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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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リアルでの会合 2


「………本当にリィンさんなんですか?」


「あ、の……えっと……」


目の前で顔を青ざめて口元を隠す央親は視線をウロウロとさ迷わせた。

どう答えればいい!? そう頭をフル回転させている央親から返事を貰えない翠は、ビールを置き席を立つ。

そして青ざめている央親の横に座りおもむろに


「んん!?」


「……なんでそんなに青ざめてるんです?」


手を離させてベーコン餅を央親の口につっこんだ。

危険回避に、串は外して箸で突っ込んでいるは翠の心遣いである。


目を白黒させながらも再度口元を手で隠してもぐもぐと咀嚼する央親。

それはゲームでのリィンと似通っていた。


「…………乙女ですか」


「えぇ!?」


わかってしまえばリィンにしか見えない翠は、驚く央親に苦笑した。


「なんというか、身バレさせてしまってすいません、ちかさん」


「え!? それはこっちのセリフですよ!……本当にすいません。……しかも俺がリィンでびっくりしたでしょ?」


「それは物凄く」


「……そう、ですよね」


「いや、前にフェアリーガーデンが自分のクランで経営してるって言ってたじゃないですか。ちかさんっぽい男性プレイヤー居ないんですもん。実はちょっと探しちゃいました」


悪びれもなく言う翠に、キョトンとした央親が「……そういえば、言ったような……」

と呟いた途端に赤面してテーブルに頭を乗せて顔を隠す。

お? と首を傾げて見ると、


「っ! 同じクランの人にフェアリーガーデンを進めてたって事ですよね!? えぇ、恥ずかしい」


赤面してモジモジしている姿は正しくリィンである。

そして様々に浮かんでくるリィンの失態の数々。


生気を取りに襲ってみたり、吹き飛ばされた自分を女の子である翠に支えてもらったり……


「……っ! ほんっとうに迷惑かけてすいません……」


「え!? 全然ですよ! むしろですね」


俯く央親の肩に手を掛けて顔を上げさせた翠は優しく優しく笑ってみせた。


「あなたが友達になりませんか? って、そう言って貰えたからゲーム続ける事にしたんです。すごく嬉しかったんですよ」


「スイさん……」


「ちかさん、翠ですよ」


「すっ、すいません」


なんだかんだ、ゲーム内と変わらない2人の関係はここでも変わらなさそうだ。

央親はやっと安心したように笑った。












「なるほど、ベータ時代のアイテムでしたか。確かに、首に鈴付けてますもんね」


「そうなんです」


翠は席に戻り、唐揚げを食べながら話を聞いていた。

この際腹を割って話そう、とリィンの外見の話をきいたのだ。

央親は本当にあっさりとベータ時代の話をしてくれた。

イベント報酬で手に入れたアイテムで外見が変わったこと。

それと引き換えに今まで以上の回復量を手に入れた事。

フェアリーロードの初期メンバーはカガリ、セラニーチェ、グレン、そしてリィンで、びっくりしたのは、セラニーチェとリィンがベータ時代良く喧嘩をしていた事だ。


しかも、回復量の少ないセラニーチェがリィンに突っかかっていた事に驚きである。

勿論今はないが。


「ベータの時からこのゲーム一癖も二癖もあったんですね」


「そうなんですよ……」


「あ! ねぇちかさん、氷の城のレアドロップあげたのって……」


「あぁ、俺が着たらタキシードになるんですよ。だから着るのは止めたんです」


「……………なるほど」


お揃いがいいなとその時思っていた事は叶いそうも無いなぁ、と翠は思っていたが


「………………似合わないですけど、それでも良かったらお揃いにしますか? また取りに行かないといけないですけど」


思いもよらない提案が返ってきた。

本当に似合わないですよ? と苦笑するリィンに、次お揃いのレアドロップの服があったらお揃いもいいかもですね? と悪戯に笑った。



まだ央親はクランのメンバーには話せなくて……と苦く笑った。

それを聞いて、梅酒に変えた翠は


「ちかさんのタイミングでいいんじゃないですか? 誰も怒ったりとかはしないと思いますけどねぇ」


と、のんびり答えて央親を喜ばせていた。


翠は、手足の事については央親には言わなかった。

簡単に話せる事じゃないし、いくらゲームで仲間だとは言ってもリアルでは出会ってまだ3回目だ。

話す内容が重すぎるし、央親も聞こうとはしなかった。


そのあとはのんびりとお酒を酌み交わし、更新イベントまでの2ヶ月をなにするか、公式イベントはどんな感じだろうかと話し込む。


「……雪合戦の次は鬼ごっこですって、ちかさん」


「運営の中のイベントってどんな感じで決めてるんでしょうかね」


「さぁ、小さな子供が遊ぶゲームばかりですよね」


「うん、でもただ鬼に捕まらない様に逃げるだけのゲームって感じはしないですよね。………映画の鬼ごっこって感じでしょうか?」


うーん、と考え込んで唐揚げを食べる央親。

そんな央親を見ながら梅酒を飲む。


「…………そんなあからさまにパクリみたいな事はしないと思いますけど、どうなんですかねぇ……んー、サバイバルって言ってたのが引っかかるんですよね」


「………サバイバル、かぁ。今回もクラン単位で動けるといいんですけど」


「本当ですね」









♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢










「はぁ、楽しかったです」


「はい、思った以上の驚きと収穫もありました」


「…………その節はどうも……………」



翠がニヤリと笑って央親を見ると顔を赤らめて目を逸らす。

見た目はカッコイイお兄さんがするから、妙な悪戯心が浮かぶのだ。

更にリィンの中の人と分かってしまった今となっては話しやすい人だ。

クリスティーナの許可が出たら3人で飲みに行く約束もした。

何度もゲームで女子会をした3人だ。あかねもイヤとはいわないだろう。




「……それじゃ、またゲームで」


「はい。………翠さん」


「はい?」


「また、一緒にクエスト行きましょうね」



にっこりと笑っていう央親に



「……………かわいいっすね」


「え!?」


真顔で思っていることを伝えるとすぐに顔を真っ赤にした央親


「お! 男が可愛いっていわれても喜べないよ!!」


「じゃあ、カッコイイですね?………………いや、やっぱり可愛いですね」


「翠さん!!!」


妙に男前な翠がじっと央親を見上げて笑った。







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