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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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熊さん久しぶり(流石スイさん)

「…………まさかの熊ってこれですか」


スイ達の前には可愛いウサギが1匹。

草をムシャムシャと食べるそのウサギは尻尾をフリフリご機嫌だ。

まだスイ達には気付いていないのだろう、マイペースにジャンプしては草を食んでいる。


「わかりやすくていいだろ?」


「…………………私は会いたくなかったですよ」


「スイ、首折っちゃダメ」


「折りません!」


「え? 折ったの?」


そう、このウサギはグリズリーである。

第1の街エリアのボス。

あの、スイが首を折り運営が慌てて設定を直したあのグリズリーである。

アナウンスは流れていたが、まさかスイが折ってたの? とアレイスターは驚く。


「そう、スイは凄かった。蹴り1発で首折った」


「ナズナちゃーん! もうやめてぇー!!」


「へぇ……」


ニヤニヤと笑うカガリに、スイは思わず1発くらわせた。

あのクリスティーナが吹き飛んだ1発だ。

カガリは咄嗟に盾を構えてガードしたが手が痺れる。

フリフリと手を振るカガリは冷や汗をかきながらスイに向けて笑った。


「ほんっとに……お前は……」


「ごめんなさい?」


そんなカガリにニヤリと笑って顔を突き合わせるスイに、アレイスターが仲良いことは素晴らしいことよねー! と笑う。


そんな4人を信じられないように見るキリンジ。

奏者が強いとは聞いていたが、それ以前にめちゃくちゃじゃないか

同じクランメンバーをどつくし、NPCには飛びつくし……

見た目からして静かなタイプだと思っていたキリンジはスイの弾けた行動に驚いていた。

もちろんスイは最初から親しげにしていた訳じゃないし今だってクリスティーナ以外には敬語だ。

だが、行動が表情がリアルに近づいてきている。

ひとえにクリスティーナがそばに居るからだろう。


「カガリ、どうする熊。どうやって倒す?」


スイといがみ合っているカガリに声を掛けるナズナ。

2人はピタリと止まりキリンジを見た。


「そうだな、戦闘半々に動くか」


「あぁ、支援と攻撃を時間で区切ってやるってことね」


うふ、と笑って言ったアレイスターに、スイはよく分かりますね……とアレイスターを見上げた。

新しく買ったらしいレースがふんだんに使われた赤いリボンで長い髪をゆるく結んでいる。

似合う? と聞いてきたから素直に頷くと、嬉しい! とスイの両手を握った。

ナズナはそんなアレイスターをニコニコしながら見ている。

やはり、ナズナの中ではアレイスターは男性に含まれて居ないようだ。


「……つまり?」


「つまり、前半をスイが攻撃、キリンジが支援。後半はスイが支援、キリンジが攻撃」


どうだ? と聞くカガリにキリンジはわかった! と返事を返しリュートを持ち直した。

ボスエリアギリギリに立つ5人は頷きあって兎に近付いた。



「…………………きゅ?」








「またこの熊さんと戦うとは思ってませんでした」


「あら、たまにボス戦とかするわよ。フィールドの敵だと物足りないもの。ソロでね♡」


「えぇー……」


「スリルも大事よ! スパイススパイス!」


「……アレイスター変態」


まさかのエリアボスを1人でとは恐れ入る。

でも、3回に1回しか倒せないのよーと言うアレイスター。

どんだけ強いんだ。え? 弓だよね?


3人が雑談してる中、カガリは盾を持ちガンガンくる熊を相手にしてた。

挑発しているため、カガリにしか来ない熊。


「……そろそろ話やめねーか!」


さすがに痺れを切らして叫ぶカガリ。

しっかりとキリンジのバフはかかっていたが、やはり攻撃ができない分何も変わらずただカガリが消耗するだけである。


「「「…………あ」」」


「カガリさん! いいんですか!?」


「最近こんなん多いんだよ!」


キリンジがカガリにバフを重ねがけしている中、スイが走り前衛をハープで殴りつけ熊を引き離した。

このメンバーに前衛職は居ない。

なら


「前衛の代わりしまーす」


ハープを上にあげて片手でフリフリしたスイは両手でしっかり握り振りかぶった。

ジャンプして避ける熊を追い掛け、木を足場に空中を一回転しながら熊の後ろに回り込む。

そんなスイの動きにつられているうちにナズナの巨大な武器から繰り出される砲撃が熊の左腹部を貫通、穴を開けた、

唸り声を上げて倒れる熊にアレイスターがスキルを使い追い打ちをかけ、スイが振りかぶり回転しながら熊にハープを叩きつけた。

着地と同時に抉るようにハープを振り抜くと、ぐああぁぁぁぁぁ!! と地を這うような雄たけびが聞こえる。

一気にゲージが削れ熊は血まみれのまま体が光り出した。

見たらゲージが赤に変わっているのだ。

スイは高くジャンプして木を足場にカガリ達の元へと戻ってきた。


「おう、おつかれ」


「あとは支援すればいいですよね?」


「ああ」


スイが走り出しナズナとアレイスターとでボコボコにした時間、2分程。

キリンジはその間呆然と4人を見ていた。

今まで組んできたパーティでは確実に自分が一番強かった。

頼られる存在だった。

それが今はどうだ? この圧倒的なまでのスピードと強さにキリンジはついていけない。支援が追いつかないのだ。

追いついたとしてもあまりの速さに的確なサポートは見込めないだろう。


キリンジがハッとしてリュートを構えて走り出したのは、スイによるバフを感じたからだ。

しかも、攻撃スピード防御を一気にあげる凄技。

キリンジも出来ないことだ。

前衛のかわりに走り回り敵を叩こうとするが血塗れた兎になった熊はハイスピードで走り回り蹴りを中心に攻撃を仕掛けてくるのだ。

それもカガリがタゲを取り回避する。

そして


「スキル風の檻!」


スイが奏でだした曲は複雑かつ激しい曲でいきなり風が兎にまとわりつき兎の体を拘束した。

そして追加で送られるバフは


「………え、炎属性」


「やりやがったな」


キリンジがリュートを見ると赤みがかっていて炎の属性付与がされていた。

それはカガリも一緒でにやっと笑う。


そこからは以前と同じく泥仕合だった。

逃げ惑う兎に翻弄されるキリンジ

ナズナやアレイスターの攻撃は当たるだろうがキリンジの動きを見るためわざと攻撃の手を緩める中、スイは頑張って無心でバフをかけ続けた。

しかし、5分経過、10分経過………


「…………………いつまで追いかけっこしてんだよ」


痺れを切らしたカガリが言ったのを皮切りに、スイがスピードを上げて走りキリンジを追い抜いた。

そして



「ごめんね!! ちゃんとウサギ肉のシチューにしてもらうからね!!」


そう言って飛び蹴りしたスイは兎の首を何十回と回転させてへし折り吹き飛ばした。

カガリの足元に転がる兎の頭

死んだ目が転がり止まった際にカガリを見上げる


「………こわっ!!!」


「待てなかったのね、スイちゃん」


「…………時間の無駄じゃないですかアレイスターさん」


結構酷いことを言うスイは兎の胴体を捕まえ持ち上げた。

へし折りはしなかったが捻り切ったな……誰もが思い、だが口にはしない。


「…………………」


「どうだ? サポートできそうか?」


「……………むりむりむりむり、あんなん出来ない」


スイを見て首を振るキリンジに、だろうなと皆が口を揃えて言った。


「出来ねーよ、あんなんスイしか出来ねぇって。だってあいつ支援なんだぜ? あれで。信じられるか?」


「正直火力おばけだとおもう」


「あれは反則よねぇ………属性付与してなかった? アタシの気のせい……じゃないわよね?」


新たに作曲した属性付与は今回初めてのお披露目である。

特別凄いとは思ってないが、現在付与が出来るのは付与魔法士のみである。

それもまだ使い方は定まっておらず試行錯誤中らしい。


「ビビるわ」


「ホントよねぇ」


しみじみ話すカガリとアレイスター。

その間地面を見つめるキリンジをナズナが見た。


「別にスイみたいにすることない。あなたはあなたらしい奏者をすればいいだけ。……………なによりスイの真似は多分誰にも出来ないと思う」


「………そう、だね」


無邪気に兎をもう1匹鷲掴みして笑っているスイをキリンジは化け物を見るような顔で見ていた。


「………………ウジウジするな」


ナズナが高速で足を動かし抉るように突き上げた。

悲鳴を上げて上空飛行するキリンジは降りてきた後泡を吹いている。


「な、なにがあったんですか?」


騒ぎに慌てて近付いたスイは顔色が紙のように真っ白で泡をふいているキリンジにヒッ! と小さく声を出した。明らかに破壊力がまた増している。


「喝を入れた………………ナズナも捻り切る技術付けようかな……」


「「「やめて!!!」」」



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