第1章:平凡
「行ってきまーす!」
家の玄関から、少年が走って出ていった。
少年の名前は"田中 安友"どうやら学生服を来ていて中学生くらいだ。
眼鏡をかけていて、背は小さい方。
鞄を持っている所を見ると、通学するらしい。
少年が走って数分の所に、デかい学校があった。
看板には『第1中学校』と書かれている。
安友は走り玄関に入ると沢山の同じ格好をした少年少女がいる。
靴を下駄箱にしまい、『2-A』と書かれた部屋に入る。
まぁ、何処にでもいる平凡な中学生なのだ。
いつもの様にいつもの授業を受けいつもの様に帰る。そんな日課だった。
そんなある日の事だった。
「痛てっ!」と小さく叫び後ろを振り返ると、3人の同じ格好をした少年が立っていた。
「おいっ!安友!お前、遠足の班に湊川さんが居るそうじゃねーか!」と3人の真ん中の太った少年が話しかけてきた。
湊川さんとは、クラスで男子の憧れの女の子。
「う…うん。まあね」と照れ臭そうに安友は答えた。
「まあね。じゃねーだろーが!お前!湊川さんに手出したら海に沈めるぞコラぁ!」とデブが近寄る。
「分かってるよ!デブは汗臭いから近寄らないでよ!」と安友は嫌がる。
「分かったよ!マジで湊川さんは、男子の注目の的なんだから手出したら殺しちゃうよ!俺のおじいちゃんヤクザだかんな!」と言い残りの2人と去っていった。
「ったく、手なんか出せるかって言うんだよ!デブが…」
そう呟き歩いて帰る。
町を歩いてると、ヤクザ5人くらいが湊川さんを絡んでいた。
「おぅ!ねーちゃんよぉ!キャバクラで働かない?」とヤクザが話しかけている。
「ちょっと…やめてくれますか?口が臭いんで…」と湊川は、嫌がっている。
安友は思った。
ここで助ければ湊川さんのポイントを稼げるかも…。
でも!相手はヤクザ…。
警察を呼びに行くか…それとも、運を天に任せて助けに行くか…。
でも!ここで格好良く助ければ…遠足はますます楽しい物になるかも!
安友は勇気を振り絞り叫んだ。
「おいっ!そこのヤクザ共!止めてください」
とヤクザを後ろから話しかけた。
「あぁん?何じゃオメェはコラぁ?」
ノッポのヤクザが安友の髪を掴み顔を近づける。
「あ…あのぉ!止めてくれたら嬉しいんですよ…その子、僕の学校の同じクラスの子なんですよ…口が臭いですよ」
安友はオドオドしながら、答えた。
湊川は安友を発見し、叫んだ。
「えっと…あの…デブの片割れのメガネ君!助けて!」
「ち…違います!デブの片割れのメガネ君じゃ無いですよ!僕は田中 安友です!平凡な学生です」安友は答えた。
「あぁっ?てめぇら、俺ら挟んで何会話をしてんじゃボケェ!」
ヤクザは湊川と安友に叫ぶ。
「オメェ、勇気あるじゃねぇか…さっきから、汗臭いとかよぉ?」
ヤクザは安友を湊川の方へ投げ飛ばした。
安友は地面に激突すると、ヤクザの方を振り返る。
「汗臭いじゃなくて…口が臭いですよ!」
そうヤクザに注意をしたが、5人は2人を囲んだ。
周りの買い物客は、その光景を見て見ぬ振りをしている。
終わった…。さよなら、未来の僕。
そう思っていると、空から光が射しこんだ。
すると、ヤクザの後ろに誰かが落ちてきた様だ。
「痛ーい!もう!プリムさんの行く道に行ったら、落とし穴があるじゃ無いですか!」
白髪の少女が金髪の女に叫ぶ。
金髪の女―プリムは、落ちたショックで頭がガンガンしているのか頭を振りながら答えた。
「ソフィアだって、コッチの道が合ってるって言うからコッチって言ったのよ!人のせいにしないでよ!」
プリムはソフィアと呼ばれた白髪の少女に叫んだ。
「コッチって言ったのは、前の道じゃん!その後は、プリムさんがコッチって言うから…あれ?」と周りを見だした。
プリムもその光景を見て周りを見渡した。
先程まで洞窟で財宝探しをしていたのに、穴に落ちたら変な場所に行き着いていた。
石で出来た大きい建物。
鉄の塊が煙を吐いて走る。
「ここ…何処?」
とプリムは呟いた。
何故、洞窟の地下にこんな場所があるのか…。
2人は顔を見合わせると、下から声がする。
「お…重い…早く…どいてくれ…」
プリムとソフィアの下敷きに茶髪の腰まで伸びた青年が倒れていた。
「プリムさん!お兄ちゃんが重いって言ってるので、どいて下さい」
「ソフィア!ランドが重いってさ」
2人は同時に話しかけ、お互いにムッ!とした顔になる。
「プリムさん…プリムさんの方が重たいって聞こえますが?」
「あら?年中食べては眠ってる狼が重たいって聞こえますがね!」
2人は睨み会う。
「どっちでも良いから…早く…どいてください…」
ランドの声が弱くなっていく。
2人は無言でランドの上から降りた。
「オイオイオイ!オメェら何なんだ?俺らの邪魔すんじゃねーぞコラ!」ヤクザの1人がプリムに近寄った。
プリムは近寄るヤクザを睨んだ。
「何だその目は?殺んのか?オイッ!」
そう言い、プリムの胸ぐらを掴む。
「何か言いたそうな目してやがんな?死にたいのか?」
そう言いながら、顔を近づけてくる。
「あなた…離さないと大変な事になるわよ」とプリムは静かに答えた。
「お巡りさんに連れて行かれちゃうわよーってか?うひゃひゃひゃひゃ!無いな!それは」
ヤクザは笑いながら、プリムを引き寄せた。
いや…引き寄せようと力を入れた瞬間。突然、腕が軽くなった。
プリムを掴んでいた腕が無い…。
ヤクザは意味が分からなかった。
いつの間にか、腕が無い。
「あれ?俺の腕が…ぎゃああああ…!!」
ランドは道路の真ん中に立っていた。ヤクザの腕を持って…。
いきなりヤクザの体が"く"の字に曲がるとその場に倒れた。
安友は目を疑った。
今、倒れていた茶髪のロン毛が一瞬消えて、道路の真ん中に立っている。
ヤクザの腕を持って…。
手品師か何かなのかな?
「おぉい!ヤス!大丈夫か!?」
他のヤクザ共が倒れたヤクザに駆け寄ってきた。
「てめぇら…何者だ?」
1人が聞いてくる。
独特な空気を出し、妙な格好をした3人組。
「お前らこそ何者だ!」
ランドは叫ぶ。
安友は思う。この人は何を言っているのだろうか?どう見てもヤクザじゃ無いか…。
何故、分からないのか?
その時、湊川が叫んだ。
「助けてください!そこの茶髪の格好良いお兄さん!」
"お兄さん"と言う言葉にソフィアは反応した。
「誰が貴方のお兄さんよ!お兄ちゃんは私のお兄ちゃんよ!」
喉を鳴らし威嚇の様な声を出す。
「お前ら!無視すんじゃねー!」
ヤクザが叫ぶ。
「何なんだよ!マジでよぉ!殺してやるよ!」
ヤクザの1人がそう叫ぶと、全員が刃物を取り出した。
「ランド!殺しちゃ駄目よ!」
プリムが叫ぶ。
ランドは小さく頷くと、またその場から消えて安友の前に現れた。
「ひっ…あわわわわ」
安友は座りながらも後ろに後退をする。
ヤクザは一瞬ランドを見失うが、またランドの方に振り返る。が、ヤクザの体に衝撃がやってくる。
その場に倒れる者、壁まで吹っ飛ぶ者。
次々と倒れ辺りは静かになる。
「ふぅー疲れた…。何なんだ?ここは?洞窟なのか?」
ランドはため息をつくと辺りを見回した。
何処もかしこも、見たことの無い建物が立っており鉄の物体はデかい音を鳴らしている。
周りには、人が沢山いて皆こっちを見ていた。
ランドは足元に転がっているヤクザの腕を遠くに投げ飛ばして、安友の前に座り込み安友を見た。
「なあ?ここは、何処だ?何で洞窟の地下にこんな所があるんだ?」
ランドは安友に聞いた。
安友はオドオドしながら答える。
「ここは日本で、神前市ですよ。あなた達…外国の方ですか?」
「がいこく?何それ?クルシスランドに帰りたいんだけど」
「クルシスランド?何処ですか?聞いた事が無いなぁ」
安友はそんな事よりも、この不思議な人達の素性を知りたかった。
はっ!として、安友は湊川の方を振り返る。
湊川はまだ、ボーゼンとしていた。
「み…湊川さん!大丈夫ですか?」
安友は湊川に駆け寄った。
「ほぇっ?臭っ!汗臭っ!ちょっと!デブの下僕の人…近寄らないでくれますか?」
湊川は安友の前に両手を出すと立ち上がりランドの方に駆け寄った。
「ありがとうございました!お陰で助かりました!」
ランドは立ち上がると、湊川の頭に手を乗せて撫でた。
「おう!助けたつもりは無かったけど結果、助かったなら良かったな」
ランドは笑顔で答える。
「私!佐藤 湊川って言います!もし良かったら、今からウチでお礼をしたいんですが?」
「さとうみな?それが、お前の名前か!俺はランド!アッチの白いのがソフィア、俺の妹で。アッチの金髪がプリム」
ランドは振り返りながら、プリム達を紹介する。
2人は険悪な顔をしているが。
「あ…あの湊川さん!ぼ…僕は?」
と安友が近寄ってきた。
「触んじゃねーよ!汗臭いのが移るだろ?デブが!」湊川は険悪な顔をして、安友に振り返りまたランドに笑顔で振り向く。
「そんな…太って無いのに…勇気を振り絞ったのに…名前さえ覚えてくれないとは…」
安友はガクッと肩を落とした。
「いいさ…家にいる"犬型人造ロボット"に言えば、何かお助けアイテムを出してくれるさ!それで、湊川さんは僕の物だ!」安友は呟くとランドをキッと睨む。
「くそ!変な頭をしやがって!覚えてやがれ!」安友は泣きながら、家へと走って行った。
「あんなカスほっといて、私のウチに来てください!お連れの方々も!」湊川はそう言うと、3人を連れて歩きだした。