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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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助けた青年と巨大ミミズ

「ふせて!」


スイは叫びながらイルカさんハープを振りかぶった。

前を走る青年はスイを確認した後スライディングするかのようにふせた。

リィンのバリアが青年を守り、地中から出てきた巨大なミミズが出てきた瞬間スイがハープで吹き飛ばした。

長い胴体をにゅるりとくねらせ飛ばされたミミズは、受身を取りダメージを軽減させる。


「…………ミミズが受身ぃ!?」


クリスティーナから降ろされたファーレンが挑発しながら言うと、ミミズの目が赤くなりファーレンを見る。

その間にスイは青年を抱き上げ上空に避難した。


「大丈夫ですか?」


「だい……じょうぶ……」


青年はスイに捕まったまま俯き呼吸を整える。

だいぶ距離を走ったのか、かなり呼吸が乱れていた。

さらりと金髪が揺れて尖った耳がチラリと見えた。


「…………耳が尖ってる」


「っわ!?」


片手で青年を支え、片手で耳を触るスイに青年は驚き顔を上げる。

それにスイもまた驚いた。


「……………わぁ、ちょーいけめーん」


金の髪に青い目、整った顔立ちのその青年は触られた耳を抑えながらもふわりと笑った。


「助けてくれてありがとう。途中で剣が折れてしまってもうだめかと思ったよ」


「いいえ、怪我がなくて良かったです」


「うん………えーっと、耳を離してもらっていいかな?」


青年はスイが触った耳をガードしてるが、諦めずに触ろうとチロチロと指で耳を触っている。


「………はっ! あまりにイケメーンだから思わず手が出た」


「えー……っと、ありがとう」


「ちょっとー! イチャイチャしてないで戦ってよー!!」


縦横無尽に飛び回りドドドドドド!!! と砲弾を撃ちまくるクリスティーナに、リィンも飛びながら支援を切らさないように立ち回る。

チラチラとスイを見ながら。

クリスティーナが尻尾を揺らし水魔法であるウォーターボールをミミズに当てるが水魔法はあまり効かないのか少し後退させただけでダメージには届いていないようだ。

ファーレンは熊の盾を砂に立ててしっかりと握り締める。

ちなみにこの盾は、茶熊のおもちゃ箱という名前らしい。

突進してくるミミズを熊でしっかりと抑え、腕を軽く引くと鎖が伸びてミミズの胴体を拘束した。

締め付けその場所だけクビレが出来たミミズは、鎖に着いている棘が刺さりギイィィィィィィィ!!! と悲鳴を上げた。


「あぁんファーレンったら強くなっちゃって!」


以前だったら吹き飛ばされていただろうファーレンだが、今はしっかりと抑えている。

それにクリスティーナは感動していた。

リィンもファーレンくん凄いです!! と杖を振り回していた。


青年を抱えているスイは、戦闘に入ると守れないと思い


「私に捕まってください。手を離します」


「え!? う、うん」


スイの首に腕を回して密着した青年を確認してから手を離す。

一気に首に負担がかかり、青年も更に力を入れてスイにしがみつく。


「………よし、リスさんよろしく」


ヴァイオリンを出したスイは曲を奏でだす。

無数の短剣が現れスイの周りをクルクルと動きだし、6本の短剣は足場になるように花形になってスイの下でクルクルと回る。

青年はスイよりも大きいため先に足が触れ驚き膝を曲げた。

そんな様子に笑って大丈夫ですよ、と伝えた。


「怪我したりしませんから大丈夫です。足を置いてください」


スイはまだ翼で飛んでいる状態で、青年だけを剣の上に立たせた。

まだスイに捕まったままの状態だが、しっかりと両足を付けているようだ。


「…………よし、あいつ倒してくるんで待っててくださいね」


ゆっくりと青年の腕を離させたスイは返事も待たずに下へと飛んで行った。











ファーレンがミミズを抑え、クリスティーナが砲撃を続けている。

攻撃を受けてのたうち回るミミズに向かい、盾に収納されていた剣を取り出す。

この剣もオーダーメイドである。ファーレンの手に吸い付くような心地だ。


熊から手を離し走り出すファーレン。

その後ろで目が緑に光りだした熊が腰に手を当てて胸を張っている。



«ご主人様すごいんだぞ!!»



まるでそう言っているかのように胸を張っているのだ。

張りすぎて後ろに重心が行き過ぎている。

そんな熊の後ろにはリィン。

今の熊の仕事はリィンを守ることのようだ。


「バリア!」


球体型に変化したリィンのバリアがファーレンの体を包む。

ガギィン! と音を響かせて敵に剣を向ける、その隙間を縫うかのようにクリスティーナの砲撃が火を吹いた。

クリスティーナの攻撃が来るのに気付きタイミングを計って熊の居る後ろまでジャンプして下がったその場所に、上空から急降下してくるスイが10本程の短剣を腕一振でミミズに向かわせた。


どしゅ………


ミミズの本体に短剣を刺してダメージを与えると、悲鳴を上げて地面に潜って行った。

ぐるぐると動いているのが地面の盛り上がりでわかる。

スイ、リィン、クリスティーナは飛び上がり上空に逃げるがファーレンは飛ぶことが出来ない。

少し動いた事で振動が伝わりミミズはファーレンの真下から口を大きく開けて出てきた。


「くそっ!!」


口に盾を当ててガードするが、ミミズの勢いにそのままの状態で上に上がっていく。


「「「ファーレン(くん)!!」」」


「バリア!!」


切れたバリアを再度掛けてファーレンの様子を見るリィン。

近すぎてスイとクリスティーナも攻撃出来ないでいる。

スイは場所を真後ろに移動して胴体に短剣を刺すと、ミミズのタゲがスイに移動した。


赤い目がスイを射抜く。


「うわぁ!!」


ブンっと首を振ることでファーレンを吹き飛ばしたミミズは1度地面に戻りバウンドしてスイの所まで飛び上がり上体を反らして体当たりしてきた。


「きゃっ……!!」


予想以上のスピードに避けられず吹き飛ばされたスイは5mほど飛ばされた。

ヴァイオリンではガードが出来ないためまともにヒットしたのだ。

痛みに顔を歪ませながらチラッと体力ゲージを確認するとオレンジまで下がっていた。


「っ……一撃で………え?」


砂煙を上げながらスイに近づくミミズに、立ち上がろうとするが体に力が入らず動けない。ショック状態と表示されている。

一気に体力が減らされた時、稀に低確率で起こるバッドステータスである。


「えぇ? 今ぁ?」


クリスティーナが急いでスイを守ろうと飛び出し、リィンも後を追う。

スイに触れない為バリアは使用可能の為リィンは二重にしてバリア張った。


バリィン!!


体当たりしたミミズに1枚バリアが割れる。


「うそ! 一撃で!!」


リィンが目を見開き言うと、ミミズは地面に潜りスイの真下に移動する。

ファーレンが挑発してタゲを取った時にはスイの真下から飛び上がった時だった。


「カハッ…………」


口から血を大量に吐き出し体が宙に舞う。

クリスティーナが叫びリィンが杖を強く握る。


「回復が……出来たら……」


下唇を噛み締めて言うリィンはファーレンの立つ場所とかなり近い場所にいた。

ミミズは挑発の為にファーレンの方へ来る為、リィンを押してからミミズを迎えうつ。

砂の上にザザザ……と転がったリィンは、すぐに起きあがりファーレンを見た。


「っ! 早くスイを!!」


「わ、わかりました!!」


かなり飛ばされたスイを探すと巨大な蟻がノシノシと近付いていた所だった。


「きゃー! 蟻!!」


「えぇ!?」


リィンが立ち上がり走り出し、リィンの声で何とか視線を向けるファーレン。

倒れ込み意識がないスイに向かって巨大な蟻がノシノシと近付いている。

クリスティーナが向かっているが間に合いそうもない。

スイの体力ゲージは赤にまで行っていてあと一撃食らったら死に戻りするだろう。


「やばいやばいやばいやばいやばい!!」


ファーレンは蟻に向かってもう一度挑発するが遠い為チラッと見るだけでやはりスイへと足を進めている。


「スイ!!」


足を上げてスイを踏みつけようとする蟻。

くったりと体の力が抜けたスイに、3人はダメか!! と、思った時だった。



金の髪がふわりと揺れてスイをお姫様抱っこした。








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