5.
ラカルからヨナまでは、ほぼ1日かかる。
ソラを隣の家に預け、リョウと王子を連れてヨナへと向かう。
王子が朝に来てくれて良かった。夜にはヨナに着くとが出来る。
夕日が私たちを赤く染め上げる。
暗くなる前に森は出たい所だ。
「どこに向かっているんだ。行き先も告げないでこの俺を歩かせているというのがどういう事なのか分かっているのか」
「行き先は言えないのです。嫌なら戻っていただいてもいいのですよ」
反論が返ってきたことに驚いたのか、それから王子は話さなくなった。
王子はせっかちすぎる。
リオンのことが心配なのは分かるが、そんなに焦らなくてもいい。
ヨナに着くまでは何もできないのだ。だからこうして急いでいる。
行き先を告げるというのは、リオンやリョウ、ソラの生死に関わることである。サチの他に大切な人を失いたくはない。
3人を守ることが、私の残り6000年の人生の使命である。
「もうすぐ森を抜けます。森を抜けたらすぐです」
全員勇み足だったのか、予定していた時間よりも大分早く森を抜けられそうだ。
リオンがヨナにいないことをただただ願うばかりだ。
今日という日が無駄な1日になりますように。
ヨナ村に着いた。
まだ夜の手前だというのに何の音もしない。
「どうしてこんなに静かなんだ?」
灯りがが灯っている家が1つもない。人が住んでいないようにも見える。
村自体がもぬけの殻。
いや、隠れているだけかもしれない。
少し警戒しながら村の奥へと進んでいく。
「父さん、これは一体?」
「分からない」
「全員でどこかに出かけたとか?」
「いや、それはないだろう。常識人から隠れて暮らす民族だ。大勢で出かけるなんて目立つことはしない。とりあえず先に進もう。何か分かるかもしれない」
村の一番奥には神の家がある。リオンかこの村にいるとしたらここだろう。
神の家の前にさ大きな花壇がある。
季節を問わず、花が咲き誇る大きな花壇に花はなく、全て踏み潰されていた。
「……なんだ、これは…」
家のドアも開いたままで、外から見る限り中には誰もいない。
「一体どうなっているんだ」
「分からない。また悪魔狩りがあったのかもしれない。とにかく、異常人達を探そう」
リョウとの会話に驚いている王子に説明している暇などない。