
スイの声に全員が離れて避難、龍の溜めは先程よりも早く一気に破壊光線を撃った。
ターゲットはスイ。間一髪で避けるが、爆風により吹き飛ばされ岩に激突した。
「カハッ!!」
体がバウンドして地面に叩きつけられる。
ファーレンが挑発してスイからターゲットを移動した時、リィンも慌ててスイの方へと駆け寄った。
抱き起こされ口に回復薬を流し込まれる。
「けほっ………ありがとう……」
口端に付いた回復薬を拭ってすぐに立ち上がるスイに、リィンは唇を噛みながらもバリアをもう一度かけた。
龍へのダメージは確実に蓄積されていて、現在5割まで減っていた。
やられて吹き飛ばされ回復して……
それでも死に戻りしてないのはクールタイムギリギリで繋いでいるスイとリィンの防御アップにほかならない。
そして、ターゲットになるのはファーレンかスイ。
クリスティーナとリィンは破壊光線1発で死に戻りするのがわかっていたのだ。
だからこそ、ファーレンはスイか自分以外にターゲットが向かうのを確実に逸らしていた。
そして、龍の被ダメージが3割を切った時だった。
「…………え?」
「嘘!」
「バリア!! 光の加護!!」
穢れた龍の周りに闇色の球体が浮び上がる。
明らかに魔法だ。
すぐにバリアと光の加護が張られ、スイも防御アップを掻き鳴らした。
「きゃぁぁあ!」
クリスティーナに龍の魔法があたる。
シャドーボール、闇属性のそれはかなりダメージを与えていた。
クリスティーナは吹き飛ぶ。
岩にぶつかる瞬間、貝殻を完全に閉めて防御した。
完全防御の為、岩にぶつかるダメージは無く貝殻の中で回復をはじめる。
既にゲージはレッドまで来ていてピコンピコンと音を鳴らしていた。
ゲージを確認した後回復薬を取り出して一気に煽ったクリスティーナはすぐに貝殻を開けて浮上する。
「大丈夫? クリスティーナ」
「なんとかね!」
魔法を出したばかりの龍はゆっくりと空中をうねりながら移動している。
スイ達を見下ろしているが、攻撃してくるそぶりがない。
「………なんか、ある?」
クリスティーナが龍を見つめ、スイは眉を寄せながら龍を観察する。
今までと動きが違うのだ。




