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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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イベントまでの準備期間


公式イベントまで残り2ヶ月。


この間にプレイヤー達はレベリングをし、装備を整え万全の準備をしようと動き出していた。

それは勿論フェアリーロードの人たちも同じで。


カガリはファーレンに聞き新しい盾の調達に奔走、リィンは仕事が佳境に入ってきたらしく最近イン率が低下気味。

ログインした際に焦りで空回りしながらも装備を整え、レベリングに走り出した。

スイが居ないかと探すも、リィンがログインした時傍にはいなくしょんぼりしているのを目撃されている。

セラニーチェも同じく装備とレベリング。

彼女曰く、リィンとはまた違った方面に強くなるといきまいているようだ。

タクはメインで使用している武器、剣について何か考えがあるのか第3の街の武器屋に入り浸っているらしい。

イズナとナズナ、アレイスターは3人で装備を見に店をハシゴしている。

周りのプレイヤー曰く、女の子の双子に溶け込む美麗オカマ←は違和感がなかったらしい。

デオドールは店番をしつつ、スキルチェックに余念が無い。

周りがどんどん強くなっていく中、「ちょっと焦っているのですよー」とぽつりと言ったらしいが十分強いですとは、 しんみりしているデオドールには言えなかったらしい。

グレンとクラーティアは2人で苦手な属性魔法の練習に励み、

クリスティーナはイベントそっちのけで現在お餅の存在に目を輝かせている。

ファーレンは盾を作る時に一緒に別な物を注文。

それに必要な素材を取りに第3のフィールドに向かったが敵が強すぎて死に戻りし、愕然とした。


そして、スイは…………






「……………終わらない、笑えない………」


現在、夜の9時。

場所は職場の自分のデスクである。

様々なものを扱う大きな会社に短大卒業と共に就職、お菓子のパッケージデザインを中心にしてきたが、今回急な移動により部署異動となった。

そこは、我社が1番、1番!! キツいと言われている部署だ。


「……………えー、皆帰ってるしどうやって終わらせてるの? 慣れ? 慣れなの??」


パソコンに向かって独り言を言いながら必死に色を塗っていく。


ここは、この会社が毎年必ず出すカレンダーの制作部署である。翠が異動したのはこのカレンダー制作のイラスト担当。

新しい年が始まり、年始明けすぐに始まるカレンダー制作の会議。

案を出しデモを作り持ち寄って話し合い。

作っては直して、作っては直して……完成に近づけていく、制作に追われる部署である。

この部署に途中で入った翠はどの様なものを書くのかモチーフなどの確認。

そして、絶望を味わうのだ。


カレンダーは通常カレンダー10種類、卓上カレンダー5種類、 スマホ用カレンダー20種類、

そして………………



日めくりカレンダー1種類。



この日めくりカレンダーが鬼畜なのだ。

365日、日めくりカレンダー全てにイラストが描かれている。

これの制作になった職員は毎年悲鳴をあげ神経をすり減らすのだ。

やってもやっても終わらない……地獄なのかここは…………


そして、翠が携わるカレンダーもこの日めくりカレンダーである。

異動後毎日のように帰宅は9時すぎる。まだ要領を得ないのだ。

しかし、帰る訳にはいかない、帰ったら自分に課せられたノルマの達成が難しいからだ。

ノルマを終わらせないと他の職員にしわ寄せが行くのはわかり切っていることだ。その為翠は夜遅くまでパソコンとにらめっこしている。


せめてある程度慣れるまではと、ここ5日程ゲームを絶っていた。


こうして翠は仕事仕事の毎日をしているが、後に会議で全員のデモを見て愕然とした。

あまりにもラフ過ぎるラフ画なのである。

ざっくりどんな感じかとイラストがそれぞれ1ヶ月分用意されていた。


そりゃ早く帰れるよね!!

私もそうすれば良かった!!


翠はしっかりと着色までして1ヶ月分を提出していた。

翠も驚いたが、会議参加の職員も驚く。


「なに、こんなしっかり描いたのか? 大変だったろ。……………いいできじゃねーか! このままつかえそうだな」


イラストを見て上司が背中を2回叩いた。目はイラストに釘付けになりながらだ。

イラストは海やイルカ等爽やかなものが多く、その為8月頃を中心に使うらしい。


どのイラストもボツは無かったが、


「…………よし、また1ヶ月分よろしく!」


「………………………………ハイ」


この部署は私に干からびるくらい働けと仰るのか

と遠い目をしたが、上司は笑いながら7時には帰れよ! と言ってきた。

残業の申請を見て働きすぎ……とため息を吐かれていたのだ。

どんなに忙しくても体を大事に! をモットーにしてるらしく、無理な勤務体制はご法度である。


ホワイト企業万歳。


「しかし、 なんでまたこんなしっかり書いたんだ? 引き継ぎん時ラフ画のボツ案だったが見せただろ?」


「……………そうでした。以前の部署と同じ感覚で描いてました」


「あー、向こうは企画毎にみんなでパッケージ決めるから全員最初からしっかり書き込んできて持ち込みだったもんな…悪いな、途中で1回チェックすりゃ良かったか」


「はい。……いえ、私が……」


私が自主的ブラック企業を楽しんでいたって事か、ちくしょう。


全員気付かなかったのは、基本的にラフ画のチェックは会議でする為しないのだ。

勿論、しっかりとしたカレンダーに載る用のものは途中チェックが何度か入るが。

上司に済まなそうに謝られ、同僚からも目でごめんね! と謝られた。


残業も半月に一度の確認をパソコンでするので、こんなに残っていることに全員気づかなかったのも問題がある。

自己申告はしていたが、ここ5日連続の為最初はなれない部署に急遽途中から入ったから必死なんだろうな、位の感覚だったらしい。

しかし、3日、4日と来て上司は首を傾げ出す。

そして、このラフ画持ち込みでの完成度だ。


あー、やり込んでる。

これは時間掛かるわ。

むしろ良く間に合ったな……

上司はチラッと翠を見て苦く笑った。

部下の管理は上司の勤めである。


「………よし、この調子で頼む。でも残業はせめて7時くらいにしてくれよ。無理はすんなー」


こうして、本日久しぶりに7時には会社を出ることが出来た。

ちなみに、定時は6時である。

まだ明るい! と空を見ながら駅に向かい電車を待つ。

そして満員の電車に体を滑り込ませた。













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