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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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ミニイベント6

現在、2つに割れた鍵が2つ。

大きな扉に使うにはあまりに小さな鍵がある。

だが鍵穴は2つ、まだ足りないのだろう。

残りの鍵を探すのは27人のプレイヤーである。


これを、

グレン、セラニーチェ、アーサー、

そして、ひよりと愉快な仲間たちの胡蝶とかげろうに、英雄の箱庭のヒーン。


まずはこのメンバーで大きな温泉から見て斜め上の場所を探す。

天井から高い壁は翼付きメンバーが捜索している為、主に地面や見れる範囲の壁を探す。


「よーし。………結構広いな」


「それを言ったら天井組には負けるわよ」


指を上にさし飛び回っている翼付きや飛行できるプレイヤーを見るセラニーチェ。

グレンは確かに、と頷いた。

それに合わせるように上を見たアーサーは、アリアとスイが何やら険悪な雰囲気で話している様子に気づく。

軽く眉を寄せて見るアーサーに気付いたセラニーチェが、わざとらしく咳払いをした。


「さてと、どうやって探す? 宛もなく探しても進まないと思うのよね」


「私、2人組んで探すのがいいと思うわ。確かに広いけど、2人で組んだら見落としは減ると思うの」


着物を着て下駄を履く胡蝶が腕組みしながら言った。


「よし! 採用!!」


「おい、いいのか? 他の奴にも聞いた方がいいんじゃないか?」


「見落としが無くなるし、何より時間がないんだもん。もう40分過ぎてるのよ? グレン」


「………まぁ、そうだな」


「よし、じゃあ探すわよ!!」


セラニーチェは、がっ! とアーサーの腕を掴んだ。


「行くわよ」


「え? いや、俺はヒーンと…………」


「あぁ?」


「行きます!」


いきなり掴まれた事によりびっくりしたアーサーは、同じクランのヒーンと行くと言うが、今までにない凄みを見せるセラニーチェにヒッ! と声を上げて慌てて返事を返した。


「はい決定! 先に行くわ!!」


ずんずんと先に進んでいく2人を見送った残り4人はそれぞれ顔を見比べた後、自然とグレンにヒーン、胡蝶にかげろうと組み動き出した。









「ねぇ、アーサー」


「ん? 何? セラさん」


「あのさぁ、スイの事だけど、嫌がってるってわかってるよね?」


「………あー、まぁねぇ」


アーサーはセラニーチェに引っ張られる時にこの話をされると何となく理解していた。

地面を触りながら何かないか、でこぼこした壁に出来た空間に何かないか、探しながらセラニーチェが話し出すのを黙って聞く。


「じゃあなんであんなしつこくするの?……これでもベータの時からの付き合いだし、アンタのこと全然知らないわけじゃないわ。どうしちゃったのよ」


「うーん……」


ベータで既に顔見知りの2人、アーサーのスイを前にした時の反応は今まで見たことはなかったのだ。

爽やかで優しくて万人受けする、そんな人物像だった為セラニーチェは勿論顔見知りのフェアリーロードのメンバー達は最初物凄く驚いたものだ。

実際、今のアーサーは落ち着いていて穏やかだ。


「………んー、まぁ未練だよね。見限られたのは俺のせいだからさ、嫌がられても仕方ないのはわかってるんだけど…」


探す手を止めたアーサーに、セラニーチェはチラッと見てから「手を動かす」と急かす。

苦笑して、「うん」と返事をしたアーサーがまた探し始めた。


「リアルだっていってたわよね?………あ、聞いていいのかな」


「うん? 大丈夫だよ。……うん、リアルで付き合ってた。大好きだったよ」


「………………ふぅん」


「大好きだったんだ、でもゲームにのめり込んじゃってそのうち会う機会を作らなくなっちゃってね」


「あんた廃ゲーマーだったからね」


「うん」


壁に手を突っ込むアーサーは指先に何か触れた。

身を乗り出してそれを掴もうとするのを見ながら、セラニーチェも見つけた宝箱を拾い上げる。


「だから、振られるのもわかるんだ。……凄い執着だよね、わかってる。……アリアにもね迷惑掛けてるってわかってるんだけど、なんか止まらなくて」


「分かってるのにするのは馬鹿のすることよ」


「厳しいなぁ」


笑って言ったアーサーは小さな箱を取り出した。

開けるとそこには小さな試験管、マッチ棒くらいの小さな小さなものだった。


「………いい加減にしなさいよ、垢BANくらいたいの?」


「まさか! このゲーム大好きだから嫌だよ」


「じゃあもう諦めなさいよ。……あの子がいい子だって付き合ってたあんたが1番知ってるんでしょ。謝ったら?」


「…………そう、だね」


ペタンと座り込んで膝の上に置いた箱をじっと見つめた。

そんなアーサーを立ち上がりため息を吐き出して見るセラニーチェは、


「アンタはさ、もう分かってるんでしょ? ただ認めたくないだけで」


「………え?」


「だって、あんた言ったじゃない。大好き[だった]って。…………もうさ、やめなよ。あんたしんどそうだよ」


「……………まいったなぁ……大好きだった……かぁ。踏ん切り、着いてたのかなぁ、俺は」


あーあ……とこぼすアーサーは明らかに憑き物が落ちたような様子だ。

それを見てセラニーチェはおどける様に話し出す。


「あ、謝る時はうちの人達スイを大好きだから殴られる位の覚悟はしときなさいよね」



「………セラさんは怒らないの?」


「あんたがこれ以上無いってくらいにヤラレたら、トドメをさしてあげるわ」


ナズナは勿論だけど、カガリ、グレンにクリスティーナは特に怒るだろうから覚悟しとくのね。

そう言うセラニーチェに、アーサーは困ったように笑って頷いた。


「……こわいなぁ」











「えーと、あ、なんか宝箱もってるな」


温泉メンバーが集まり何かを持ってる……と目を細めるヒーン。

彼は英雄の箱庭の僧侶である。

この英雄の箱庭は第1陣や第2陣を引き入れかなりの人数が増え大所帯になった。

それでも僧侶人数は6人と極めて少ない。

そんな中、アリアと並んで高い回復力を持つヒーン。

元は流れで色々なパーティに入って僧侶としての力を発揮していたヒーンは最終的に英雄の箱庭に落ち着いた。


そこで見たのは穏やかなクランの内情で和気あいあいと仲良くやっている。

特にリーダーであるアーサーを中心にカンザキ、アリア、イリアは不動のパーティを築いていた。


そんなアーサーの挙動がおかしくなってきたのは第2陣開始すぐの話だった。

何かに執着しているのか目付きが可笑しい、しまいにはフェアリーロードでいざこざが起きたとも聞いた。

騒然とするクラン内部に、ヒーンは微妙な気持ちを膨らませる。

それは、新人僧侶キーリへの対応にも現れだしていた。


最初はしっかり立ち回りを教えていたが、次第に守るから無理をするな! 回復だけに専念するんだ!


……………おいおいおいおい

それは違うだろ。



回復は自分の判断で動かないと直ぐに死ぬぞ。

周りを見て確認して、どう動くか

攻撃力がない、防御も紙のような僧侶がそれを出来ないのは致命傷である。

ヒーンは少しずつ教えこもうとするが、インの時間が合わないこともありなかなか難しい。

そうした立ち回りをするようになったキーリは考えることを止め付き従い指示に従うようになった。

上手くクランにもなかなか馴染めないキーリ。


それがどうだろう、今は弾けるような笑みを浮かべて温泉捜索メンバーと話しているじゃないか。


「………へぇ、キーリが笑ってる」


「ん?」


「いや、なんでもない」


そして、アーサーの様子もいつもと違っていた。

力なく座り込みセラニーチェを見上げて話をする姿は頼りないが、前の優しい面立ちをしている。


「……………フェアリーロードってさ」


「ん?」


「なんか、いい人の集まりみたいだよな」


「? 何だ急に」


「いや、そう思っただけ」







少し離れた場所で、裾を抑えながら壁を触る胡蝶。

その少し離れた場所では忍者のような格好のかげろうが地面付近を探していた。



「…………見つからないわね」


「そうでござるなぁ」


「あっちかしら、宝箱持ってる人もいるし、宝箱を探せばいいのかしら」


「たぶんそうでござろうな……ん? なんか光っているみたいでござるぞ!!」


クイッとかげろうが胡蝶の袖を引くと、胡蝶が悲鳴を上げた。


「っ!! びっくりした! 居るなら話しかけなさいよ!!」


「!? ずっと話していたでござるよ! 会話して……」


「……………………そうだった?」


「酷いでござるぅぅぅ!!」


「………………あんた、影薄いのよ」


「心が抉られるでござるよぉぉぉ!!」

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