閑話・ 願いよ届け
7月7日
世間は七夕である。
夜空の天の川が一年に一度水嵩を減らして織姫と彦星が会える日。
そして、AFOでも七夕である。
「おー! すごい綺麗!」
七夕らしく星飾りが街中で煌めき、空には満点の星空が輝いている。
それに合わせてプレイヤーの服装もフワフワとした衣を纏っていた。
この日1日限りの特別仕様である。
スイは薄い緑の衣を纏って第2の街を見渡していた。
そして、フェアリーガーデンの入口からも見える巨大な笹。
噴水広場の中心にある巨木が、今は巨大な笹に変わっているのだ。
インベントリには短冊があり、笹に飾れるようになっているのだ。
「七夕って感じ!」
「本当ですね」
「リィンさん! クリスティーナも!」
『はぁーい』
にっこり笑顔のリィンとゆるゆる手を振るクリスティーナが後ろから現れた。
「噴水広場行きます?」
「いくいく!」
『みんなで行きましょ!』
本日食堂は臨時休業、動いているのは宿屋だけだがこの日限定のNPCにバイトを頼んだ為全員で噴水広場へと向かう事になった。
「わぁ! すごーい!!」
イズナがパタパタと走り噴水広場の中央へと向かう。
そんなイズナをあらあら! とデオドールが追いかけた。
「絶景、ね」
セラニーチェが上を見上げて言った。
巨大な笹に無数の短冊が飾られている。
それが夜空に反射してキラキラしているのだ。
ナズナがそっと短冊を1枚手に取り見てみた。
幼女をこの手に!!!
「………………………」
ぐしゃ!!
握りしめた短冊はクシャクシャになって笹から引きちぎった。
「え? ナズナちゃんどうしたの?」
「……………変態は死すべし」
「え?」
セラニーチェはゴゴゴゴゴ……と怒りまくるナズナに困惑。
「さぁ、 グレン! 書きますよォ! 書きますよォォォ!!」
「おちつけ」
クラーティアが自分の短冊を握りしめてグレンに言うが冷静なグレンに宥められている。
そんなクラーティアの隣で顔を真っ赤にしたタクが鼻息荒く短冊に書き込んでいた。
スイちゃんと結婚できますように
「ふーふーふー」
書き切ったタクは鼻息もそのままに震える手で笹に付けようとした時、なにか妄想してたのか鼻血が放物線を描きながら吹き出し倒れた。
ピクピクと真っ赤な顔で痙攣しているのだが顔は幸せそうだ。
「あいかわらずねぇ」
アレイスターが笑いながら言ったあと、笹に括りつけた短冊には、
イイ男に会えますように
あなたも十分相変わらずです。
「タク…………今日は特別、七夕だから」
ナズナスペシャルは発動しなかったが、蛆虫を見るような蔑んだ目をしていたのを気絶しているタクは気づいていない。
ある意味ナズナスペシャルの方がダメージが低いのかもしれない。
「何……書こうかな」
ペンを握るファーレンの短冊をカガリが覗き込んだ。
「なんでもいいんじゃね? リアルのでも良いだろうし。彼女ほしーとか?」
「そう、ですね」
短冊をじっと見て言う。
今まで七夕は病院で願い事を書いていた。
何度書いても、ファーレンの願い事は叶うことは無い。
だって、ファーレンの願い事は『俺に足をください』なのだから。
幼い頃、これを見た両親はファーレンに隠れて泣いていた。
それに気付いたファーレンは、それからこの願い事を書くことは無い。
「…………願い事、かぁ」
そっと、AFOでのファーレンの足を触った後短冊に書き込み始めた。
美味しい食べ物がお腹はちきれるくらい食べたい
「スイさんは何を書くんですか?」
「アーサー地獄に落ちろ」
「え!?」
「じょーだん、じょーだん!」
『目がマジよー』
横から頬をつつくクリスティーナをチラッと見てからペンを回して考える。
「クリスティーナは何書くの?」
『未知の食材ざっくざく!』
既に書いていたそれを見せてウィンク。
ムキムキ人魚の攻撃! さらに腰を振りながら笹に向かう。
人魚にかわり貝殻にのりクネクネ
浮き上がり回転しながら投げキッスしてから短冊を笹につけた。
見ていたプレイヤーに高ダメージ!
チェインボーナスもついて瀕死だ!!
それぞれで短冊に願い事を書いて楽しんでいるプレイヤー。
スイも書き込んでから短冊につけに行った。
高難易度の曲が弾けるようになりますように。
その横に小さく、ハーヴェイさんと両思いと添えられていた。
邪な願い事も書いて、満足したスイは羽ばたき上の方に付けに行った。
「…………………願い事かぁ」
リィンはピラピラと短冊を振ったあと、 同じく羽ばたいた。
秘密をちゃんと話せますように
全員参加の願い事ツリー。
運営からの可愛いイベント。
これが、後に波乱を呼ぶ。
七夕なので、 簡単にお願いごとをしてみました«٩(*´ ꒳ `*)۶»




