三話 武器入手
「友達を探すって……友達も一緒だったのか?」
「はい。友達の望と一緒にオフロードバイクで林道ツーリングをしていたんですけど、霧に包まれて、霧が晴れると見たことも無い木が生える森にいたんですよ。その後すぐに豚みたいな人たちに襲われて、私は何とかバイクで逃げたんですけど、望は逃げれなかったみたいで……」
豚みたいな人たちって多分、ゴブリンとかその辺なんだろうな・・・
「それはいつの話だったんだ?」
「2日ほど前です」
「村の人たちには話したのか?」
「誰も、助けてくれようとはしませんでした」
まぁ、ゲームとかの世界じゃゴブリンは雑魚の部類に入るけれども、実際比べるとなると、知能はこっちが上でも体力とかパワーは向こうのほうが上だしな。かといって、貴重な同じ境遇の人を簡単に見捨てるわけにも行かないし……。
「分かった。明日長老と話をしてみる」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「ただし、最悪の場合、友達が死んでしまっている可能性もあるからな」
「それでも構いません」
なかなか、肝の据わった子だな……かくいう俺も、その場のノリで返事しちゃったけども何とかなるだろ。
~次の日の朝~
朝、起きてみるが夢ではなかったようだ。外は広がる草原、澄み渡る空。そして、俺の愛車のプリウスにベタベタ触る現地の住民たち。
「おはようございます」
それでも、女の子のモーニングコールつきだったらある意味この世界でもありかもしれない。っと、そんな事を思っている場合じゃないんだった。まずは村で情報収集だな。
「あぁ、その森には行かないほうが良いよ。ゴブリンの巣だからな」
「その森に行って帰ってくるのは男だと死体で、女だとゴブリンの子を産んでいたな」
村人たちの反応は予想どおりだった。次はあの長老だな。
「おお!勇者の方よ!ゴブリン退治に出かけてくれるのか!?」
「いえ……この佐藤歩さんの友達を助けに行くだけです」
「それでも、立派じゃ!この町の武器屋から好きな武器を一つずつ持っていって良いぞ。話は私からしておこう」
武器屋についた。大体の予想はしていたけれども銃火器は一つもないな。飛び道具といえば弓矢ぐらいか。
「私、弓矢にします」
「え?弓道でもしていたの?」
「いいえ、してませんよ」
してないのかよ。それなら何で弓矢なんて選んだんだよ。おっと、俺も早く決めないとな。かと言って、ロングソードなんて扱えそうにないし、弓矢も使えないとなるとダガーくらいか。
「これください」
「はいよ」
実際に受け取るとずっしりと重いもんだな。なるべく戦闘は避けて、これを使うのは最終手段としよう。
車には相変わらず人だかりが出来ているが、車に乗り込もうとすると、長老が集まっている人をどかしてくれた。今後、長老への考え方を改めないと駄目だな。
「弓矢はどこに置けば良いですか?」
「今、後部座席を倒すから待ってろ」
滅多に長いものを乗せることが無いから後部座席を倒すのなんて初めてなんだよな。
バタン
「これで乗せられるだろ」
「ありがとうございます」
運転席に乗り込むと、長老が車に近づいてくる。ねぎらいの言葉でもくれるのか?
「勇者達よ、他に仲間は要らんか?」
長老は仲間思いのいい奴なんだな。今回の武器をくれたのは感謝しても足りないな。
「いいえ、いりません」
「そうか。それでは、東門から出て、そのまま進むとゴブリンの住処の森に着くと思うからな」
門から出るときは長老を含めて多くの人が見送りをしてくれた。日本じゃこんなことは一生体験できなかったんだろうな。
此処から先はガソリンスタンドなんて有るわけが無いから、出来る限りバッテリーを充電しつつもバッテリーだけで、この砂利道を進むということにしよう。