第6章:帰路
「僕、土木もんです」
扉を開けたのは、ハゲのグラサンふんどし一丁の未来の犬型ロボット。
「いやースマンね。間違えて200年前に飛ばしちゃったようだね」
土木もんは笑う。
「何だ?コイツ、知り合いか?」
ソロは剣を構えたまま、ランドに振り返り聞いた。
「うん…まぁ、出来れば知り会いたく無い奴なんだけど…コイツが居れば、過去に戻る事が出来るんだよね」
ウルフはとりあえず獣人化を解いた。
「いやーはっはっはっ。メンゴメンゴ!いつまでも、未来の人達と関わると過去に影響出ちゃうからさ!そろそろ、元の時代に帰ろうよ」
土木もんは頭をペシッと叩いた。
「ちょっと待てよ!まだ、ランド達と知り合って半日くらいしか経ってないんだ!もう少しくらい、一緒に居ても良いだろ?」
チャッパーが叫ぶ。
「ごめんよ狸君。これ以上、彼等がここに居ると過去が変わっちゃうんだ」
土木もんは、チャッパーの麦わら帽子の上から撫でながら言う。
「俺は狸じゃねー!シカだ!」
チャッパーは怒るが誰も聞いていない。
「私達がここに居ると、過去が変わっちゃうってどういう事?」
プリムが聞いた。
「っと!口が滑っちまった様だ。気にしなさんなプリムの姉さん」
土木もんは口を押さえながら答えた。
「私達がここに居ると過去が変わる…。だから、過去にすぐ帰らなければいけない…と言うことでしょ?」
ソフィアはプリムと同じ事を聞いた。
「そうなんですよ。今、アナタ達が過去から未来に行く旅を始めて3日経ってるですよ。俺は、旅立って3日後の時代にアナタ達を帰さなきゃいけないんですね。
ただ、帰るとちょっとした問題が発生します」
「問題?」
ソフィアは聞き返す。
「ええ。詳しくは言えないですけど、ちょっとした問題です。
その問題を起こさない限り、今のこの世界や俺達の世界が消えます。
兄さん達の時代じゃ、ちょっとした問題なんですが…俺達にとってはかなり重要なんですよ。
なので、日が変わらないウチに兄さん達を過去に帰さなきゃいけないんです」
土木もんは煙草に火をつけた。
「そう…私達が消えるって事ね」
ニャミは呟いた。
「そっかぁ。じゃあしょうが無いよね。元々、私達はこの時代の人間じゃ無いし。ちょっと海賊とか盗賊とかに憧れたけど、みんなが消えちゃうなら戻るしか無いか」
プリムは笑顔で言う。
「そだな!俺達は過去の人間。俺の子孫が、ロフィ達に会えるかも知れないしな!」
ランドは笑う。
「と言う事は、狼の魂を持った奴がランド達の子孫かも知れないって事だよな!」
ロフィは目をキラキラさせて言う。
「そしたら、そん時に仲間にしようぜ!」
チャッパーも叫んだ。
「いやー素晴らしいですね。そんな訳で、後3分で日が変わるのでそろそろ準備をして頂きたいのですが」
土木もんはふんどしに手を入れながら言う。
「もう少し魂の事を聞きたかったけど、しょうが無いわね」
ニャミは言う。
「まぁまぁ、それは歴史書でも見て勉強してくだせぇ!それでは…」
と、ふんどしから輪っかを出した。
輪っかを地面に置きポチポチとボタンを押すと、真ん中に穴が開いた。
「これで、帰れるんだな…俺達の時代に…」
ランドは呟き顔を上げ、船員達を見回した。
「お前ら、ありがとうな!また会えたら会おうな!」
そう言って穴に飛び込んだ。
スポンと言う音を立ててランドが消えて行く。
続いてソフィアも飛ひ込んだ。
「みんな、ありがとう。ニャミもありがとう!後、土木もん!」
と船員を見回し、最後に土木もんの方を向いた。
「姉さん…お礼なんて良いですぜ。元々は、俺のせいなんだし…」
少し照れ臭そうに言う。
「アンタ!何処からこの道具をだしてんのよ!」
プリムの固く握る拳が、土木もんの顔にめりこんだ。
そして、息を止めて穴に飛び込む。
そして、輪っかの真ん中の穴は小さくなり消えていった。
部屋の中に、向日葵海賊団と土木もんの死体(?)だけが残る。
目を開けると、そこは洞窟の入口。3人は寝ていたようだ。
やっと戻ってこれた!嬉しかった。
「ランド!起きて!ほらっ!ソフィアもっ!」
プリムは2人を揺さぶり起こす。
「ついに、私達の時代に戻ってこれたのよ!」
2人は目を擦りながら起きると辺りを見回した。
金銀財宝があると言う洞窟に、何だかよく分からない森。
「戻ってこれたんだな…」
ランドは呟くと、欠伸をし立ち上がる。
「あれから、俺達は何日むこうに居たんだろ…」
答えの分からない質問をされ戸惑うが、とりあえず答える。
「うーん…その辺は、土木もんが調整してくれたと思うよ。とりあえず、洞窟探索は今度にして今日は帰りましょ!」
プリムはランドの肩を叩いた。
実際、ランドも家に帰りたかった。
そもそも、最初から財宝探しをする気も無かった訳だし。
長い1日だった…。
いや、実際には何日か経ったと思う。だが、彼等は時空を越えていたので1日と言う感じがしてやまなかった。
ソフィアも起きたので、3人は徒歩で家に向かって歩きだした。