四十三話 趣味
「これに魔法が掛かっているのか?」
「そうですよ。真ん中にパイプが刺さっていて魔法を石の中に注入しやすいんですよ」
説明されても魔法なんて使ったこと無いからわかんねぇ。あ、魔法は使えるけども使ったら死ぬんだった。
「予備は無いですから慎重に運んでください。少しでも欠ければそこから魔力が漏れ出しますので気をつけてくださいね」
「班分けとかするの?」
「もちろんしますよ。大体戦力で割り振ってあります」
カンタレが診察室にいる人に一枚の紙を渡し始めた。これによると、自衛隊が二つの班に分かれて千葉県と石川県に向かって青森には大山さんと佐藤が飛んでいくらしい。えーと、俺は山口県!?遠いな。車で十時間くらい掛かるんじゃないか?
「自衛隊の皆さんには特別治安軍の武器を渡します。使い方のほうは大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「佐藤さんと大山さんにはスナイパーライフルでいいですか?」
「いいけども和歌山には誰が行くの……?」
「田中さんと私、斉藤さん、橋本さんの四人が山口に行くついでに行きます。他は各地に散らばって生きている人を救出してください。そして、この町に集めてください」
こんな短時間でここまで考えたのか。それにしても俺達の班だけ二ヶ所もあるとかきつくないか?
「それでは出発してください」
自衛隊員は診察室から出て行った。佐藤と大山さんも出て行き、残るは四人だけか。
「それでは私に付いてきてください」
「え?移動手段の確保ですよ」
カンタレに付いて行くと診療所の裏に向かっていった。診療所の裏に大き目の倉庫がある。診療所の裏にこんな倉庫あったんだ。
「開けますね」
倉庫のシャッターを開けると車が二台並んでいた。片方は真っ赤なスポーツカー、もう一方はSUVか……こんなの乗り回している姿見たこと無いぞ。よく見るとSUVの方は窓に鉄板が貼り付けられている。
「こんなのいつの間に作っていたんだよ?」
「診療所を閉めた後に作ってました。一応、小銃くらいなら防げるはずです」
「装甲車使ったほうが良いんじゃないですか?」
「そうだよ。そっちの方が確実じゃない?」
「そんな事無いですよ。ハンヴィーだと通れない道が沢山あるんです。それでこの車を作ったんです」
確かハンヴィーの元となったハマーH1って幅だけでも2メートルは軽く超えてたよな。流石にその大きさだと高速とかは大丈夫だろうけども裏路地とかだと通れないだろうな。
「ではエンジンをかけますね」
カンタレが車に乗り込んでエンジンをかけようとしているが車のエンジンはかからない。もしかして外装に気を取られていて肝心のエンジンとかは放置なのか?
「この車どこで買ったんだ?」
「え?インターネットオークションですけど?」
あぁ、これは騙されてるな。
「動作確認したのか?」
「してませんよ。オーナーの人は動くって言ってたんですけどね」
「それ、騙されてるぞ」
「えぇ!」
「もう良いよ。一也の車を使おうよ」
カンタレはボンネットを開けてエンジンルームを見ているがその車を修理している時間なんて無い。さっさと俺の車に乗り込んで和歌山と山口県に行かないと日本の人口がどんどん減って、エイリアンの数が増えてしまう。
「石を積み込みますよ」
とりあえずアウトランダーに石を積み込んで、武器保管庫から車に武器を積み込む。とは言っても、無反動砲とかスナイパーライフルの長物は積み込めないけどな。主な装備はアサルトライフルとか手榴弾くらいか……エイリアンと戦う装備はこれで十分なのか分からないな。
「カンタレは何も持たないのか?」
「私には魔法がありますからね。そんな貧弱な武装なんていりませんよ」
M16が貧弱な装備か……頼もしい言葉だ。
「これで大丈夫です」
橋本さんがトランクを閉めてくれた。
「和歌山までの道のりは大丈夫ですか?」
「ナビを使うから大丈夫」
「何で美香が答えるんだよ」
ナビだと七時間で到着予定になっているけれどもテレビやラジオで聞いた情報だとすでにエイリアン達は日本全国に出没して手当たり次第に人を喰ったり繁殖の道具としているらしい。この混乱の中、何事も無く和歌山の灯台にたどり着くのは無理だろう。
「それでは出発しましょう」
「言われなくてもするよ」
まずは新東名高速で名古屋まで行ってそこからは……知らない。東名高速すらまともに走れ無いだろうからな。
「早速エイリアンが出てきたよ!」
カンタレに診療所の上にエイリアンが一体立っている……あれは座ってるのか?なんかよくわかんねぇな。
「早く!」
「あぁ!」
モーターの唸る音が聴こえてくる。この町に留まっていればエイリアンドが集まってくる。そうなればカンタレでも対処しきれないだろう。
町の門から出ると早速エイリアンが道の真ん中に立っている。
「私が倒します!」
気が付くと助手席のカンタレが箱乗りをしながら左腕を前に突き出している。
パァン
目の前にいたエイリアンが粉々に破裂した。
「出来る限り私が対処しますね」
「そのほうがよさそうですね」
橋本が拳銃を懐のホルスターに仕舞った。やっぱりカンタレは強い。これから先、敵に回さないようにしないとな。その後、新東名高速道路まで生存者とエイリアンは見当たらなかった。
「和歌山県まで一晩で行くつもりなの?」
「そんなわけ無いじゃないですか。夜になればエイリアンがどういう行動をするのかわからないので、とりあえずどこかに立てこもります」
「たまには運転も変わってくれよ」
「それなら橋本に頼めばいいよ。彼、サーキットに行くのが趣味だったらしいからね」
へー、どんな車で出場してたんだろ?やっぱりスポーツカーとかかな?
「あくまで趣味の範囲ですからね」
「橋本さんは何の車で出場していたんですか?」
「ランエボⅢですね。まぁ、どノーマルですけど」
高速道路上には大破した車両ばかりが乗り捨ててあった。どれも運転席や助手席には大量の血痕が付いていた。この様子だと
走行中に襲われた感じだ。ということはエイリアンは足が速いのか?
「一也!前!」
美香に言われて前を見ると大型トラックが数台絡むようにして事故を起こして道を塞いでいた。




