クラン・フェアリーロード3
5月5日 改正
スイ、グレン、クラーティアが歩くすぐ後ろを少年がついて歩く。
あの懇願は一体どこに行ったと言うくらい少年は静かだ。
俯きただグレンとクラーティアに着いていく。
(グレーン、どうするんですかー?)
(…………とりあえず、集合する)
(なんだか、めんどくさい事になりましたねー)
(まったくだな………カガリとセラに文句言われそうだ)
スイと少年にはグレンとクラーティアが口をパクパクと動かしているように見えていた。
2人でグループチャットを使い会話をしているのだが、スイはグループチャットを知らない為なぜ2人で口をパクパクしているのか分からず目を見開いていた。
少年は話し中とわかりそのまま様子を見ながら静かにしている。
スイはパクパクと動く2人の口をガン見、それに気づいたクラーティアが首を傾げると、 口が動いてるのに声が聞こえないのはなんでですか? と聞くと、 クラーティアは
「ああ、知らないんですねー。これはですね、グループチャットっていって……」
クラーティアが親切にグループチャットを説明してくれて色々あるんだなぁ……と頷き感心した。
4人が着いたのは裏路地にある酒場だった。
表通りから1歩入ると急に薄暗く閑散とした場所で、初めて来るには少し気が引ける。
グレンとクラーティアが自宅の玄関を開けるかのように自然に開けて入っていく。
スイは置いていかれないようにとすぐに後を追うと、 中はガヤガヤと騒ぐ声が聞こえ料理とお酒の匂いが充満していた。
グレンが二階に上がる階段を黙って上がって行き、クラーティアが笑いかけ手招きしてから階段を上がって行った。
思わず少年と顔を見合わせたスイは迷いながらも階段に足を向ける。
……………一体どこに行くのか、結局聞けなかった。
でも、クランがどうのって言ってたし、仲間がいるんかな?
そう思いながらも流されてそのまま階段を登る。
不安が胸を支配し始めた頃、 ギシィと軋む音を響かせて2階にある一室の前でグレンが立ち止まった。
ノックせず扉を開けると薄暗い廊下に光が漏れ女性の声が聞こえる。
「おそかったじゃないグレン、クラーティア」
「わるい」
「みんなそろってますねー」
「クラーティア達が最後なのですよー」
中は酒場とは違いとても明るく綺麗だ。
ここにも料理と酒の匂いがしたが、1階と違い料理の匂いの方が強い。
それもそのはず、室内にある2つのテーブルには隙間なく置かれた料理の数々、どれもおいしそうだ。
片腕をテーブルにつけながら、唐揚げやフライなどを摘んでエールを呷っている人もいた。
「………だれ? その人」
奥に座る少女の声が響き全員の視線がよく見える位置にいた少年に集中する。
緊張にかピシッと背筋を伸ばして少年は口を開いた。
「おれ! ファーレンっていいます! フェアリーロードに入れてください!」
「………はぁ」
少年、ファーレンは思っていた以上に声を張り上げてしまい顔を赤らめながら勢いよく頭を下げて言い、グレンはため息をついた。
全員がきょとんとファーレンを見あとグレンを見る。
諦めたように小さく首を横に振りクラーティアは両手を上げる。
まさしく、お手上げだと言った具合に。
そしてファーレンが勢い良く頭を下げた為、その後ろにいたスイが全員の視界に入った。
まだ初心者装備を身につけた自分を沢山の瞳が一斉に見るのだ。
戸惑い数歩後ろに下がりながらもグレンに助けを求めるように視線を向けた。
「うぉ! かわいー!!」
「……まだいた」
女性の横に座っていた男が立ち上がりスイをガン見しながら言い、奥にいた少女が感情の読めない無表情で呟いた。
そして、立ち上がった男性の隣に座っていた少女が同じくガタンと音を立てて立ち上がる。
その動きにコップが倒れ飲み物が零れた。
「スイさん!?」
「…………え?」
零れた飲み物がテーブルを滴って床に落ちた。




