九話 魔法習得
今日は朝から情報収集に費やすと朝起きたときに佐藤と話し合った。佐藤は魔王や周辺のモンスターの情報、俺は異世界へと来てしまった原因についての情報収集だ。
「すいません。お時間よろしいですか?」
「そんなかしこまった口調じゃなくて良いですよ。それで、お話というのは?」
「最近変わったことってありませんか?たとえば私たちのように見慣れない物に乗ってきたとか」
「そうですね……ここら辺では見かけませんが」
「そうですか……魔法にはどんな種類があるんですか?」
「そういうことなら魔法学校に行ってみると良いですよ。私が紹介状を書いておきますか?」
魔法学校?そんな物までこの世界にはあるのか?というか、学校で学べば魔法が使えるようになる世界なのか?まぁ、せっかくこの世界に来たんだし魔法の一つは使えるようになりたいな。
「お願いします」
「それでは早速学校に向かってください。この手紙を持っていけば見学できるでしょう」
カンタレから手紙を受け取ると酒場で情報収集をしていた佐藤を回収して魔法学校へ向かう。
「魔法学校って何か映画みたいだね」
この町の学校は日本の田舎の学校とあまり変わらない形をしているんだな。中からは子供たちのにぎやかな声が聞こえてくる。俺や佐藤にもこんな元気いっぱいの子供時代があったんだろうな。
正面で手紙を警備員に見せると、首から札をかけられ学校内から教師らしき人物がやってくるのが見えた。
「今日、見学したい人たちはあなた達二人ですね。私は、このモーズ学校の教頭のメハです」
かなりの年老いた婆さん教頭だな。
「お二人は魔法の経験が無いということで、一年生の教室に案内しますね。そこで一時間授業を聞いてもらいます」
25歳にもなって一年生と一緒に勉強するとは考えもしなかった。
キーンコーン
チャイムはどの世界でも共通なんだな。そんなことを思っている間に教師らしき人物が教室に入ってくる。
「はーい。今日は見学に来てくれた人も居ますから、振り返りもかねて基礎から始めますね。では、教科書の10ページを開いてください」
教科書が手渡されるが、まったく読めない。横の佐藤も必死に教科書を読もうとするがページ数すら読めない。しかたない。教師の話を聞くしかなさそうだ。
「まず、魔法の源である魔力ですが、大きさはいろいろありますがどんな人でも持っています」
教師を良く見ると教科書を手を使わずに持って、ページをめくるときも手を使ってない。さすが魔法。
「ただ、得意不得意があり、炎を操る力を持っている人が居れば、水を操ることが出来る人が要ると多種多様です。しかし、魔法の世界にもやっちゃ駄目なことがあります。それは、蘇生と接続、洗脳です」
接続?これは俺たちがここにやってきたのと何か関係が有りそうだな。これで無かったらかなり凹むな。
「蘇生は、一度死んでしまった人間の魂は神様へと送られるはずですが蘇生をさせるとこの魂を奪い取る行為となると伝えられています。次に接続ですが、これは他の世界と次元を繋げることです。それにより、二つの世界に歪が生まれて最終的には世界は崩壊してしまいます。最後に洗脳ですが…」
これは重要な情報を聞くことが出来た。もしかすると、この世界の魔法使いか誰かが俺たちの世界から人を、その接続で連れてきていた可能性があるな。
キーンコーンカーンコーン
「次の時間は実習となるので校庭に集まってくださいね」
次は校庭に行けば良いのか?それとも教頭が来るまで待っていれば……って教頭、横に居たのか。
「次の時間も受けて見ますか?」
「はい!」
佐藤。なんだかこの学校に入ってから妙に元気が良いな。
「こういうの好きなのか?」
「当たり前ですよ!子供のころから魔法少女とかに憧れていたんですから!」
その年で少女を名乗るのはちょっと遅いような気がするぞ。そんな事を思っていると目の前に10歳くらいの男女のグループが集まってくる。
「ねー。お姉ちゃんたち」
「んー?どうしたのかな?」
「放課後に秘密基地に行かない?」
「良いよ!」
「おい。佐藤、そんな暇は……」
「別に良いじゃない。けち臭いお兄ちゃんだねー」
「分かったよ!行くよ!」
昔から子供の相手をするのが苦手で親戚の集まりとかも避けてきたのに。まぁ、学校だから子供が居るのもしょうがないが。
校庭に向かうとすぐにチャイムがなり授業が始まる。今回は教頭のメハも一緒に授業に参加してくれるみたいだ。
「今回の実習は自分が使える魔力を見つけてみましょう。前回見つけられた人は他にも無いか挑戦してみましょう!」
子供たちはそれぞれ指から水を出したり、破れた紙を修復したりとしているが、一体何をすればいいんだ?
「どうすれば良いか分からないようですね」
教頭のメハが俺と佐藤を見かねたのか助言をしてくれるようだ。
「適当に、水よ出ろ!とか、傷よ治れ!とかやっていれば見つかりますよ」
なんという適当さ。そんなので見つかるとは思えないが、ここはだまされたと思ってやってみるか。手を広げて……
「炎よ!」
なにも出ないじゃないか。超絶恥ずかしい。こんなの痛い人と何の代わりも無い。横の佐藤は何かもう一人の自分を作り出してるし。
「見て!自分を映し出せたよ!」
なんだかムカつくな。頭を叩いてやる。
スカッ
「残念!はずれー」
佐藤が笑うと周りの子供たちも笑う。笑うな。こんな簡単に習得できるなんて卑怯だ。端で休もう。
「あれ?どこ行くの?」
「端で休んでくる」
校庭の端に行くと実習中の子供たちを眺める。相変わらず二人の佐藤が変なポーズを決めて子供たちと笑っている。
「最初はそんなものですよ」
教頭の言うとおりだ。最初から上手く出来る人なんてごく少数だ。諦めずにがんばろう!
ふと横を見ると綺麗な鳥が地面に横たわって動かなくなっていた。持ち上げてみても小さな体は冷たくなっていた。完全に死んでいた。
「死んじゃってますね」
「そうですね」
こんなに綺麗な鳥が大空を一生懸命に飛んでいる姿を見たかったな。
「生き返れ…」
ピヨピヨ
あ、生き返った。そして生き返ると同時に大空へ羽ばたいていく。空へ羽ばたくとどこかへ行ってしまった。
まて、確か蘇生って…
教頭よ、そんな怖い顔をしないでくれ。