七話 出発
目標は決まった。ここから二つ目の町オルガへ行くことだ。それは明日にでも出発することにしよう。とにかく、長老に一言泊めてもらったりしたお礼を言っておこう。
「長老、急ですが、明日オルガの町へ向けて出発しようかと思っています」
「そうか。それならこれをもっていきなさい」
長老が懐から出したのは一枚の手紙だった。内容はまったく読めない。
「次の町のカンタレという人物に手紙を渡してくれ。そうすれば、泊めてくれるはずじゃ」
「ありがとうございました」
長老は、何かと面倒を見てくれた。恩人といっても言いすぎじゃないかもしれない。たまに意地悪もするが・・・
部屋に戻ると佐藤が外を眺めていた。
「田中さん。この世界の人たちって暖かいね」
「そうだな。でも、俺はなんとしてでも元の世界に戻るけどな」
俺には元の世界で待っているはずの彼女が居るんだ。
「そっか……そうだよね」
「もしかして、佐藤さんはこっちの世界が良いとか?」
「うん。元の世界に戻っても、親が残した借金があるからね」
やべ、もしかして聞かないほうがいい事を聞いてしまったかもしれない。佐藤は窓を閉めるとベットに入る。
「明日早いから寝よ」
「あぁ」
部屋の照明のランタンを消すと部屋は真っ暗になる。自分のベットへ入り眠ろうとすると、佐藤がベットに入ってくる。
「おい!」
「お願い。今日一晩だけでいいの」
お前は、良いかもしれないがこの状況は男の俺にとってはヤバイ。手を出したらいろいろな意味で終わりそうだ。背中からは寝息が聞こえてくる。俺も、眠くなってきた。
~次の日の日の出前~
外は次第に明るくなり始めていた。そんな時間でも村の住民たちは集まってくれていた。本当にここの人たちは暖かいな。
小型トラックとプリウス、オフロードバイクにガソリンを入れるとドラム缶の中身はほぼ空っぽだ。そして、小型トラックには佐藤が乗ってきて隠したカワサキのオフロードバイクを俺一人で乗せた。少しは手伝えよ佐藤……
「それじゃあ、行きます」
「ありがとうございました」
佐藤と俺は長老に深々と御礼をする。
「がんばってくるんじゃぞ」。
プリウスと小型トラックは草原を進む。お互いの会話は佐藤が持っていたインカムで会話できそうだった。
「どれくらいの距離があるの?」
「さぁな。距離を聞いても良く分かってなかったから距離を測るすべが無いんだろ」
空は出発時は晴れていたはずなのに進むに連れて空を雲が覆い始めていた。雨が降ればこの道はぬかるんでうまく走れなくなるだろう。
「少しスピードアップしても良いか?」
「え?無理。今でさえ80キロなんだよ」
考えてみればこっちのプリウスですら乗り心地が悪いのに向こうはもっと悪いだろうし、さらに荷台のドラム缶とバイクは固定してないからあまり飛ばせば倒れる危険性もある。
「わかった。今のままをキープだな」
ついに雨が降ってきた。このままだと遅かれ早かれ、どちらかの車がぬかるみにはまって動けなくなるぞ。
「田中!はまった!」
ついにやってしまったか。佐藤の運転するトラックを見に行くとぬかるみに後輪がはまって動けなくなっていた。
「動かないよ!」
アクセルを吹かすな。穴を掘って後輪が埋まりつつあるぞ。
「いま車から牽引ロープ取ってくるからアクセルを吹かすな!」
「分かった!」
プリウスに戻り、牽引ロープを小型トラックの牽引フックとつなげる。
「良いか、せーのでアクセルを踏み込め」
「うん!」
こんなことなんてやったこと無いけども行けるか?
「せーの」
ブォォォォ
ここまで吹かしても小型トラックは動かないか。
「もう一回行くぞ!」
「待って!」
「あ?どうした!?」
「何かでかい鳥が居ない?」
空を見ると確かにでかい鳥が上空を旋回していた。デカイどころでじゃない。大きさから言って4トントラックくらいの大きさはあるし、長い尻尾や、鱗まで有る。あれは、ファンタジーの世界じゃよく登場するあいつだ!
「ドラゴンだ!」