クラン・フェアリーロード5
地雷職と呼ばれる奏者。
サーヴァにも奏者は少ないとは聞いていたがこんなに拒絶されるとは考えてすらいなかった。
特にカガリは見るからに嫌悪感をあらわにしている。
他のメンバーも言いはしないが良い印象は無いようだ。
一体何がダメなのか。
「………なんで奏者がだめなんですか?……」
「………あー、とりあえずクラン作っちゃう?」
スイが分からず聞こうとしたが、元々の目的があったのだろう、セラニーチェと言葉が被った。
2人で驚き目を見開くが、スイは視線を地面に落とした事で話が途切れた。
それを見てからセラニーチェは悪い事しちゃったな……と思うが予定があるプレイヤーもいる。
目的を優先する事にした。
「カガリー」
「はいはい」
新しく立ちあげるクランは以前リーダーをしていたカガリがそのまま引き継ぐこととなっている。
カガリがステータスウィンドウを出して何か操作をした後、
カガリからクランフェアリーロードに勧誘されています。
と表示された。
皆は迷いなくはいを押している様子を見て、スイは迷いを抱きつつトッププレイヤーの集まるフェアリーロードに加入したのだった。
とりあえず、フェアリーロードの創設だけ。
クランハウスを買うにしても借りるにしてもそれなりの金額が掛かるため、全員で今後資金繰りをすると話している所だったのだ。
しばらくはこの酒場の2階を集まる場所にしてそれぞれで金策を巡らすとの事でこの場は纏まったのだった。
「と、とりあえず! 何かクエストしませんか?」
まだ戸惑いのみえるスイを見かねてリィンが手を合わせながらスイに言った。
スイはリィンを見てクエスト……と声を出す。
「リィン、クエスト参加者はこっちに集めろ」
セラニーチェが座る場所とまた違う小さなテーブルに座りコンコンとテーブルを叩くグレン。
リィンはスイの腕を引いてテーブルに座ると、クラーティアは申し訳なさそうにリィンの肩を小さく叩いた。
「リィンごめんー、リアルで用事あるから今回は創設だけの予定だったのですよー」
「あ、そうなのですね、じゃあまた今度一緒にクエストしましょ」
「うん、よろしくーみんなもまたー」
手を振りクラーティアはログアウトした。
「さて……後衛に、回復に、初心者の奏者……足りんな」
グレンが小さく言うとタクがひょっこりと顔を出した。
「前衛もいるよ!」
「タク、行くのか?」
「あったりまえでしょー! スイちゃんがいるんだからー!」
チラチラとスイを見ながら言うタクにグレンは深くため息を吐き出した。
そして、リィンがスイに言う。
「まぁ、タクこれでも強いですから」
「これでもってどーゆー事よー! リィンちゃん!」
「あ、ごめんなさい!」
フォローしたつもりがしてないリィンに、わざとらしく怒ってる様子を見せながら言うタク。
そこにファーレンがズカズカと合流した。
「おれ! 行きたいです!」
「あぁ、行くか?」
「はい!!」
これで前衛、盾職、回復に後衛、そして奏者という最低限のメンバーが集まった。
「みんなごめんなさいねー、アタシも行けたらイイんだけど、先約があるのよー」
頬に手を当てて言うのは細身の長身。
先程テーブルを拭いてくれた人だ。
サラサラの銀髪を結わずに背中に流す中性的な男性。
男性よりも比較的高い声で困ったように笑う。
彼はアレイスター。
女性的な話し方をするが、その背中には大きな弓を携え戦闘時は小さな針の穴を通すかのような正確な攻撃を繰り出す。
「今度アタシとも一緒に遊びましょうね」
ニコニコと笑ってスイに言うアレイスターに、こくこくと何度も頷いた。
じゃあね! そう言って部屋を出ていくアレイスターを見送りスイ達は初心者の森へと向かう事となった。