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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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エルフの里

あれから体感的に30分程だろうか、5人はエルフの里へと向かって歩いていた。

途中に出る巨大な蟻に向かって今まで戦ったことが無いリィンがいきなり突撃して杖でポクポクポクと叩いている。

もちろんノーダメージだ。

蟻は首を傾げ下を見た時にやっとリィンに気付きそーっと叩かれている足を避けるほどである。


「あっ………」


「…………………」


蟻と目が合うリィン、およそ10秒。

十分な時間見つめあっている1人と1匹、なにか通じ合うものでもあったのだろうか蟻は懐に手を入れてから何かをリィンに差し出した。


「…………………飴…………」




なぜに。


パッケージには蟻さんがウィンクしている赤い袋、なかに包装された飴が20個ほどあるようだ。

その飴の袋を5袋ドサッと渡された。

そして何故か肩を軽く叩いてから離れていった蟻。


「…………あ、ダメージ受けてる」


肩ポンポンでオレンジに近いグリーンにまで体力ゲージが減少。

無言でヒールするリィンの後ろには武器や楽器を構えた状態で固まるスイたちがいた。

ハーヴェイだけがのんびりと


「へぇ、蟻から飴貰ったんだ。あんまり貰えないのにラッキーだったね」


と言って笑っている。



アイテム《蟻さんの飴玉》


舐めている間体力、魔力を微回復。

10.20.30.40個目とキリのいい個数の時に微回復から中回復に変わる。


「…………回復アイテム」


リィンが飴を見ると回復アイテムの内容が現れる。

え? とスイ達も近付き見ると確かに回復アイテムだった。

みんなで1袋ずつわけあってハーヴェイは断った為、5袋目は開けて中の飴も分けた。



「まさかアイテムくれる魔物がいるとは」


「うん? 結構友好的な魔物はくれる時あるよ」


「……魔物に友好的とかあるのですか?」


「個体差があってね、戦わないで物だけをくれる魔物もいるよ。………あー、ここら辺の話だから他はわからないけど」


飴の袋を見ながら呟いたリィンに、ハーヴェイは答えてくれる。

まさかの友好的な魔物発言にリィンも思わずハーヴェイを見た。

当然の様に答えたハーヴェイだったが、少し考えて他はわからないと伝える。


「そうなんだ………あら、りんご味」


「あら、スイったら勿体ないわよ」


「どんなのかちょっと食べてみたくて」


「こっちぶどうだ」


「色々あるんですね」


「確かりんご、もも、ぶどう、みかんの4種類でたまに出るナシが大回復してくれるんじゃなかったかな」


「まさかのシークレット!!」


ファーレンが驚き、ナシ当たらないかな……と飴をじっと見ていた。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢












「ここがエルフの里だよ。ようこそ」


ハーヴェイが笑って里の入口に立ち中を手で示す。

それに合わせて4人は中を見た。

人族と変わらず生活しているエルフたちの姿がそこにはあり、スイのテンションはうなぎ登りである。

ハーヴェイの友人だろうか、猫みたいに目を細めて笑う青年が手を振りながら近付いてきた。


「ハーヴェイおかえり、まってたよー」


「なに? また胃薬が欲しいの?」


「おぅ!………じゃなくて! かーちゃんの首んところになんかアザがあんだよ。痛がってるしちょっと見てくんね?」


「ふぅん? 荷物置いたらすぐ行くよ」


「おぅ、頼んだ!………あとやっぱり胃薬も頼む」


「はいはい」


手を振りながら走り去る青年エルフはどちらかと言うと平凡顔であった。

しかし、憧れたエルフに変わりはない。

スイは、わぁ……と見ていると、ハーヴェイはスイの顔を覗きこみ


「なに? もう俺は飽きた? エルフなら誰でもいいんだ?」


意地悪く笑いながら言うと、スイはブンブンと勢いよく横に首を振り


「ハーヴェイさんが1番! 素敵!!」


「ふっ」


悪戯に言った言葉に悪戯で返すスイだが、8割は本気ではないだろうか

目がマジだ……とクリスティーナは見ていた。


「送ってくれてありがとう。じゃあちょっと行くところもできたし俺はここで」


「行っちゃうのー……………」


スイが悲しそうにハーヴェイの服をクイックイッと引っ張るとうーん……と考えたハーヴェイ。


「あそこの宿屋わかる? あそこから奥に入っていってすぐに青い屋根の家が2軒続いてるんだけど奥が俺の家ね。宿屋に泊まるんじゃなくて俺んちおいで、お礼もするよ」


「いいの!? お礼……」


「いいよ、助けてもらったんだし。………お礼、何して欲しい?」


流し目でスイを見るハーヴェイに腰砕けて倒れ込むスイ。

それを見てふっ! と楽しそうに笑ったハーヴェイはまたね、とスイの頭をポンと叩きクリスティーナたちに手を振って歩いていった。


「完全に遊ばれてるわね」


「…………なんだか不愉快です!!」


リィンがプンプンと怒っているが、ファーレンはちょっと憧れるのかジーッとハーヴェイを見ていた。


「さて、ここで泊まるのは決定としてどうする? 私的には街中みてみたいんだけど」


「あ、賛成です!」


「ん、いいと思う」


「じゃあ決定ね! スイ! ほら戻ってきて! 立つの!!」


「はっ!!」



こうしてハーヴェイが居なくなった事にスイはガッカリしながらも街中を歩いていく。

道行くエルフ達に目を輝かせちょくちょく話しかけながら街中を見ているが、人族で売られているものと違うものも多く見ていて面白い。


「エルフのワンピース……へぇ」


シュッとしたフォルムのワンピースで腰には紐でできたベルトを巻いている。

たぶん民族衣装のような物だろう、似たような服を着ている人が多い。


その他武器などもエルフの特性に合わせたものが多いのだが特に目を引くのはアイテムだった。


「……凄いです、この回復量」


「お、お嬢ちゃん買うかい?」


アイテムを売っているエルフの男性が、回復アイテムを見ているリィンににこやかに話しかけてきた。


「これ! 凄いです!!」


今までの倍以上の回復量がある回復アイテムに感動するリィンだが、次に言われた言葉にテンションが下がる。


「あぁ、そりゃハーヴェイが作ったやつだな! あいつが作るのは質がいいんだよなー」


「……そう、なんですか」


「ハーヴェイさん凄い」


リィンはがっくりと肩を落とし、正反対にスイがキャッキャッと楽しそうに回復アイテムを見ている。

リィンは苦々しそうにしながらも5つ購入。


「あいよ、まいど!!」


「………ありがとうございますぅ」



一喜一憂しながらも街中を見ていくスイ達。

街の中心部らしいほかの街には噴水広場がある場所は森林公園になっていた。

涼しい風が吹き小鳥達が木に止まっている。

沢山のエルフ達が散歩したりピクニックをしている人もいるようだ。

死に戻りポイントでもあるので登録したスイ達はあることに気づいた。


今まで歩いてきた中でもこの森林公園内にもエルフの体の至る所にアザがあるのだ。

痛みも有るのか顔を歪めている人もいた。


「……………これ、エルフの里に来た時にハーヴェイさんの友達が言ってた話と一緒かな」


スイが目の前を通っていく女性エルフの腕にあるアザを見ながら言った。

全員にある訳では無い、5人に1人くらいだろうか。

それでも異常だろうこの人数、このアザは。


「……………ハーヴェイさんの所行きましょうか」


「………そうだね、そうしようか」


夕方にエルフの里に着いた為、辺りは暗くなってきていた。

クリスティーナの提案に全員が頷き、教えて貰った宿屋をまず目指すことにする。

そして、見つけた青い屋根の家。


「あ、スイ! 待ってよ!」


ずんずんと進んで行きあっという間に家のインターホンを鳴らす。

ワクワクしているのがわかり、リィンはまた頬を膨らませる。


「…………いらっしゃい」


ガチャリと開けられた玄関、扉に寄りかかるように立つハーヴェイはパーカーにズボンと軽装でスイ達を迎え入れてくれた。

少し大きめのグレーのパーカーが萌え袖になっていて、スイはその手を握りしめ


「ただいま」


「うん、ちょっと間違ってるね」


笑いながら中へと促すハーヴェイに全員が家の中に入っていった。



平屋の一軒家に住むハーヴェイは無駄なものが置いていなくスッキリとした室内だった。

椅子に座るように言われて全員が座った時にハーヴェイからお茶を出される。


『なにこれ! 清められる感じするぅー』


クリスティーナが感動して打ち震えていると、ハーヴェイは薬の缶を出してきた。


「回復薬を作る葉から抽出して作ったお茶。微回復もするよ」


クリスティーナはその茶葉を見てから欲しい!

とハーヴェイを見る。


「売るように沢山作ってるからそれは可能。ちょっと高いよ」


『あとで相談しません?』


「いいよ」


なんとか茶葉を手に入れたいクリスティーナに、販売先が増えると笑顔のハーヴェイ。

ふたりの話は纏まりそうだ。


お茶を飲み休憩しているスイ達の為にハーヴェイは自作の食事を作っていてくれた様で、次々に出してくれる。

宿泊と合わせてお礼らしく、


「遠慮なく食べていってよ」


そう言いながら出された食事の量に目を見開いた。

大きなテーブルいっぱいに用意される食事は全て美味しくクリスティーナは更にテンションを上げてレシピの話をする。


『じゃあこれは?』


「あぁ、これはエルフの里に売ってるスパイスを使ってるんだ。あまり他では売ってないから珍しい味付けだった?」


『買える?』


「もちろん、どこの家庭にも常備されてるよ」


わざわざスパイスを持ってきて見せてくれるハーヴェイに、食事を中断してハーヴェイの隣に立ち説明を聞くクリスティーナ。

どうやらエルフの里のスパイスは数種類あるらしく全部丁寧に教えてくれた。

クリスティーナは明日出発前には買いに行かなきゃ! と息巻いている。


ちなみに、ハーヴェイの家に着いた瞬間尻尾から通常の足に戻しているクリスティーナ、貝殻が邪魔になる為変えていた。


楽しそうに話す2人をジトーッとフォークを噛みながら見るスイ。

ハーヴェイはそんなスイに気付いているのにわざと顔を向けないようにしている。

内心笑っているのがクリスティーナにはすぐにわかった。


『…………あなた、いい性格してるわよねー』


「よく言われる。反応、面白くて」


『わかるけどね、あんまり虐めないでよォ?』


「気をつけるよ」


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