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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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ミニイベント9


「いやぁ、悪かったべ」


ふぅ……と息を吐く茶髪の美青年は、岩に座り込み頭をかいた。

長身で作業着を着るその人はキーリに回復をしてもらっている。



そう、この茶髪の美青年、先程のモグラなのである。

モグラが本体で、普段は人型をとっているらしいその青年は興奮状態になると本体に強制的に戻り暴走するようだ。


「で? お兄さんは一体どうしたんですかぁ? なんで興奮状態に?」


マドカがちょこんと足元に座り聞くと、みるみる内に顔を赤くさせたモグラ。

その反応に多くのプレイヤーは、おや? と見ているが


「……おらぁ、好きな子がいんだ。べっぴんさんでなぁ、嫁こさ欲しいだよ。でな、温泉のいい所を教えて仲良くなろうと思ってたらなぁなんか興奮したみたいでなぁモグラさなって温泉飲んでただよ」


「なぜ飲む……」


「てか、妄想の後に興奮とか」


「ん? あぁ、おらのメシは温泉だからだぁ。ちょびっとでいいんだがなぁ」


「湯守のご飯が温泉とか」


ええぇぇぇ……と言うキョウコにイオリは苦笑する。


「でもこれで解決だな。温泉が無くなる理由も分かった事だしクリアでいいのだろう?」


腰に手を置きやり切った様子で言うひよりに、モグラは顔を向けた。

そのモグラの反応に全員が顔を引き攣らせる。

嫌な予感がしたのだ。






「今は落ち着いたがな、嫁こさ来てくれねばまたモヤモヤして無意識にモグラさなるべ」








「……………よし! 相手どこだ! 連れてくるぞ!」


「もー! しょうがないわね!」


「どこ? 街の人!?」


「いいだか! 頼んでも!! おらの好きな子は巨兎族(きょさぎぞく)で祀られてる水の精霊、ヴィーアたんだべ」


「じゃあそのヴィーアたんを連れて来たらいいのね」


「ヴィーアたんをヴィーアたんって呼んでいいのはおらだけだべぇ! ヴィーアさんって呼ぶだ!」


イケメンのくせにメンドクセェェェ


全員の気持ちが一致した瞬間だった。

この後まだまだヴィーアたんの話をしようとしたモグラを止めてどこに居るのか、どんな容姿なのかを聞くと場所はあっさり教えてくれたが、容姿を聞いたのが男性だった為か


おらのヴィーアたんを好きになる気だなぁァァ!!


くっそメンドクセェェェ!!!



「わかった! 女性メンバーで探しに行く! これでいいでしょ!?」


ドンッ! と足を鳴らして言うイズナにモグラがびっくりする。

ゴスロリの可愛い女の子がきつい言葉で言うとは思わなかったようだ。

押されるように返事をして容姿を伝えだした。


「綺麗な青い髪に真珠がついてるだぁ、キラキラしてて綺麗だよ。長さは背中の真ん中位で下の方で緩く結んでるだ。細っこくて抱きしめたら折れそうな体に小さなお顔、真っ赤な唇が印象的だべな。あとは………」



つらつら話し出すモグラは恍惚としていて、女性陣はみんな腕をさすっている。

うわぁ、これはアカンやつぅー


しかし、全部聞いてたら時間もあっという間に過ぎてしまうだろう。

話を遮り女性メンバーだけが集まって誰が行くか話し出した。


「飛行メンバーとスピードに振り分けしてる人の方がいいかもしれないわね。時間が無いわ」


セラニーチェが残り時間を見ると、後40分になっている。

場所は近いが見ず知らずの人物を探し出して連れて戻りモグラと話をする。

かなりギリギリだ。

むしろアウトだろう。


「じゃあ、飛行出来る………」


キョロキョロと飛行メンバーを見て誰が行くか話をしている時、リィンは居ずらそうにモゾモゾしていた。

スイとナズナに引き摺られた為だ。

セラニーチェはそんなリィンを見て口を開く。


「リィンは留守番しましょ。そろそろ食べないとじゃない?」


「………そか、リィン覚醒はアブナイ」


リィンの手をそっと離すナズナにホッとしてセラニーチェを見るとウィンクしてまた話に戻った。


「あまり人数を増やさない方がいいのではないか、同じクランでは無いから連携も上手く取れまい」


「そうね、とりあえず飛行のスイ、ナズナにアリアちゃんとキョウコちゃんは決定。あとは……」


「私はどうするー?」


「貝殻移動結構早いのよね、じゃあ……」


「えぇ!? 君女の子だったんだべか!?」


「失礼な奴ね!!!」


貝殻を回転させてモグラに体当たりするクリスティーナ。

まさかの体当たりにゲージがググッと減り吐血する。

ブシャァァァァ


「わ……悪かっただぁぁぁぁ……」


「乙女になんて失礼なやつだわ!」


「…………クリスティーナの良さわからないやつなんて振られれば…………」


「はい、ナズナストーップですよー」


足を残像が見えるスピードで動かすナズナの不吉な言葉をクラーティアが後ろから口を抑えて止めた。

もごもごと口を動かしクラーティアを見上げるナズナ。

そんなことをしている間に話が纏まっていた。



スイ、ナズナ、イズナ、アリア、キョウコ、マドカの6人でパーティを組むことになった。

飛行とスピード特化のメンバーでバランスよく組んだのだ。


イズナとマドカが前衛

ナズナが中衛

キョウコが魔法

アリアが回復

そしてスイは壁の代わりをしながらの支援である。

壁をしている女性プレイヤーはいたが、力や防御に振り分けられスピードが遅い。

その為ハープで簡易ではあるが壁ができるスイがそれを担うことになった。


「よぉーし! 行こー!!」


右手を上げて言ったマドカに合わせて全員が一気に飛び出して行った。

ちなみに、出入り口になっている巨大な扉はモグラが開けてくれた。

鍵穴がない扉だが、普通に押して開けるらしい。

力不足で開けれなかっただけだった。


「ヴィーアたん………」


切ないモグラの声が響くが、誰もが切ないね……なんて口が裂けても言わない。

見た目とのギャップもあり、フェアリーロードは特にまた残念なキャラだなとさえ思った。








♢♢♢♢♢♢♢♢







「ここからまっすぐ行ったらその巨兎族だとかがあるんだよね?」


「見たらわかるって言ってましたよね」


他よりも明らかに黒い翼を羽ばたかせ進むスイは走るイズナやマドカをチラチラと見ながら進む。

飛行にあまり力は使わないが、走っているのはそれなりに体力を消耗する。

しかし時間が無い中モタモタしてられない。

残り時間、30分

不思議と敵が出てこないのをいい事にハイスピードで暴走の如く進む。



「「「「「………………あれだ」」」」」



明らかに大きな街づくり、街への門もかなり大きく見上げてもその1番上は見ることが出来なかった。

確かに、ひと目でわかる巨兎族。

門番に立っているのがなんと………



「お、珍しいぴょん。よく来たぴょん!」


巨大な男だ。

ただその頭には兎の耳、ピコピコ動く尻尾はプリンと引き締まったおしりに付いている。


「「「「「…………oh(´・ω・`)...」」」」」


思わず全員が同じ反応をするほどだった。


「?」


そんな5人に門番は笑いながら首を傾げていた。









「急げ! 時間ない! 急げ!!」


水の精霊ヴィーアは街の中央にある祭壇にいると門番に聞いたスイ達は、皆必死に祭壇へと向かっていた。

あと時間はわずか、ヴィーアを説得して連れて行かないと! 急がないと!!




「っ! ヴィーアさん!!」


はぁはぁと荒い呼吸をするイズナとマドカは祭壇に手を付き落ち着こうと必死である。

そんな2人を祭壇に座る女性が見下ろしていた。


『………どうしたのかしら?』


水瓶を持っているその精霊は、大丈夫? と水瓶からコップに水を注ぎ2人に渡す。


「あ! ありがとう!!」


「いただきますぅー!!」


ゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる間、スイとナズナ、キョウコとアリアがヴィーアに詰め寄った。


「すいません、今すぐ! 急ぎで着いて来てくれませんか!」


『え?』


「あなたに会いたいって人がいて! お願いします!!」


『……私に会いたいなら此処に来たらいいんじゃないかしら』


「「「「ごもっともです」」」」


頬に手を当てて言うヴィーアに、4人同時にお辞儀した。

その時、イズナとマドカがシャッキーン!! と体を起こしてポーズをとる。


「……………イズナなにしてる」


「…………はっ!?」


「あらぁ? 私なんでこんな格好してるのぉ?」


2人でウルトラマンみたいなポーズをしているのを心底不思議そうにしていると、ヴィーアがうふふと笑って言った。


『さっきの水には回復効果があるのよ。回復したら必ずポーズをとるようになっているの』


嬉しい効果だが恥ずかしい結果をもたらすその水が入った水瓶を揺すってみせるヴィーア。

ほぉ……と全員が見た所でハッ! として残り時間確認

残り時間12分


「!!!」


「お願いします! 私たちに着いてきて下さい!!」


『でも……温泉が枯れたりとか変なことが多いでしょ? また疫病が流行る前兆なのかしら……』


「疫病!?」


『え? えぇ、かなり昔にね疫病が……「後で詳しく教えてください!!」……いいけど……』


かなり渋るヴィーアは嫌々ながら了承した。

引く様子が無く仕方なくといった感じである。

それを聞くや否や、スイはヴィーアを抱き抱えた。


「(…………よし、いける!)」


グッ! とガッツポーズした後振り向き


「先に行きます!!」


「まかせたぁー!」


超特急で飛び出したスイに、マドカはフリフリと手を振った。

そんなスイを見てからキョウコがポツリと一言


「……あの子の馬鹿力どうなってんの?」


「……スイは最初からああだった」


「最初からなの? ステータス補正があるのかな?」


巨大なハープを軽々持ち、今回は巨兎族程大きくはないがそれなりに大きく重量のあるヴィーアを軽々抱えて飛び立ったスイ。

ヴィーアは身長3メートルは超えているのだ。



そんな話をしていた同時刻、運営はあるモニターを凝視していた。

今現在行っているミニイベントとは違う身体的数値が書かれているものだ。

それはスイのもので、特段他の人と大きな差は見受けられなかった。

しかし、ある項目を見てから他の人のデータと照らし合わせる。



「……………まさか、これなのか?」



スイの、いや、翠の腕の一部を見て運営はなるほど他のプレイヤーの様子も見てみないとな……

と呟いた。

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