秘湯の発見、ただし水。2
待たせている為、髪が乾くこと無く小屋を出たスイ達。
外は相変わらずのポカポカ陽気で冷えた体を優しく温めてくれる。
スイは蕩けるような笑みを浮かべて、
「…………あったかぁぁぁい」
ポワンポワンとしながら言った。
「水から出たあと一気に冷えたから余計に嬉しいよね」
イズナも一緒にポワワン。
そんな2人に思わず吹き出すセラニーチェは、
「さぁさぁ、早く行って男子達と代わりましょ! クリスティーナ温かい飲み物頼めるかしら?」
と2人を促した。
ナズナがイズナの手を取り駆け出すと、イズナも慌てて足を動かすが躓き二人とも花畑に突っ込んでいた。
2人の笑い声が聞こえる中スイは平和だなぁ、とその様子を見ていた。
「おまたせー」
「おそくなってごめん」
ナズナが敬礼しながら言うと、ファーレンも敬礼している。
なぜだ。
スイ達がレジャーシートに座ると、クリスティーナが温かいココアを入れて渡してくれる。
「ココアな気分だから」
うふっ! と笑って渡してきたクリスティーナにお礼を言って1口飲むと、
「っ!?」
「スイさん!?」
「どうしたの!?」
「…………………っっ何入れたの、クリスティーナァ」
崩れ落ちたスイにリィンやイズナが駆け寄る。
スイ以外にまだココアは配られていない事をスイは気付くこと無く口にしたのだ。
「………失敗かぁ」
「だから! 私で実験しないで! しかもココアで失敗って何したのよ! 本当に!!」
「………………きく?」
「やめといた方が良さそう! だね! うん!!」
コップを無理やり返すと、クリスティーナはそれを預かり新しいコップを渡した。
同じココアだが、女性陣全員に配られる。
しかも、生クリームたっぷりのウィンナーココアに歓声があがった。
「ほら、あんた達は水浴び行きなさいよ」
「へいへーい」
カガリ達が温泉に向かうのをクリスティーナは見送りながら、リィンとアレイスターには寒くないならホットは暑いかな? とアイスココアを渡していた。
男性陣が温泉に到着。
一足先に服を脱ぎ温泉に来たタクは全裸で両手を広げ、
「スイちゃんが! スイちゃんが入った湖!!」
「タク、ほどほどにしとかないと殺戮天使様が歌歌いながら素振りし出すぞ。あと、前隠せ」
「やめて! キュッてなるからやめて!!」
タクが前屈みになりガードしながら言うと、グレンは小さく笑って温泉へと入っていった。
「まだリィンさんとアレイスターさん待ってるから早くした方がいいですよね」
ファーレンはザブン! と潜り髪までしっかりと水に浸かった。
寒さに凍えそう、早急に湖では無く温泉と言いたいものだ。
冷たさに顔を上げて頭を振るファーレンは腕をさすった。
「さむいですね!」
「水だしな」
「……………グレンさん、寒いんですよね?」
「当たり前だろ?」
まるでお風呂に入っているかのようにリラックスして水に浸かるグレン。
髪が濡れているその姿はだいぶ珍しい。
「……………体感おかしいって、グレン」
「寒いのはおなじだぞ?」
水に浸かり、つめてっ!! と顔を顰めるカガリにタクは後ろから肩に手をかけてしっかりと湖に体を浸した。
「タクっ! やめろって!!」
「ちゃーんとにおいを落とす為だって!」
ニヤニヤして言うタクだが、においは消えない。それを見ていたファーレンは考えこんだ後カガリの髪を濡らし始めた。
「ファーレン!?」
「サッと体洗った方がすぐ終わりますよ!」
ニコっと笑うファーレン。
これは完全に善意100パーセントだ。
流石に文句も言えず黙り込むカガリに、ファーレンは髪を濡らし続ける。
「……………慕われてるじゃないか」
「笑うなグレン」
笑いを噛み殺しながら言うグレンにカガリはジトリと睨みながら言った。




