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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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危機的状況の戦闘

上空に居たはずの青年が飛び降りスイを抱き抱えてそのまま蟻を回し蹴りした。

軽やかな動きで蟻を蹴り飛ばした後しっかりとスイを抱えたまま後ろに下がって行った。


「「「え」」」


3人はスイが助かった事よりも青年が蟻を吹き飛ばした事に驚いていた。


「前! 見て!!」


青年がファーレンに言うと、ファーレンはハッとしてミミズを見る。

足に力を入れてミミズを押し返し出来た隙をついて盾を手放した。

剣を取り出し走り出したファーレン、後ろでは手を打ち鳴らす熊が物凄く頼りになる。


「っらあ!!」


ギイィィィィィィィ!!


血を流しながら悲鳴をあげるミミズのゲージが赤くなった。

光り出すミミズに、ファーレンは目を見開き後ろに下がる。

それは今までにも見た事のある光景だ。



「え!? ボス!? でもここ普通のフィールドだよな!?」


「スイが動けない時に……」


クリスティーナが到着してファーレンの隣に来た時、光が収まり現れたのは


「……………お、おぅ……………」


「そう来たか……………」


「まぁ、砂漠ですからね………………」


目をぎょろぎょろさせた5m程のサボテンが2つ現れた。

1つは鉢の中に入っていて、1つは足がある。

そう、足があるのだ。

緑のまん丸いサボテンが編み上げブーツを履いている。

手には日焼け止めの手袋をしていてUVと大きく書かれていて、日焼け止めを持っているがサイズに合わず小さい。

必死に出そうとしているが全然足りなくてサボテンは怒り出した。

そしてギンっと睨み付けて日焼け止めをリィンに向かって投げつける。


「きゃぁぁぁ!!」


豪速球である。

バトミントンのスピードくらいの威力で、逃げられずバリアで守られたリィンはその場に座り込む。


「さ、さすが新エリア……こっわ……」


クリスティーナが口を引き攣らせながら言い、

ファーレンは手を伸ばすことで熊がととと……と走りよりリィンの前に立つ。


「…………これは、大丈夫かなぁ」


ファーレンが珍しく弱音を吐いたのだった。










「うっ………ん?」


「大丈夫?」


クリスティーナ達から離れているスイはしゃがみ込んでいる青年の膝の上で目を覚ました。


「………あれ? 私……」


「ミミズに吹き飛ばされたんだよ」


そう言いながらそっと渡された小瓶。

これ飲んで、と言われボーッとしながらも素直に口に含むとソーダの爽やかな味が口いっぱいに広がった。


「…………あれ」


「回復した?」


「うん……あり、がとう」


渡されたのは回復薬だった。

しかも今までに無い回復量でスイのステータスをオールグリーンに1度で戻したのだ。


「これ……」


「うん? 俺が作ったんだよ」


「え、凄い!」


キラキラと目を輝かせて言うスイに、青年はにっこりと笑う。


「うっ……神々しい」


「それよりさ、あれ大丈夫?」


「え? あれ?…………………………さ…ぼて……ん」


かなり厳しい戦いをしているクリスティーナ達。

鉢に入っているサボテンからはひっきりなしに魔法が放たれ、足のあるサボテンからは日焼け止めを塗っては怒って投げつけてくる。

その威力に砂が舞って前が見えない!


「きゃあ!」


上空にいるクリスティーナの叫びが聞こえて落下、それを見たスイが起きあがりまた剣を出現させる。

青年の脇に手を入れヒョイと持ち上げると青年は軽く暴れたが、スイが剣に乗せた事で静かになった。


「回復薬ありがとう、ここにいて」


「あ! ちょっとまって!」


スイの両手に三本先程の回復薬を持たせた。


「君堕天使でしょ? 回復魔法効かないからせめてこれ持って行って」


「助かります!!」


グッ! と握ってからポーチにしまい飛び立ったスイを青年は上昇する剣の花弁の上から見送った。








「っ!」


ファーレンが吹き飛ばされ熊が足のあるサボテンを1人で押さえ込んでいる時、スイの短剣が熊のすぐ隣をビュンビュンと飛んだ。

それに気付き熊が離脱。

サボテンはスイに気付き日焼け止めを高速で連続に投げる。


「サボテンやばっ」


スピードアップと、新たに手に入れた動体視力アップをヴァイオリンで奏でる。

しかし、ハープでは無い為思っていたよりも上がらない。


「………ヴァイオリン出しちゃったからハープ出せないっ……」


飛び回り投げつけられる日焼け止めから避けるが何度か被弾している。

削られる体力にもう一本回復薬を飲み込んだスイ。

更にはもう一体のサボテンから無差別に来る土魔法にも意識を向けなくては行けないから足があるサボテンに集中出来ない。


「っスイ! 大丈夫なの!?」


「クリスティーナ」


近づき聞いてきたクリスティーナに頷いて返事を返すスイ。

ヴァイオリンを常に奏で短剣を動かし続けるスイだが、なかなか攻撃が届かない。

それはクリスティーナの武器も同じだった。

軌道が決まってしまっている砲撃はサボテンがスピード特化の為簡単に避けてしまうのだ。

防御にステータスを振っているファーレンは簡易的に戦えるが対ボスともなれば厳しいし、

リィンは元々攻撃職ではない。


「どうしようっ!」


スイは焦り闇雲に短剣を飛ばし続けるが、スキル使用に魔力が枯渇し始めた。


「スイ! 飛ばしすぎ!」


「でも! だって!!」


スカートを翻してクリスティーナを見ると、

クリスティーナも冷や汗をかきながらサボテンを見る。

不思議と意味深に笑っているように見えるのが更にイラつかせる。


「スイ、ハープは!?」


「さっきヴァイオリンに変えちゃったから3日は無理よ!」


「ボス戦はっ……対象外だよ! 忘れたの!?」


必死に避けながら2人で叫ぶ。

クリスティーナの言葉に、え!? と叫んだスイは楽器を交換してみた。

ちゃんと交換しますか? と表示が出てすぐに交換した。


「ああぁぁぁ! イルカさんおかえり!!」


敵にスピード、攻撃力減少のデバフを掛けて魔力が枯渇する。

1度下がり魔力回復薬を飲んで確認すると、半分まで回復していた。

すぐに仲間全体にスピード、攻撃力アップを弾きながら翼をはためかせ鉢植えのサボテンを抑えているファーレンの援護に向かう。

ぶん殴りファーレンから離させた後、さらに防御力と動体視力アップを重ねがけしながらクリスティーナの元へと行く。

ちょうどリィンのバリアが日焼け止めからクリスティーナを守ったところだった。


「っぃよいしょぉぉ!!」


腰をひねってハープを振りサボテンを風圧で吹き飛ばしながら切り刻む。

それに合わせてクリスティーナも追撃した。


「イルカさん、もう少し頑張ってね!」


片手でハープを握りサボテンの下に潜り込んで下から打ち上げた。

そこにクリスティーナの20発連続砲撃をしてサボテンをたおした。

残り体力1と表示されているが、それ以上は攻撃しても減らず、鉢のサボテンを倒さないといけないのでは? と向きを変える。


リィンを守りながら熊で対峙するファーレン。

リィンは後ろで回復とバリアを張り続けていた。

ファーレンの足元に小さな魔法陣がある。


「もぅ! 魔法使うのになんで体当たりしてるの、あのサボテン!」


「知らないよー!」


クリスティーナが魔法使いのくせに結構力強いじゃない! と言いながら背中の武器に手を伸ばした。


「こっちの方がいいかな!」


「……………えぇー」


背中から沢山ある武器のうち1つを引っ張り出してスイに言った。


「ファーレンから離してくれる?」


「ん、了解」


クリスティーナがその場で止まり、スイがファーレンからサボテンを蹴り飛ばし離させた。

あまり距離を取らない方がいいかと蹴り飛ばしたのだ。

1mほど離れたサボテンに、肩に乗せてしっかり固定したロケットランチャーの標準を合わせた。


「スキルロケットランチャー! 水魔法を添えて!!」


ロケットランチャーから飛び出した弾はスピードに乗ってサボテンへと向かっていく。

そこに現れたうねるように動く水龍が弾と並行してサボテンにぶち当たった。


「……………威力やば」


「水属性苦手のハズなのに」


ファーレンとリィンが呆然と言うと、クリスティーナがしなを作りながら口に手を当てる。


「ほら、私か弱いから1個くらい対抗できるの欲しいじゃない? クリスティーナ頑張っちゃった♡」


「「「………………か弱い?」」」


その発言に3人ともジーッとクリスティーナを見ると、クリスティーナはえへ♡ と笑い頭をコツンと叩いた。


ムキムキ人魚が頭コツンである。

………………お…………おおぅ…………



こうして二体のサボテンのゲージがグレーダウンして完全に倒すことが出来た。










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