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最終章:騎士

町に着く頃には既に夜だった。

しかし、町の中は騒がしくなっている。

ちらほらと、兵士の姿が見えた。

ランドはたまたま前を横切った兵士に何かあったのか話しかけた。

兵士はランドの顔を見るや否や走って何処かへ行ってしまった。

不思議に思っていると、向こうの方からプリムの城の騎士団長と兵士が何人か走って来るのが見えた。

騎士団長と兵士はプリムの前に膝まづく。

「おかえりなさいませ!王女様!この度は、大変エライ目にあったそうで…」

騎士団長はプリムに告げる。

どこで時空を越えた旅に出たなんて漏れたのだろうと思い、返事を返す。

「本っっっ当、エライ目に合ったわ…。もう疲れた」

プリムはため息をつきながら答えた。

「はっ!そうでこざいましょうな!悪党に誘拐され、1ヶ月も狭苦しい部屋に軟禁されていたのですから!」

騎士団長は告げる。

「えっ?誘拐?何の事?」

プリムは驚き聞き返す。

「可哀想に…。1ヶ月も"この悪党"に軟禁されて居たので、記憶が混乱されておいでで…オイッ!お前ら!この悪党、ランド・ウルフを捕まえろ!」

騎士団長は立ち上がるや否や、辺りの兵士達に命令をする。

兵士達は銃を構えるとランドに向けた。

ランドは意味が分からないが、とっさに戦闘態勢に入った。

たかが、銃を構えた兵士に負ける訳が無い…。そう思い、腰を低くして直ぐに飛び出せる様に足に力を入れた。

「動くなっ!」

不意に声がする。

ランドは声がした方を見ると、騎士団長はソフィアに剣を向けている。

「少しでも変な真似をしてみろ!この女の首が飛ぶぞ!」

騎士団長は剣を持つ右手に力を込めた。

「ちょっと!何してんのよ!ソフィアから離れなさい!ランドにも銃を向けるのを辞めなさい!」

プリムが叫ぶ。

「王女様…この者達は、王女誘拐事件の容疑者として指名手配をされています。あなたが、1ヶ月前にこの2人に連れられて町を出るのを、町の住人が見ていました」

「だから何よ!私は、無事に帰って来た訳だし、1ヶ月も留守にしたことは謝るわ!でも、誘拐なんて…」

プリムは騎士団長を説得し始める。

「良いですか?貴方は、王位継承者。この者達は、ただの町の住人。身分が違うのです!この者達は、1ヶ月だろうが2ヶ月だろうが、居なくなっても誰も心配はしないです!しかし、貴方は貴族なのですよ?1ヶ月も居なくなったとなれば、身代金目当てにこの者達が誘拐したのだと思うのが普通じゃないですか?」

騎士団長はカチャッと刃をソフィアに近付けた。

「何が王位継承者?何が貴族?ふざけないで!この2人が連れ去ったんじゃないわっ!私が無理矢理2人を連れてったのよ!貴族とかそんなの関係無しにね!」

プリムは叫んだ。

「何が誰も心配しないよ!ランドやソフィアだって、心配してくれる人が居るわよ!私だけ特別扱いみたいな言い方しないで!」

「プリム様は、混乱をなされておる!お前達、プリム様を城へ連れて行け!」

騎士団長はプリムの言葉を無視し、兵士に命令をした。

「嫌っ!離しなさい!これは命令よ!離しなさい!」

しかし、兵士は聞きもせずに待っていた馬車にプリムを積めこんだ。

「お前達は先に、プリム様とお城へ帰っていろ。数人だけ残っていれば十分だ!」

騎士団長は叫んだ。

馬車は高速で城に向かって走っていく。

その場に残ったのは、数人の兵士とランド、ソフィア、騎士団長だけになった。

「さて、邪魔者は居なくなったな…」

と騎士団長は呟くと、いきなり兵士に襲いかかった。

「騎士団長っ!何を…」

兵士は後退りをしながら叫ぶが、騎士団長は構わずに切り捨てる。

地面に横たわる兵士の死体を踏みつけながら、騎士団長はランドの方へ視線を投げた。

「さて…これで、王女誘拐及び王国への反逆罪で死刑が確定したな」

騎士団長は、足元の兵士を蹴りとばした。

「な…!お前っ!」

ランドは目を見開き言葉を漏らす。

「殺したのはアンタでしょ!」

ソフィアは騎士団長に叫んだ。

「はっはっはっ…王は、王女を誘拐した犯人と、16年王宮に勤めた信頼ある騎士団長とどちらを信用すると思うかな?君らがどうあがこうと勝手だがな…」

騎士団長はそう言うなり鎧を脱ぎ始めた。

鎧の下からは銀の長髪の男が顔を覗かせる。

「お前はっ!!」

ランドは、騎士団長の素顔を見て驚いた。

「くっくっくっ…貴様に取って見覚えがあるだろ?そこの白髪の女も私の顔を見たことがあるだろ?」

騎士団長はゆっくりとソフィアに顔を向けた。

「ええ…まさか貴方が、こんなにも近くに居たとは…」

ソフィアは驚きを隠せないまま呟いた。

「私はこの時を待っていたんだよ。ランド…ソフィア…私の元へ来い。お前達は、ここでくたばる存在では無いハズだ」

騎士団長はそっとランドに手を差し出す。

「ここで、アンタと組めば死刑は免れる…しかし、組まなければ死刑か…どちらにせよ地獄が待っているんだな」

ランドはうつ向いた。

「そうだ…私と共に来いランド…。お前の力が必要なんだ…」

騎士団長は更に説得を続ける。

「お兄ちゃん…」

ソフィアは心配した表情でランドを見た。

ランドは考え始めた。

「なぁ…ソフィアだけは、森に返してくれないか?彼女は、人間じゃ無いんだ…ずっと獣人化をしてる訳にはいかないだろうし…」

ランドは騎士団長に告げる。

「彼女を森に返すと言う条件で私と手を組むと言う事で良いかな?」

騎士団長は聞き返す。

「ああ。ソフィアの安全と、家族の安全を約束して欲しい」

「お兄ちゃん!」

ソフィアが叫ぶ。

「大丈夫だ…心配は要らない。必ず戻って来るから…ソフィア…元気でいてくれな!」

ランドはそっとソフィアの頭を撫でた。

「よし!家族の身の保証はしよう」

騎士団長は頷いた。

「最後に聞かせてくれるか?何でソフィアがお前を知ってるんだ?」

ランドは聞いた。

「お前だって薄々は気付いてるだろ?俺が、あの子を人間の里に捨てたんだ」

騎士団長は笑って答えた。

「やっぱりな…。昆虫5兄弟だと思ってたのに、長男だけ別の生き物なんて思いもしなかったぜ」

ため息をつく形で、一息で呟く。

「で、手を組むと言うことは何をすれば良いんだ?」

ランドは騎士団長に聞いた。

「まぁ待て。今は、この状況を片付けるからまた後で話すよ」

回りに転がる兵士の死体をみる。

「また、いつもの場所で落ち合おう。話はそれからだ」

騎士団長はそう言うなり、その場を後にした。

「食えない奴だ。ソフィア…行こう。もう、この町に帰る事は無い。俺も家に帰る事も無い。事が終わったら森へ帰る。そこで、狼として一生を終えるよ…」

ランドは寂しそうな目でソフィアに話しかけた。

「プリムさんは?」

ソフィアは聞いた。

「アイツは王女だぜ?この先に起こる事件の首謀者とつるんだり出来ないだろ?もうすぐ、成婚の儀もあるし…俺の事は忘れちまうよ…」

「お兄ちゃん…あの人と何があったの?」

ソフィアはいきり立ち聞いた。



「アイツは…俺の…」

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