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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
異世界編
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四話 ゴブリンの森

「ところで、バイクはどうしたんだ?」

「村のはずれに隠してあります。もうあまりガソリンもありませんし」


 周りは草原が広がり、所々に木が生えており、ここがサバンナといわれても納得してしまいそうなほど自然が広がっていた。そんな中をプリウスの4WDがあぜ道を走る様子は何か異様に感じる。


「作戦か何かあるんですか?」

「特に決めてないけれども、こそこそ隠れながら君の友達を見つけ出してとにかく逃げる」

「見つかったら……?」

「そのときは友達をあきらめて逃げる」


 佐藤は、嫌そうな顔をしているが、こればっかりはどうする事も出来ない。一人の命を助けるために二人の命を無駄にするのは本末転倒だ。本人が逃げたがらなかったらそのときは無理やりでも連れて行くとしよう。

 そんな事を考えている間に森が見えてくる。森というか、ジャングルだ。とてもこんな車じゃ入れそうに無い。入り口付近にでも置いていくか。


「いよいよですね」


 目が今まで見てきた中で一番怖いよ佐藤さん。でも、これくらいの気迫が無いとこの森でやられてしまうな。

森の中は薄暗くてジメジメしているが、かなり過ごし易い環境だった。そりゃ、ゴブリンが住み着いても不思議ではないな。


「なんだろうこれ?」


 佐藤さんが何かを拾い上げて見ている。手に持っているのは、バールだ。


「なんでバール?」

「知りませんよ」


 しかし、明らかにこの異世界にしては不釣合いすぎる代物だ。この場合他にも日本からやってきた人が居ると考えるのが妥当そうだ。


「もしかしたら俺たちだけがこの世界にやってきたわけじゃ無いかも知れないな」


 再び森の中を進み始めると少し、肉の腐ったにおいが立ち込めてくる。


「なんか臭くないですか?」

「あっちだな、行ってみよう」


 臭いのするほうへ向かってみると開けた場所に出る。開けた場所の真ん中には大きめの穴が掘ってあった。穴の中を覗くと、いくつもの死体が捨てられていた。


「いやっ……!」


 今、叫ばれたらこの近くに居るかもしれないゴブリンに居場所がばれてしまうかもしれない。


「佐藤さんは、ここで周りを見張ってて、俺はあの死体を調べてくるよ」


 もう一度穴の中を覗くと、やはり、死体が積み重なるように捨てられていた。よく服装を見るとこっちの世界の服装ではなく、日本でよく売られているような服装ばかりだ。中には警察官であろう制服を着た人までいたが、腐敗が進んでいて顔までは判別出来そうになかった。


「今、見てきたけども、あれは多分佐藤さんと同じようにこの森で襲われた日本人の人たちだと思う」

「ライダースーツを来た女性は居ませんでしたか!?」

「分からない。でも、そこまで新しそうな死体は無かったから多分あそこには捨てられて無いと思う」


 死体の処分場からは獣道がどこかへつながっているような感じだ。その先は薄暗くてよく見えない。


「とにかく進みましょう」


 友達の望を助けたい気持ちからかは知らないけれども、佐藤が急いでいるのは分かる。

獣道を歩くと、ところどころに死体を引きずったときに死体から落ちたであろう小銭や、ハンカチが落ちている。中には運ぶのを途中であきらめたのか、茂みにも死体が捨ててあった。一応、死体が佐藤の友達か確認しているがどれも違うようだ。


ガサッ


前方から人らしき影が歩いてくるのが見える。


「隠れろ!」


 獣道のすぐ脇にある大きめの茂みに身を伏せると、そこには死体が捨ててあった。死体からはひどい臭いがしていたがそんな事は今は気にしない。

獣道を歩く影は二つで、何かを必死に引きずっていた。その影は、ゴブリンだ。

ゴブリンは、どうやら死体を引きずっていたが息を相当切らしている様子だ。俺と、佐藤が隠れている茂みの横で止まると、何かを話し合っている。

死体が目の前に捨てられる。死体は佐藤と同じくらいの年齢で、ライダースーツを着ていたが、ところどころ破れて素肌が見えていた。あれ?これって……


「うわぁぁぁ」


 佐藤が突然叫び、矢を放ってそれが一体のゴブリンの頭に刺さるのが茂みから見えた。もう一体のゴブリンは頭に矢の刺さったゴブリンが倒れるのをただ見ている。かく言う俺も、唖然と見ている。


「ギャオ!」


 ゴブリンが佐藤に飛び掛り馬乗り状態になり口から涎をたらしながら服を破こうとしている。ゴブリンはゲームでもこっちでも性欲が強いようだ。本来ならこのまま眺めていたいがそんな訳にも行かない。ダガーを使うしかない。


「うぉぉぉ!」


 首元を狙って突き刺す。


「ギャアオ!」


 今度は、こっちが馬乗りになり、ダガーをひたすら振り下ろす。そのたびに刃に何とも言えない感触が伝わってくる。この感触は初めてではない。前にも一度経験している。そして、ゴブリンは死んだ。

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