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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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化け物人魚の武器

街を離れた4人は巨兎族の街を目指して歩き出した。


『へぇ、かなり大きなうさぎ耳の獣人がいる街なんだ』


「あの水の精霊よりも大きかったよ。門番さん見たら、あ、ここがそうなんだってすぐにわかった」


温泉のミニイベントで訪れていたスイは、クリスティーナの質問に答えた。

でも……と考えながら口を開くスイ。


「あの街から歩きで3日……そんなに離れているとは思わなかった、びっくり」


「ということは、あの温泉もかなり離れた場所にあったんですね」


『モグラが居たとこだよね? あのイベントでは歩きで行ったうちに入らないから蜂にも頼めなかったしね』


女性(笑)3人は穏やかに話しながら進み、ファーレンはその横を静かに歩いていた。

手にはバナナミルクである。


『ファーレンくん、いちごミルクもあるわよ?』


「いただきます!!」


クリスティーナの誘惑に簡単に負けるファーレンはニコニコ笑顔である。

口にミルクを付けながら器用に飲み歩くその姿に3人はほっこりする。


「「『…………子供だなぁ』」」


「? なんか言った?」


ん? と聞いてくるファーレンに、リィンは頭を撫でる。


「え? え? なに?」


「そのまま大きくなってくださいね、ファーレンくん」


「???」


コクコクと喉を鳴らしながらバナナミルクを飲むファーレンは不思議そうにリィンを見た。






途中セーフティエリアで休憩を挟みつつ、スイ達は先に進む。

びっくりするのは、その敵の強さだ。

一気に強くなっている敵、しかも今スイ達がいるのは砂漠で照り返す暑さに体力も奪われた。

よく出てくるのは巨大な蟻と、サソリ。

そして稀に出てくる砂漠ミミズである。

砂の下に巨大な巣を作っているミミズは、縦横無尽に動くのだが、近くを通りかかったら下から一気に攻撃を仕掛けてくる。

どうやら振動で位置を察知しているようだ。


だが、スイたちもレベリングや装備の見直しをして十分敵を倒して進めるだけの強さを手に入れていた。


そう、強さを手に入れているのだ。


あの人魚が、更なる強さを手にしているのだ。


「……………それなに、クリスティーナ」


「ん? 砲撃用武器よ」


いいでしょ! と笑っていうクリスティーナ。

その背中には鋼で出来た武器ががっつりと乗っていて、しかも浮いているのだ。

足を尻尾に戻し、水魔法も会得したクリスティーナ。小さな池を作り出しそれに尻尾を浸しながら宙に浮いている。


「…………間違ったガン〇ム」


「………………そうですね、何か違うガ〇ダム」


「………………………そもそもムキムキ人魚にガンダ〇プラスしちゃったらこの世の終わりな気がする」


巨大蟻地獄に、高笑いをしながらクリスティーナが突撃していく様子を後ろで見守る3人。

もう蹂躙である。


「……………なんて言うか、厄災級モンスターってかんじ」


「スイ」


「ん?」


「それ、お前が言うか?」


ジト目で言うファーレンに、無言で腹パンをくらわせたスイ。

うおぉぉぉ………と唸りながら腹部を抑えて蹲るファーレンに、リィンは慌てて背中をさすった。



「私にあんな(視覚的)威力はないよ」


「「……………………」」


2人はある1点をチラッと見てからお互い顔を見合わせた。

開かれた胸元からふるりと揺れるその場所は、一部需要のあるプレイヤーには十分視覚の暴力だろう。



「お☆ ま☆ た☆ せ☆」


スッキリとした表情で近づいてくる化け物人魚、クリスティーナ。

もう武器は解除しているため、いつの間にか用意された貝殻へと戻っていた。


「まだ使い慣れないのよねぇ、今回でしっかり使えるようにしなくっちゃ」


「「「あれで使い慣れてないの!?」」」


「え? ええ勿論よ! まだリロードも遅いし動きも滑らかじゃないわ。全方向に集中しないといけないのもあるし、何より仲間たちの動きまで確認が疎かになるの」


困ったものだわぁ……

そう頬に手を当て腰をゆっくりとくねらせ座り直すクリスティーナをファーレンは頬を引き攣らせ、リィンは黙って殲滅された蟻地獄を見る。

そしてスイはと言うと。


「…………早く慣れてね。じゃないとお腹空いた時すぐに出せないじゃないかー」


色気より食い気だった。

何度か戦闘中にクリスティーナに1口スイーツを出してもらってたスイ。

そっちの心配である。

呑気にそんな事をいい、クリスティーナが濡れおかき食べる? とマイペースに差し出していた。


「……………こういう所がリアフレさんなんですねって、思います」


「あぁ、そっか。リアフレだっけ」


醤油味上手い! と目を輝かせるスイと、スイの腰に片手を回し密着して他のも出しているクリスティーナをリィンとファーレンが生暖かい視線で見ていた。


ここ、敵が出るフィールドですから。

単体で現れたサソリをファーレンが盾で弾き返した。



「………………そろそろ戦いませんかー」


「「はっ!」」


リィンの言葉に二人同時にサソリを見る。


「私のおかきタイム邪魔するなー!!」


バッ! と装備したイルカさんハープでフルスイングしたスイはサソリを吹き飛ばした。

その口はもぐもぐと動いていたが。


「まったくもう! 邪魔なサソリ!!」


そう言いながらクリスティーナに手を出すスイ。

おかきおかわりである。

ファーレンとリィンももらい口に含んだ瞬間、ファーレンはそのしっとり柔らかな食感とジュワッとくる甘じょっぱい味にくうっ!! と手に力が入る。


「うまぁ……」


「そうでしょそうでしょー」





こうして食べて飲んでを繰り返し、強くなっているはずの敵を吹き飛ばしながら進む事4時間。

さすがに疲れ始めてきたスイ達は、セーフティエリアはまだかなーと話しながら歩いていた。




っっ……………!………っ…………!!




「…………ん?」


「どうしたの?」


クリスティーナが立ち止まり耳をすませる。

それにスイは立ち止まり、リィンとファーレンもクリスティーナを見た。


「………なんか、聞こえない?」


「え?」


首を傾げてクリスティーナが見る方へと視線を向けると、遠くで砂埃が見える。

んん? と4人で見ていると叫び声と共に地響きも鳴り出した。


「な、なに!?」


「何か来ます!」


リィンが杖を握りしめて言うと、小さな何かがこちらに向かって来るのが見えた。

その後ろには土がボコボコと盛り上がり何かが下を這っている、土埃が酷い。


「………………人だ!!」


スイは叫び一翼を広げ一気に上昇、ハープでスピードアップを奏でながら飛び立った。


「先に行く!!」


「直ぐに行くわ!」


クリスティーナも武器を装備して空中に浮上がる。

その時ファーレンの脇に両腕を入れて支え、ファーレンも連れてスイの後を追った。

勿論、リィンも翼を広げてスイの後を追うが、スピードアップをしているスイには追いつけず、後方からバリアをはる事で何とか支援をしたのだった。


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