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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
異世界編
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五話 ガソリン

佐藤が突然正気を失ったのは多分さっき捨てられた死体が友達の望だったんだろう。


「殺す!全員殺す!」

「まて!落ち着け!そうだ!深呼吸をしてみろ」

「どうして田中さんはそんな冷静で居られるんですか!?」


 冷静なわけがあるか。今、心臓がバクバクしてダガーを握っている手も手汗ですごいことになってるんだ。しかし、俺まで佐藤と同じようになれば二人ともあんなふうに殺されて捨てられるのは分かっている。


「とにかく落ち着くんだ。とりあえずこのまま進んでゴブリンの巣がどんなものなのか確かめてから帰るぞ」


 佐藤は無言で頷いてくれているがまたゴブリンに出会ったら矢を放ちそうだな。それだけは殴ってでも止めないと。

しばらく獣道を歩くと、あたりは暗くなり始めていた。このまま夜になると、ばったり遭遇する危険性が高くなって来るからな。引き返したほうが良いかもしれない。


「ねぇ、何か聞こえない?」


 佐藤の言うとおり獣道の先から何か音楽のようなものが聞こえて来る。


「この先は横の茂みに隠れながら進むぞ」


 獣道の横の茂みに隠れながら音楽が聞こえてくる方向へ向かうと、再び開けた場所へ出た。そこにはこの世界ではありえない光景が広がっている。


「うそだろ……」


 何台もの車が無造作に止まっており、その中ではゴブリンがシートを倒して車の中でくつろいでいた。その周りには電球が木にぶら下がっており、その先では発電機まで動いていた。何台も止まっているうちのトランクルームに大きなスピーカーを積んだ改造されたセダンから音楽が爆音で流れており、その横ではパトカーも止まっている。


「これからどうするの?」

「なにか使えそうなものがあればそれを奪いたいけれどもゴブリンの数が多すぎる」


 しばらくゴブリンたちを観察していると、端のほうの小型トラックに積まれたドラム缶から柄杓のような物に液体を入れて車の給油口へ液体を流しいれているゴブリンがいた。おそらく、ドラム缶の中身はガソリンだろう。


「ギャオ!」


 一体のゴブリンが先程歩いてきた獣道から走ってきてゴブリンたちに何かを伝えている。


「もしかして、ゴブリンの死体が見つかったんじゃない」


 そうだ。佐藤の言うとおり先程殺したゴブリンの死体が見つかったみたいだった。ゴブリンはワゴン車のトランクに積まれている棍棒や、剣を手に取り、武装を始めた後、改造されたセダンから流れている音楽を止めた後に獣道へ消えていく。広場らしき場所には見た限り、3体の武装したゴブリンが残った。


「田中さん」

「どうした?」

「今がチャンスですよ。あのドラム缶だけでも貰っていきましょう!」


 佐藤の言うとおりだ。数が少なくなった今がチャンスだ。


「俺が、あの改造されたセダンの横に居るゴブリンを殺る。佐藤さんは高所作業車の上に居るゴブリンを殺ってくれ。残りは俺が何とかする」


 こんな隠れながら静かにゴブリンを殺すなんて必殺仕事人みたいだけども、あの人たちみたいに一発で決めないと叫び声で他のゴブリンに気づかれてしまうかもしれない。

ゴブリンが暇そうにあくびをしている今がチャンスだ。

姿勢を低くしながらゴブリンの後ろに回ると背中にダガーを突き刺した。


「グェッ」


 何度も何度もダガーを背中に突き刺しているとゴブリンは動かなくなっていた。高所作業車の上に居るゴブリンを見ると胸のところに矢が刺さったままぐったりとしている。佐藤は、生まれる時代を間違えたんじゃないか?

残りの一体のゴブリンを探すがなかなか見つからない。


「田中さん!パトカーの横!」


 パトカーの助手席にはサイレンを鳴らす装置くらいしか……


ウーウー


 しまった!緊急用としてパトカーのサイレンを使いやがった!

糞野郎が!ドアを蹴飛ばすとゴブリンの悲鳴が一瞬聞こえる。これで気絶くらいはしただろ。


「田中さん!あいつ等が戻ってきますよ!」

「あぁ!分かってる!」


 絶対にただでは帰らない!死んだ人たちの分の恨みは晴らすつもりだ。


「佐藤さん!そこのトラックに乗っていつでも出発できるようにしといてくれ!」

「わ、分かった」


 まずは、ここの車の何台かの車の下に潜り込んでダガーで燃料タンクに穴を開けるとガソリンが流れ出てくる。これでいいはずだ。


「早く!戻ってきた!」


 獣道のほうを見るとゴブリンが数体戻ってきていた。トラックの助手席に乗り込むとシガーライターを押し込む。


「出せ!」

「う、うん!」


 シガーライターが飛び出てくる。後はこれをガソリンタンクの後ろに投げ捨てるだけだ。

投げ捨てたシガーライターのところから火が燃え上がる。これでこの広場は火の海になるだろう。ざまぁみやがれ!


「止めてくれ」


 佐藤はトラックを森の入り口で止めてくれた。


「このまま村まで戻れるか?」

「田中さんはどうするんですか?」

「俺はこの近くに止めたはずのプリウスを取りにいく」

「分かりました。気をつけてくださいね」


 佐藤が運転するトラックは真っ暗な砂利道を走っていく。俺も、すぐに後を追いかけないとな。

 愛車のプリウスはすぐに見つかった。車に乗り込むと、ボタンを押してエンジンをかけ、トラックを追いかけて砂利道を進む。

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