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Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷  作者: くみたろう
第3章 温泉と食料と疫病
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ミニイベント3

温泉の中1チーム、温泉の周辺を5チームに分けて捜索をすることになった。

人海戦術の為、振り分けられたメンバーはクラン毎ではないが、それぞれが得意とする場所へと振り分けされて捜索を開始した。





«温泉の中チーム»


「それじゃあ、中の捜索にのりだしますか。とりあえず左右に別れてさがすか?」


金色の檻のリーダーイオリが全員を見ながら聞く。

潜水スキル保持の為、人数が圧倒的に足りない温泉の中チームへと振り分けられている。

潜水スキルと言っても水の中で呼吸が出来るわけじゃなく、息継ぎしなくても長い間潜ることができる。

また、泳ぎに補正がかかる為無駄のない潜水ができる。

プレイヤーの中では海女さんスキルとも呼ばれている。


「じゃあ、私はこっちを重点的に探すわね。……それにしても何を探せばいいのか見当もつかないのは困りものよねぇ」


温泉は二箇所あり、洞窟のような囲われた場所の真ん中に広い温泉が一箇所、奥まった場所に狭い温泉が一箇所あり、クリスティーナが言ったのは大きな温泉だった。

人魚となったクリスティーナは息継ぎを必要としない為、広い温泉内を隈なく探した方が良いと考えたのだ。

クリスティーナが頬に手を当てて言うと、イオリが温泉を捜索するメンバーを見た。


フェアリーロードからクリスティーナ

金色の檻からイオリ

英雄の箱庭からキーリ

キラキラガールからリン、リリカ

一番搾りから林、キラ

雄妬恋組からヤマト


の、計8人である。


「………2チームに分けて捜索しようか。希望が無かったらこっちで振り分けるけど、どうかな?」


「お願いしまーす」


リリカが手を振りながら言った。

赤いフリルの服を着て、ポニーテールに大きな赤いリボンを付けている。

口元のホクロが本人曰くチャームポイントらしい。


「私はどこでもいいわ」


リンも頷き賛成、他に反対意見もない為イオリは温泉の大きさも考えクリスティーナ、イオリ、キーリ、リンにリリカを大きな温泉捜索へ

林、キラ、ヤマトを小さな温泉の捜索に振り分けた。


「それじゃあ、探そうか。多分一目見てすぐにわかるような物だとは思うけど……」


「行ってみないとわかんねーよな。よし、じゃーいってくる! 行こうぜ!」


林が2人を引連れて右上にある小さな温泉へと向かっていった。


「じゃあ、俺達も探そうか」


「………あ、あの…………」











《林、キラ、ヤマトside》


「…………ここか」


「たしかに向こうよりも狭いわね、あら? なんか書いてる」


「ん? どれどれ………」



深緑温泉:熱湯風呂


温泉温度52度に設定した熱めの湯

保温、疲労回復、美肌効果、腸内改善の効能あり。


「………いや、あつすぎだろ」


「腸内改善ってゲームで?」


「………ツッコミどころ多いけど、とりあえず探しましょうか……………ほんとに冷たいわね」


指先で温度をみようとしたが、キラの指先は冷たい水に触れるだけだった。



「っつめた! もー! 早く探そうぜ!」


ヤマトはヒーヒー言いながら潜って行った。

中は透き通ったエメラルド色をしており、とても綺麗だ。

濁りもなく捜索に問題はないだろう。


「(綺麗だ、沖縄の海みたい)」


キラは水に入ることで魚特有のエラ呼吸が出来るようになる。

狭いとはいってもそれなりの広さはあるのだ。

端から順番に見て回ることにした3人はそれぞれバラけて動き出した。

見た感じ変なものはない、岩などの影だろうか。


くまなく探すが特に何かがあるわけでもなく、3人はハズレか……と思ったその時、端の方に小さな宝箱を見つける。

林は1度息継ぎのために水面へと出てから再度潜り宝箱を掴む。

そして残り2人に目で合図してから地上へと戻ってきた。


「っはぁ、何見つけたんだ?」


息を吐き出しながらヤマトが林の持つ宝箱を見ると、次いで地上に戻ってきたキラも隣に立ち覗き見る。


「…………宝箱だ」


3人で顔を見合わせゴクリと生唾をのみ宝箱を開けた。


「「「…………なにこれ?」」」


中には青い液体が入った試験管があった。

手に取り説明を見ると、



青い液体が入った試験管。

蓋は現在あけられない。

イベントアイテム。



「……………よくわかんないけどイベントアイテムってなってるし、良しかな」


「もどるか」


「うん」


ストレージに仕舞えない様なので宝箱に試験管をしまい、林が持ってクリスティーナたちの元へと戻って行った。










《クリスティーナ、イオリ、キーリ、リン、リリカside》


「じゃあ、俺達も探そうか」


「……あ、あの……」


おずおずとキーリが手を上げて話し出すと、その場にいる全員がキーリを見た。

まだこった装備をしていないひょろっとした茶髪の青年、言い方が悪いかもしれないがモブ顔だ。


「ん? なにかな?」


「………お、俺連れてきて貰って第3の街に来たのであんまり力になれないと……」


キーリは第2陣、スイと同じ時期にゲームを始めたがリアルが忙しかった為になかなかログインが出来ずレベルも低い。

そんなまだ初心者であるキーリだが、英雄の箱庭では数少ない僧侶であるため大切に育てられてきた。

その為か守られるのが当たり前で自発的に動かなくなったキーリは今の状態にかなり困惑している。

自分は何も出来ないと、そう言うキーリにイオリは優しく微笑んだ。


「そうか、それじゃあ誰かとペアになって動こうか」


キーリは言葉の端に「俺は待っている」というニュアンスを含んで言っていた。

それをイオリは充分理解した上で答えていた。

戸惑うキーリにクリスティーナがちょっとイライラしながらキーリの腕を掴む。


「じゃあ、私がペアを組むわ」


「え!?」


「あ、いいかい? じゃあ頼むね」


イオリはクリスティーナの言葉をあっさりのみ、爽やかな笑顔を見せて頷き、反対にキーリは絶望的な顔をする。

実はクリスティーナ、ヤル気の見られないうじうじとした人はあまり好きではない。

なら、自ら行かなければいいのにとも思うが、ここで時間を取られるのも得策ではない。

だって、時間制限があるんだから。


「よし、行くわよ!」


すでに温泉に入り待機しているクリスティーナに引き摺られキーリも入水、心の準備もする前に捜索に無理やり連行された。


「…………正直なところ、クリスティーナさんが言ってくれて助かったわ」


リンが呟きリリカは苦笑する。


「英雄の箱庭は彼を甘やかしているのね。まぁ、他人のプレイの仕方だから構わないのだけど」


「うちではマドカに怒られるタイプよねー」


「そうね」


2人の会話にイオリが少し驚いた顔をする


「マドカさんって怒るの?」


「そりゃー怒りますよ! うちは少人数だから自分から動かないと普通に全滅だもん!」


「まぁ、それ以前に楽しくないじゃない? 自分から動かないと達成感やチームワークとか一緒にやるから色々見えてくるものもあるし」


キーリの態度に何も言わないが思うところはある2人。

まぁ、いいのだけどね、とリンが言ってザブリと温泉に入った。

フワフワした服が水を吸って体に張り付くのが不快なのか少し顔を歪ませて


「私も探しに行くわね」


「リンちゃんまた後で!」


リリカも温泉に入りそれぞれバラけて泳ぎ出した。

リリカはガチャでサメを取ったようで一気に加速して浸水して行く。


「……………女性は強いなぁ」


困ったように笑ったイオリもゆっくりと温泉に入り捜索に向かった。









クリスティーナとキーリは温泉に入って右側を探している。

尾を揺らして優雅に泳ぐが、今までに無いくらいのピリピリとした雰囲気を出しているクリスティーナはキーリの腕を掴んでいた。

それは、


「あの! 俺には無理ですから!! だから! 置いていってください! 俺、ほんとにこういうの無理で!! 失敗ばかりなんです!!」


どうやらキーリはクラゲのガチャを引いたようだ。

足が無くなりクラゲのヒレのような物が無数に現れていた。

プワンプワンと浮くように泳ぐ為、クリスティーナに手を引いて貰っている。


「あの! クリスティーナさん!!」


水面に上がったクリスティーナは、キーリを睨み付け、


「あなた、今までもそうだったの? 全部やって貰って結果だけ一緒に見て報酬を得ていたの?」


「…………え、と」


答えられないキーリに、クリスティーナは息を吐き出した。


「あなたの周りがそうしたのかしら。あなた、今回みたいに仲間がいない場合、これからどうするの? そうやって出来ませんから皆でやってねって言うの? 悪いけどそれなら誰も手を貸さないし反感をかうだけよ。誰が好き好んで何もしてない人に報酬をあげたがるかしら?」


「それは………」


俯きながら言葉を詰まらせているキーリは顔を上げクリスティーナを見た。


「でも、回復しか出来ないから!

俺どうすることも!」


「僧侶が何も出来ない!? 違うわよ! 僧侶はパーティに必要不可欠なのよ?………………あなた、どこのクランだっけ?」


「英雄の箱庭……です」


「……………………あー」


クリスティーナはアーサーを思い浮かべてため息を吐いた。

なるほどね。


「……………アーサーに回復が必要だから回復だけしてくれ、俺達がしっかり守るからな! とか、言われた?」


「!? まさしくそのまま……知り合いなんですか?」


「残念な事にね」


なるほど、それなら何となくわかる。

どうせ、初心者で自信のなかったキーリに「不安なのかい? 大丈夫それなら回復だけに専念して! あとは俺達が全部やるから!」

とでも言ったんでしょ


「………ゲームは楽しい?」


「え? はい……」


「何が楽しい?」


「えっ……と、友達が増えたり綺麗な景色を見たり………」


それはリアルでも出来る、とクリスティーナは内心思う。


「………でも、みんなが戦っているのを見て、ちょっと仲間外れな気持ちになると言うか……」


呟くように言ったキーリに、クリスティーナは目を見開いてから、にっこりと笑った。

その強烈な迫力にビクっと震えたが、キーリは次のクリスティーナの言葉に驚いた。


「ねぇ、セラさん……セラニーチェさんとリィンちゃんがね私達の回復をしてくれる人なんだけど、後で話してみるといいわ。多分考え方変わるわよ」


紹介してあげる、とウィンクするクリスティーナに、戸惑いながらもキーリは頷いた。


「さぁ! 捜索捜索ぅ!!」


「うわぁぁぁぁ!!!」


疎外感を感じるなら、感じないような立ち回りをさせればいいだけの事。

そう感じたクリスティーナは、少しやる気を見せたキーリを連れて温泉の奥へ潜って行った。








キーリはクリスティーナに言われた言葉を反芻していた。

たしかに、自分から動くことは無かった。

いや、最初の時はわからないながらも手探りで動こうとしていたのだ。

だが、無理しなくていいよ、守るからな

その言葉に甘えて次第に自分から動くことを止めた。

それが当たり前になっていた。

ただ回復をして守られて……………


あの人はなんて力強くイキイキとゲームをしているんだろう。

…………そういえば、みんな楽しそうにしていた。

意欲的に動いていた。


…………………アリアさんは僕と同じで守られながら回復をしていた。

他の回復の人は違うんだろうか


少しだけ、クリスティーナさんが言っていたセラニーチェさんとリィンさんが気になる。

どういう人なんだろう

どうやって、戦闘してるんだろう


キーリは自ら考える事をまるで思い出したかのように頭を回転させていた。

回復職の人は? そういえば、直接戦ってる人たちがどうだったかもうろ覚えだ。

芽生え始めた気持ちはゲーム初期の頃のワクワクとした気持ちに近い。

キーリは自然と笑みを浮かべて引かれるだけだった体に力を入れゆっくりと泳ぎ出した。

クリスティーナは変わったキーリの動きにいち早く気づき、チラッと後ろを見てから口端を持ち上げるのだった。

























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