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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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新たな楽器の入手

買い物を終わらせた2人はそれぞれサーヴァとリーゼロッテに2週間後に来て欲しいと言われている。

その事を会話の中で知った2人は、その間それぞれのコンビネーションを確認したり、スキルの開発などをして残り1週間を過ごしていた。

なぜか、それはファーレンの盾を購入後にお互いの目的地である巨兎族の村に行く事になったからだ。

道中危険無く進めるように、戦闘の練習をする事にしたのだ。


同じフェアリーロードの仲間たちもそれぞれに自分磨きをしているのか、たまに来るチャットで知らせあった。

数人から一緒にレベリングのお誘いや、買い食いのお誘いがあったがなかなか時間が合わずお断りをしている状態だ。

ちなみに、買い食いはクリスティーナである。

ぶれない。


結局ファーレン以外のフェアリーロードに会っていない為、セクシー路線に変更したスイはまだ見てもらえていない。

ファーレン曰く、乳爆発もだ。

タクが喜び鼻の下を伸ばしナズナ様が降臨なされるだろう事は想像するに容易いだろう。

それは近い未来に訪れる出来事である。






そして、約束の2週間後




「来てやりましたよ! サーヴァさぁーん!!」


バンッと扉を開けて入ってきたスイは接客中のサーヴァに飛びついた。

来ると分かった瞬間振り向き正面から飛びついてきたスイを抱えて頭突きをしてきたサーヴァに、スイは崩れ落ち頭を抑え悶えている。


「うぁーー……いたぁぁぁい…………いしあたまぁぁぁぁ………」


「飛びつく方がわりぃって言ってんだろ。こっちは接客中だっつの」


サーヴァはため息を吐き出してお客さんに頭を下げた。

スイは顔を上げて見ると、目を見開いてスイを見る女性プレイヤー


「す! すいません!!」


パっ! と立ち上がり頭を下げると、フリフリと手を振って


「い、いえ!! 大丈夫です!………………」


そう言った後に小声でフェアリーロードのスイだ……と呟いていた。

接客中だったのを見ていなかったスイは反省しつつも、彼女が持つのがヴァイオリンでそれが少し嬉しくなる。


サーヴァの接客中は、大人しく椅子に座って自分のハープを撫で付けていたスイ。

女性プレイヤーはサーヴァの話を聞きながらもチラチラとスイを見ていた。

有名クランの、しかも自分と同じ奏者なのだ気になるなと言う方が難しいだろう。



そんな事に気づかずスイは脆くなった箇所を優しく優しく撫でていた。

チラチラとスイを見ていたプレイヤーがサーヴァにヴァイオリンのメンテナンスを頼み店を出たのを横目に見たスイは、サーヴァを見る。

奥へと向かって歩いていったサーヴァを、スイはまたハープを撫で付けながら待った。



「よし、待たせた」


サーヴァは接客を終わらせて座るスイの元へと戻ってきた。

その手には大きめの箱を持っている。

箱には無重力と書かれた付与魔法がかかっていて、付与魔法を付けていなかったら物凄く重いものなのだとわかる。



「サーヴァさん? それなに?」


「おお、これはな」



椅子に座り箱を膝に置いたサーヴァは慎重に開けてスイに見せる

それはキラキラと輝いているように見えた。


「………綺麗……」



普段スイがメインに使っているハープと同じ、だが明らかにデザインが違うハープがそこには入っていた。

今使っているのよりも小さめで、歪んだハートの形をしてる。

上から下に掛けて白から青にグラデーションがかかっているシンプルな仕様だが、全て盾を作る素材で出来ていて物凄く重いが頑丈。

そして、下部の所に人魚の尻尾がぐるりとハープに巻き付き、ふわふわの髪を靡かせる美少女が微笑んでいた。


これぞ、これぞ、人魚だ。

何処かの筋肉ムキムキ化け物人魚を全否定出来るくらいに、素晴らしく人魚だ。


「ほれ、お前用のハープ」


「私用?」


重くて箱からは出せないから自分で持て、と言われてスイはハープを箱から出した。

確かに、今使っているイルカさんハープよりも小さいのに重さは段違いだ。

スイでさえ、片手で持ってちょっと重たいと思うくらい。

ただその分、スイが扱っても壊れにくい盾の素材を使用したハープだ。

ずっしりとするが、良く手に馴染むのがわかる。


これを、スイの脆くなったハープを見てからサーヴァは色々な場所を訪れて探してくれていた。

スイが握りしめ、殴り付けても内部、外部共に頑丈なハープをだ。

そこまでする必要は勿論ないのだが、同じ奏者である。

自分の使いやすい、使い心地の良い楽器を使って欲しいのだ。


そして、人魚が巻きついているが、これはリーゼロッテがサーヴァにと運ばせた物の正体。

実はこれ、盾なのだ。


「この人魚が盾……?」


「ああ、変形型って言ってな通常の盾の形とは違う形の物を言うんだ。…………まさか楽器と合体させるとかリーゼロッテも無茶を言うもんだ」


それぞれの楽器と武器は相容れないものなのに、リーゼロッテからはこの盾と共に手紙が入っていて、


盾と結合して


それだけ書かれていた。

しかし、スイのハープを見て、この結合を考えた。

ただでさえ脆くなりがちのスイのハープ。

この盾を合わせることで更に頑丈になり耐久値が上がるのではないか、と。


サーヴァの予想通り、2つを合わせた事で本体のハープの性能が変わったが、耐久値が一気に上がった。これは、スイが脆くしてしまう内部の耐久値も含まれていた。


そして、人魚の盾の性能は変わっているようだ。

サブの様な感じらしく、人魚の説明は??? となっている。

使ってみて使い心地を自分で探るようだ。

ふむふむ、とハープを観察して色々な箇所を握ってみたり試し弾きをする。

今までにない響きがあった。


「すごい……貰っていいの!?」


「金取るぞ」


「押し売り!」


「いらねぇならいいぞ?」


「いる!!………………………………安くお願いします」


ステータスで残金を調べたスイは服を買ったために残り少ない。

小さく呟いたスイに、サーヴァは片眉を上げた。


「服買って金ねぇのか? そんな乳出した服買うからだろ」


「乳出てないわ!」


なんなの! ファーレンといい! とブツブツ言うスイに、サーヴァはニヤニヤと笑ってスイを上から下まで見る。


「そのシャツボタン弾けんでねーか?」


「は…………じけないわ!」


ちょっとアブナイ、とこっそりスイも思っていたりする。



なんだかんだとわちゃわちゃ話してから新たなハープを手に入れたスイ。

ちなみに、お金は足りなくて泣きながら分割でぇぇぇぇぇ!! と土下座してたのは内緒である。


そんなスイを見たサーヴァは高らかに笑ってから分割にした金額を受け取ったのだった。


「クソガキ、耐久値は自分で直せるがお前はその力のせいで楽器を内側から壊しちまう。定期的にメンテナンスをする方が良いと思うぞ」


「メンテナンス、かぁ……サーヴァさんとこに持っていけばいい?」


「ああ、持ってきたら見てやる」


「わかった、メンテナンスに来る」





頷きありがとう! と手を振って店を出たスイ。

それに手を振りスイを見送ったサーヴァは店の奥へと戻って行った。










新しく手に入れたハープではあるが、まだまだメインはイルカさんハープと、リスさんヴァイオリンである。

なにより愛着があるのだ。

しかし、試しに使用してみた人魚さんハープはスイが思っていた以上の効力を発揮する事になる。



「…………えぇー……」












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