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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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聖水と疫病の終息へ

「…………そうなんですか、光属性と闇属性混合の聖水……」


作り方は知識としてスイの頭にあった。

それをリィンに伝えたら、リィンはなるほど……と答える。


「では、急いで作らないとですね!」


「うん!………………………っ!?」


リィンも納得してスイを見た瞬間、スイは何かが頭に浮かんだ。

それを理解したあと、スイは崩れ落ちる。


『ちょっ……どうしたの!?』


「……クリスティーナぁぁぁぁぁ……私の事見捨てたりしないでねぇぇぇ」


『えぇ!? なんなの!?』


ううう……と泣きそうになりながらリィンの傍に行った。

そして、ガっ!! と肩を掴むとリィンの頭の中に何かの映像が浮かぶ。

それを理解したあと呆然としながらも、ネジ巻きを巻かれた人形のようにギシギシと軋むような感覚でスイを見上げる。


そして、崩れ落ちた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」








2人はエルフの長、エイファンの部屋の真ん中でお互いに向かい合って座っている。

傍らにはハーヴェイが用意した小瓶が10個程置いてあった。

2人はゴクリ……と喉を鳴らして頷く。

そんな深刻そうな2人をクリスティーナたちは黙って見ていた。


スイはステータスを開き、新しく闇属性と書かれた場所をタップする。

そこにある水魔法を習得すると、

リィンも同じく光属性の水魔法を習得した。


これは聖水を作るのに必要なもので、現段階聖水を作る以外に使い道はない。

スイはそっと小瓶を持ち目を閉じる。


《数多に煌めく星達よ、暗闇に閉ざされた哀れなる者達に慈悲の祈りを》


そう呟いた事で、スイの魔力半分を使って闇色の水が小瓶に満たされた。これが闇属性の聖水だ。

その片手で持たれた小瓶を今度はリィンが持つ。


《数多に煌めく天体よ、闇夜に閉ざされた哀れなる者達に光をもたらせ》


闇色の水に光が交じりだし光と闇が混ざった聖水ができ上がる。

それを2人がじっと見ていると、ファーレンは出来たのか!? と声を上げる。

2人はグッと眉を寄せてファーレンを見た。


「まだ」


「これから2人で……光と闇の属性を定着させて完成、です」


『じゃあ、もう少しね!』


「………………うん、そうなんだけど……ね」


はっきりと答えないスイに首を傾げるクリスティーナ。

スイは仕方なく、仕方なーく小瓶のコルクを閉めた後立ち上がった。


「……………リィンさん」


「………………はい」


小瓶を真ん中にお互い手を繋いで立つ2人。

その鬼気迫る様子にクリスティーナたちはハラハラしだした。

難しい事なの!? 大丈夫なの………








《《…………光と闇をぐーるぐる! 混ぜ混ぜ混ぜ混ぜぐーるぐる! わたし達の愛の気持ちでみんなを満たしちゃうぞ☆ ダイスキダイスキ! わたしの気持ちを受け取って♡ あなたを蝕む虫さんなんか私達がエイ! しちゃう! フェアリーライトダーイス!! 闇夜に浮かぶ光を見る度わたし達を思い出す♡》》


手を繋いで上にあげてから、くるりとダンスをするように回るリィン。

手を広げてスカートの裾を持つリィンに、スイは

タップするように足を動かす。

そして、フェアリーライトダイスと言った時に2人で小瓶に向かい投げキッスをすると、小瓶自体がキラキラと輝きだし、聖水には無数のハートが浮かび上がる。


最後のわたし達を思い出す♡

で、リィンは両手を、スイは片手を差し出して言うと小瓶はふわりと浮き上がりお互いの重なった手にゆっくりと着地した。


光と闇が混ざった変わった液体に浮かぶハートの模様。

それを握りしめながら2人は倒れた。

残りの魔力を使い切ったこともあるが、精神的ダメージが1番ひどい。


「…………………もう……生きていけない…………」


「わたしなんて……また恥を晒しました……」


さめざめとなく2人にクリスティーナ、爆笑。

ファーレンも必死に口を抑えて笑いを止めようとするが、まあ無理。

そして、小さく笑ったハーヴェイは2人を突き落とした。


「二人とも、あと9本分ね。…………頑張れ」


サムズアップするハーヴェイに、スイとリィンはいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! と叫んだ。




こうして魔力と神経と回復薬を遺憾無く減らしながら出来た12本の聖水。

一応足りなかった時用にとプラス2本作らされた2人はピクピクと倒れふしている。


そんな2人にエイファンは目を丸くしながらも、それぞれに薬を持ちエルフの里は勿論近隣の街や村へとエルフ達は一斉に散らばった。

聖水を与えて症状が緩和した獣人や人族はその後回復術を施され完治に向かっていくのだ。

残念ながら聖水に重複効果はなく、進行しすぎて緩和したが第3段階まで戻らない獣人たちも中にはいた。

助けられない者達も確かにいたのだ。








「……………ありがとう……ね」


ハーヴェイの友人の母、パメラは流行り始めた疫病の最初の方で伝染っていた。

スイが生臭い匂いがすると言っていたのはかなり進行していた証拠だ。

そう、内部から腐っていたのだ。

スイ達が持つ聖水を一番最初に使い確かに緩和はした。

しかし、第4段階までだったのだ。


「…………力が及ばなくて……」


「…………仕方ないわ……私の母もね……この病で亡くなったの……だから、わかってたから。……こんな特効薬が出来ただけでも凄いことだわ、だから、ね? 謝ることなんてないのよ」


「………パメラ……」


「ハーヴェイ、今までありがとう……最後はパラベンと一緒にいたいの……」


「……わかった、呼んでくる」


ハーヴェイはスイの背中に手を当てて外に出るよう促す。

それに従いスイは勿論クリスティーナ達も部屋を出る。

その扉の所に俯き手を強く握りしめるパラベンがいた。

肩をそっと叩いて促すと、小さく小さくありがと……と言うパラベンの声が聞こえた。
















「…………ハーヴェイ」


「パラベン」


「…………ありがとうな、色々世話になった。あんたたちも」


泣き腫らした目で弱々しく笑うパラベン。

………パメラは? と聞くと、ハーヴェイの座るベンチにゆっくりと座った。


「……逝ったよ。聖水の効果なのかな痛みは完全に無くなってた。……………なぁハーヴェイ」


「………ん?」


「……………………凄く、穏やかな顔してたよ。ハーヴェイに感謝してた」


「そっか……」


「…………………………ありがと、な」


「……………助けられなくてわるい」


「………………なんで間に合わなかったって、かーさん見た時思ったのは本音。でもさ、あんな穏やかな最後を見て感謝してるって言うかーさんを見てさ………涙が止まんなかったわ。痩せ細っちまって手をあげるだけでもやっとな状況だったけどさ、綺麗に笑うんだよ。…………最後をあんたと過ごせて嬉しいって、笑うんだよ。…………………………………………………………………

仕方ないことなんだろうけど……生きてて、生きてて欲しかったっ!!!」


「…………………………」


「…………はぁ、悪い。ハーヴェイには感謝してるし仕方ない事だって分かってるけど割り切れなくて……吐き出したくてさ」


「………ああ」


泣き腫らした目でハーヴェイをみるパラベンは先ほどよりも少しだけ優しい目をしていた。


色々な所でたくさんの被害をだした疫病が、こうして終息へと向かっていく。

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